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中国政府の人権侵害といかに付き合うべきか

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Quoraで国内政治と国際政治のスレッドの管理を担当している。内部では「スペース」と呼ばれる。ここで最近ちょっと悩んでいることがある。中国の扱いである。

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第一にスペースではあまり個人の意見を出さないようにしている。できるだけ議論の多様性を担保したいからである。「ボイステルバッハ合意」原則を自分なりに解釈したものである。ところがこの原則で運用するとどうしても親中派に傾いて見えてしまう。

原因は日本人のお粗末な政治知識にある。このスペースに参加している中国人は名前こそ中国系だが日本語が堪能だ。おそらく日本で中等教育を受けている人たちなのだろうと思うが、中には本土から書いている人もいるようだ。特に日本在住の人たちはおそらく議論を吹きかけられた経験があるのだろう。反証をそれなりに持っている。つまり。ある程度理論武装を図るのだろう。これは外国に出た日本人も多かれ少なかれ経験することである。意外と日本文化について知らないなあと実感して日本文化について勉強を始める人も多い。

こういう背景があり、彼らは自分たちの民族観などをきちんと語ることができる。漢族というのは血統概念ではなく文化概念だと説明している人がいた。おそらく民族とは何かということを真剣に考えたことがない一般の日本人にはなんのことだかわからないだろう。Quoraの中だとこれを理解できる日本人と全く理解できない(というよりおそらく何の話をしているのかわかっていない)人たちで二分されている。

おそらく中国には西洋と同じ「説明する文化」があるのだと思う。駐英中国大使はBBCに呼ばれ自国の立場を説明している。お互いに全く話が噛み合っていないが「空気を読まずに」とにかく言いたいことをきちんと主張するという文化があるのだろう。

日本人はそれほど勉強をしていない。さらに国内議論を見ていると反中国の人たちは国内の人権問題に関心がない。

勉強をしていない日本人が陥りがちな典型的議論が「中国独裁論」である。中国は共産党独裁国家でありインターネットは遮断されテレビも満足に見ることはできない。さらに新聞は政府批判をしないので国民は本当のことを知らされていないのだという世界観がある。これが1980年代の東欧と重なって見えるらしい。本当のことを知らされれば国民は目覚めて中国政府は瓦解するだろうとなんとなく信じている。だから日本人は対中政策に無策でもさほど気にしない。消えて無くなるはずだと信じているからである。

実際には中国はアメリカを抜いて世界第一の経済大国になろうとしている。購買力平価ではすでに世界第一位になっている。また新型コロナで経済が停滞する前から2020年には世界一になるのではという予測があったそうである。Business Insiderがイギリスの金融大手スタンダート・チャータードのレポートを伝える形でレポートしている。アメリカは2030年にインドにも抜かれる可能性があるそうだ。おそらくベルリンの壁が崩壊し東ドイツから人が流れ出るという形の崩壊はしばらくは起きないだろう。

さらに、アメリカが世界第1位の経済大国でなくなり世界の警察でいられなくなるという現実も理解できないだろう。

では、日本人は中国を受け入れるべきかということになるのだが、これはそれほど単純ではない。最近、外務省・防衛省などが盛んに中国脅威論を煽っているようだ。表立っては情報発信せず周辺情報として少しづつ流しているようだである。

尖閣諸島に漁船が入り込むなと言ってきたとか、沖ノ鳥島を岩礁だと主張してきたというような話である。これは中国の日本の主権に対する挑戦であるというのもまた確かである。「こんな乱暴な国とはとても協力してやって行けそうにない」と誰もが思うだろう。

さらにウイグルの人権問題もある。収容所の問題が時折語られるがまた持ち出されてきた。表向きは民族融和を唄っているがその裏では彼らのシナリオに従わない人たちを閉じ込めているようだ。2019年11月には国際報道ジャーナリスト連合のレポートを伝える形でBBCが報道している。これをすべて反中国プロパガンダと斬って捨てる人もいるがおそらく継続的に情報や証言者が出てくることからすべてが嘘ということもないのだろう。

ラーブ外相はBBCの番組で、ウイグル人の扱いはジェノサイド(集団虐殺)に当たるかと問われると、国際社会はそうした主張は「慎重」にすべきだと答えた。
その上で、「法的にどう呼ぶかに関係なく、おぞましく、甚だしい人権侵害が起きていることは明らかだ」と述べた。
また、「事態を非常に深く憂慮しており、強制不妊手術や教育収容所など人的な側面への影響に関する報告は、私たちの目に長年みられなかったことを思い起こさせる」と発言。
「中国とは良好な関係を望んでいるが、そうした行為を見て、声を上げないわけにはいかない」と話した。

英外相、中国がウイグル人に「おぞましい」人権侵害と非難

イギリスのラーブ外相は「決めつけるのはどうかと思うがあまりにもあからさまだからみんな疑念を持ってますよね」と国民感情に訴えている。つまり中国を名指しして非難する動きが出始めている。

不穏な動きに火がついた時に真っ先に被害を受けるのは日本やイギリスに住んでいる中華系の人だろうなあと思う。だが、中国人は中国政治の主権者ではない。彼らが共産党を政権選択しているわけではないからだ。共産党の統治方針を変えることは彼らにはできないから中国人に抗議しても無駄である。単に日本にいる外国人やマイノリティをいじめてうさを晴らすというようなことにしかならないのだろうが、おそらくそれで十分なのだろう。

こう考えて行くと我々が直面する問題の難しさの質もわかってくる。

我々の持っていた正解としての民主主義・資本主義が「いくつかあるうちのイデオロギーの一つ」になりつつあるという現実を我々は受け止めきれていない。だが、個人の考えを「偏っている」と考え、資本主義・民主主義を正解として丸暗記してしまった日本人にはおそらくまともに民主主義・資本主義擁護ができないだろう。だから理性的に中国に対抗することが難しい。「強いものになびいてしまいたい」という屈折した気持ちもありますます中国に対抗するのが難しくなっている。

おそらくそうした鬱屈した感情はやがて弱いものいじめに向かうだろうと思う。

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