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正解を語れない安倍晋三が記者に罵倒される

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とんでもないニュースを見た。新聞記者が「なぜ記者会見を開かないのか」と安倍総理を罵倒していた。安倍首相に関してかなり否定的なことを書いてきたつもりではあるが、それでも政府の代表者が一新聞記者に罵倒されるというのはなかなか受け入れがたいものがある。政権の成れの果てを見たと同時に自民党はこれから苦難の道を歩むのだろうなと思った。戦後政治史稀に見る政権の終焉だがどちらかというと政治史というより道徳の教科書に載せたいような話である。

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問題の記者会見は広島の原発投下の日に合わせて行われたものだった。つまり本来ならば日本が核兵器廃絶に向けて歩みを進めている事を示すための場である。

安倍政権は非核化運動には冷ややかである。彼らが見下している左翼に利すると考えているのだろう。世界各国ではリベラルの勢いが強くなっていてニュージーランドの首相バイデン大統領候補などが非核化へのコミットを表明するなか、内政の意地の張り合いから大局観を失っているといえるだろう。「永田町から地球儀をぼーっと眺める」得意の外交スタイルだ。

だがそんな総理への批判は会見15分目の記者の詰問で全く別のニュースに変わってしまった。記者が会見の意味づけを変えるなど前代未聞である。

TBS News

これまで安倍総理は官僚からお膳立てをしてもらい「みんなが納得する正解」を準備してから会見に臨んでいた。最後は総理大臣が出て収めるという「デウス・エクス・マキナ」の役割を果たしていたのである。安倍総理は便利な演劇装置だといえる。

この「総理の正解ぶり」が発揮されたのが一律10万円給付だった。自民党でいろいろな経済刺激策が出てきた。どれも愚策としか言えない。さらに30万円の限定給付案があったが、これも二階幹事長や公明党に反発された。これを収めて見せたのが安倍総理である。演劇でいうと周囲がドタバタしているところにやってきて事を収めてみせる。だからデウス・エクス・マキナなのである。シナリオライターにとってはありがたい存在であり安易に何度も利用された。

つまらなくなったシナリオは何を引き起こすのか。それが離反である。ドラマで安っぽい脚本家ばかりを使うと誰もテレビを見なくなる。一時は546.5万人いた自民党党員は今では120万人に届かない。安倍政権下では必死の巻き返しがあったが、このところまた低下しているそうだ。朝日新聞は「なんかおかしいよね」というタイトルをつけている。

前回見たようにアベノミクスの成果は一般の国民の実感につながっていないようだ。これはバブル発生型の経済刺激策の基本的な性格によるものである。その上政府は景気減速という事実を隠して消費税増税を強行した。消費税増税には景気減速効果があるというのはおそらく事実だろうが自民党政権はその事実を頑なに認めない。

「最近自民党は何かおかしい」は偽らざる中核支持者たちの感情だろう。

それでも国民は自民党を放置してきた。安倍総理のデウス・エクス・マキナ効果があまりにも効果的だったのだろう。だが、安倍総理が出てこれないということは「手品のタネ」が尽きたのだと思う。

消費税増税の手口は先に「つかみ金」を掴ませておいて、あとからじわじわと取りやすいところからとりたてるというものだった。だが今回の「つかみ金」である給付金は新型コロナで我慢してもらったお詫びという性格のものであり「つかみ効果」がない。だが政府はそれでも「俺たちの金をくれてやったのだから次は消費税増税だ」と言っている。これまでの手口が崩れてしまったのだ。

日本流に言うと嘘をつくのは構わない。だが一旦嘘をつき始めたら最後まで貫くべきであるということになる。嘘が続かなくなれば叩かれる。叩かれたら痛い。道徳の教科書に載せたいような話である。

そうなると総理大臣とはいえ惨めなものである。ジャーナリストとしての一般教養が存在しない日本の新聞記者たちは「総理が正解を語ってくれるからそれを書けばおのずといい記事が書ける」と信じ込まされており「それを逃さずに持って帰ってくるように」と本社から躾られている。おそらく記者たちは「記事になる正解が期待通りに出てこない」事に憤っている。上司に怒られるし仕事が進まないからである。

戦後、たいていの総理大臣は国民の期待に応えられなくなったことがきっかけで自発的に辞めていた。だが安倍総理にはその選択肢はない。自分を否定しない後継を立てないと枕を高くして寝られないのだ。正解を持ってこないと叩かれながら政権末期がいつまでも続く。だが正解とは自分のものではない政府のお金を誰かにあげることである。

おそらくポストコロナとは「正解なき時代」の幕開けなのだろう。皆に正解を与えてくれる自民党の時代は完全に終わったという事がよくわかる記念すべき記者会見だった。

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