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なぜ立憲民主党は第二自民党を目指すべきなのか

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先日、立憲民主党は第二自民党を目指すべきだと書いた。つまりこれまでの自民党の政策を丸のみしろと言っている。「極論だ」という人も多いかもしれないが、おそらくスルーされる可能性の方が高いだろうと思う。「政権交代は政策選択だと思い込んでいる」からである。今回は三つの視点から論破を試みたい。

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第一に日本の政党に政策立案は無理である。民主党は2009年のマニフェストの扱いに失敗した。とにかく選挙受けしやすそうな政策を並べた挙句「財源が確保できなければごめんと言えば良い」と流してきた。そもそも自分の考えがない上に個人の考えを集団に向けて説明するという文化もなければ他人の意見を聞くという文化もない。

実はそんなことはないのではと自己反証も試みた。だが立憲政友会の設立経緯を調べたところ日本の政党は私利私欲や党派性の否定から始まっている。偏りがない中道がいいという宗教めいた信念がある。

国民民主党側の左派アレルギーはつまるところ「偏った政党が嫌」という主張なのだから、実は伊藤博文の伝統は今でも生きている。これを脱却する覚悟があるのかが問われるところだが「名前を何にする」という程度のことでもめているのだからおそらく無理だろう。

そもそも中にいる人たちが真剣にマニフェストや政策について考えている様子が全く見られない。日本の政党は早く「政策(マニフェスト)依存」から脱出したほうがいい。

第二に、日本人が求める日本人が好きそうな政策はすべて自民党が取り込んできている。力強い成長も政治主導による抜本的な政治改革もこれまでの生活を支えて老後を安定させる年金も規制改革もすべて自民党が取り込んできた。大きな政府だろうが小さな政府だろうが大衆ウケしそうなことはなんでもやるのが自民党だ。規制改革と公共事業推進が同居し、アメリカ追随中国脅威派と経済中心の親中派が同居するのが自民党なのだ。

長島和久衆議院議員は反中国主義者だがその主張を変えないままで二階派に所属することになったそうだ。二階幹事長からはどうぞそのままでいてくれと言われたそうだが、つまりは個人の主張など最初から聞くつもりはないから好きに吠えてくれということである。日本人は徹底して個人の意見は聞かない。長島さんは早速中国脅威論に触れていた。河野防衛大臣の路線に乗っているのだろう。おそらく中国の海洋進出は実際の脅威だが「ではそのために防衛予算を拡充し増税を求めるのか?」と問われれば「ハイ」とは言わないはずだ。

Yahoo!ニュースのコメントを見てみたが「強気に出れば相手は引き下がるはず」という楽観論と「中国は独裁国なのだから民衆がそのことを知れば立ち上がるはず」という1980年代的な世界観に彩られていた。大衆の外交・防衛政策には退潮するアメリカの覇権という要素は含まれていない。おそらくはこれを自民党への票に結びつけるのが長島さんらのオシゴトである。

日本人は方針が一貫しないと言ってこれを責めることはない。そもそも自分の立場を明らかにせずおいしいところをつまみ食いするのが日本人だからである。冷静な現状分析もしない。こんな政治環境で主義主張やイズムが成り立つはずもない。

自民党はなんでもやっているのだからその反対の政策は作れない。おそらくなんでも反対するということは自民党の矛盾をそのまま吸収するということである。原理的に政策集が作れないのだ。

おそらく原発に反対するといえば原発に依存している人や電気料金の高騰を嫌がる人から反発される。公共事業を辞めたいといえば公共事業依存の人に反発される。GoToキャンペーンを延期しろといえば観光業に頼っている人たちに首をくくれという話になるのかと非難される。

自民党の政策にはそれに依存する人たちがいる。これを否定するということは「彼らに負担を押し付ける」ということになってしまうのである。これがおそらく立憲民主党に支持が集まらない理由になっている。

最後に日本には余裕がない。先日Quoraに観光の5月の速報値が投稿された。前年比1%となっていて「1%減ったくらいではたいしたことないではないか」と思った。観光庁が報道資料をPDFであげているのだが、前年比1%減ではなかった。98%とか99%とかいうレベルで落ち込んでいるのだった。旅行業の売り上げは「蒸発している」ことになる。

おそらく観光業はこれから大変なことになる。

これをGoToトラベルキャンペーンをやる理由にできると考える人もいるかもしれない。だがおそらく今回のレベルの支援策を打ち出したところで焼け石に水であろう。おそらく安倍総理大臣が政策パッケージを総動員して救済策(おそらく潰れるところが相当数出てくる)を考えなければならないくらいの大災害である。だが安倍総理は国民の前に出てきて自分の言葉で語ることはしない。料亭に仲間を呼んで密談するのが好きである。

この他にもアパレル産業が苦境にあるという話をよく聞く。アメリカではブルックスブラザーズが破綻したなどのニュースも聞かれた。WWDジャパンの破綻関連のニュースにも連日ビックネームが並んでいる。新型コロナで破綻したというよりそもそも今の大量に作って売るというビジネスモデルが成り立たなくなっているようだ。これまで散々構造改革や意識改革の訴えは出ていたが年々状況は悪くなるばかりだった。

新型コロナはきっかけにすぎない。先日来「観光地域振興はこれまで変わってこなかったことのツケに向き合うべきである」というようなことを書いてきたが、おそらくこれからの数ヶ月か数年はそんなことはとても言えないほどの状態に陥るだろう。

おそらく立憲民主党は国民が抱える「変化の恐れ」を払拭しつつ政権交代を納得させるという難題を背負っている。そのためにはおそらく何も変わりませんよと言い続けるしかない。多くのことが変化するだろうがとにかくそう言い続けるしかないのである。少なくとも名前で揉めている時期ではない。

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