ざっくり解説 時々深掘り

予測していることは本当に起こる

イタリアでコロナウイルスによる医療崩壊が起きている時スペインとアメリカでも同じことが起こるだろうなあと思っていた。日本で憲法改正議論があった時は緊急事態条項が採用されたら日本は今言われているのとは違った理由で混乱するだろうなあと思った。どちらも予測が当たった。日本では今それが同時に起ころうとしている。予測はできるが現実は変えられないというのはどちらかといえばギリシャ悲劇的な展開だと思った。

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医療脆弱性という予想

イタリアでコロナウイルスによる医療崩壊が起きている時、スペインの状況を調べたことがある。財政再建のために医療費削減が行われているというのが似ているのである。アムネスティが2018年に出したリポートにアンダルシアとガリシアが書かれている。「おそらく次はスペインだろう」と思っていたのだが実際にそうなった。

健康保険制度が脆弱なアメリカでも同じことが起こりかねないなあと思っていたのだが、さすがにアメリカでそんなことは起こらないだろうという正常性バイアスが働いた。しかし、今の時点でニューヨーク市とニューヨーク州で1,700名がなくなっている。ニューヨークはイタリア化しているのである。

どうやらニューヨーク市にはフリーランスが多いようだ。2019年9月の記事では「1/3がフリーランス」のうえ、仕事がなくなったら来月の家賃が払えないという人が40%もいるそうだ。また、ニューヨーク市は他のアメリカと違って過密都市だ。おそらくこうした条件が重なり、アメリカで感染が広がりニューヨークが特にその中心地となっているのだろう。

おそらく東京でも似たようなことが起こるだろうなと思っていたのだが、夜の街で起きていたようだ。「濃厚接触」を売りにしているフリーランスの多い界隈である。強い外出規制がなければこの界隈も近いうちにイタリア化するかもしれない。

日本人が権力を持つと権力に潰される

日本では別の予測が当たっている。政府では総理大臣に権限が集まりそれが意思決定の機能不全を起こしているようだ。これは戦前と似ている。昭和天皇に権限が集まるが実際には昭和天皇は何も決められなかった。日本ではどういうわけか危機の際に「権力者のロックダウン」が起きてしまう。その意味で現在は戦争状態なのだ。

昭和天皇は実際に軍隊を動かしているわけではなかった。さらに政治家と軍人は軍事予算をめぐって睨み合いの状態になっていた。昭和天皇は権限はあるが執行能力がない。にもかかわらず政治家と軍人の調停をしなければならない。これは不可能なので昭和天皇は戦争を止めることはできなかった。

同じことが憲法で起きていた。憲法は三権を牽制させるはずだがそれは機能停止状態にあった。そのまま戦時下に突入しすべてが安倍総理大臣に降りかかっている。安倍総理大臣はおそらく何も決められなくなっているはずである。

小池百合子東京都知事はニュースキャスター気質なので「危機の中で働く私を印象付けよう」とロックダウンという言葉を出して危機感を煽った。成果を欲しがるという意味では満州で暴走した軍隊と同じ位置付けである。

AERAは「東京都の小池百合子知事は会見を開いて「ロックダウン(都市封鎖)」をちらつかせながら週末の外出自粛などを呼びかけ、スポットライトを浴びた。」と冷ややかに書いている。ところが実際に責任をかぶりそうになると意見を修正し始めた。自分が決めるわけではなく「国が決める」と言った上で、できることとできないことを整理しているなどと言い出している。ニュースキャスターなのでキャッチコピーは考えるが、あとは周囲に丸投げするのである。

この小池都知事の対応は緊急事態宣言に複雑な影響を与えている。緊急事態宣言が出れば即首都圏封鎖であると思い込む人が出てきたり首都封鎖すれば新型コロナウイルスがなくなるが罰則付きで封鎖しなければ蔓延するだろうと勝手に考える人もいる。総理大臣がフランスとは違うと答弁しても誰も耳を傾けない。「ロックダウン」という聞きなれない言葉と海外のニュース映像が受け手の中で勝手にリミックスされ「首都圏封鎖」という言葉の強い響きを伴って一人歩きしているのだ。

さらに岸田文雄政調会長も「自分はできるだけ取りまとめたが最終的には総理が決めてほしい」と調整を丸投げした。「首相のリーダーシップで金額の上積みをお願いした」と言っている。岸田政調会長の丸投げは自民党が現状把握能力を失い危機意識を持てないことを端的に示している。農水関係の人たちはお肉券だお魚券だと騒ぎ、その一部は今も原案の中に残っているようだ。騒ぎになると協力せずに自分の主張を通そうという人が出てくるが党の側に調整できる人は誰もいない。

国会もまとまらない。4月1日決算委員会では未だに「コロナからV字回復したら全国に新幹線を」という雄叫びが上がっており国会議員の意識は変わっていない。もともと積極財政派だった西田昌司議員は総理大臣に直接の「真水」要請をしている。青山議員のように「消費税減税」を再度持ち出した。西田議員は「コロナ禍が収束したら国債をばんばん発行して全国に新幹線」をと息巻き続いて質問に立った議員は伯備新幹線に予算をつけてくれと言っていた。

総理大臣は全世帯にマスクが2枚づつ配れると言いだした。実は3月初旬に「全世帯に3枚のマスクを配る」と言っていた。これが調達できなかったのだろう。マスクは布製になったそうだ。総理大臣は国内の流通を把握できていない。おそらく安倍総理はかなり前から行政を掌握できていなかったのだろうことがわかる。おそらく今回はそれがわかりやすい形で出てきているだけだ。そこには黒幕はいない。日本政府は漂流しているのである。

こんな中で憲法に緊急事態条項が入ったら何が起こるかは明白だ。おそらく誰も国政を掌握できなくなり引っ込みがつかなくなった政府は立法府を回復できなくなるだろう。日本人は権限に閉じ込められるのだから、危機の際は権限を分散させなければならないということがわかる。

一人歩きする緊急事態というビッグワード

緊急事態という言葉は単に「都道府県知事への権限移行宣言」というような言葉にしておくべきだった。もはや漢字の印象だけが一人歩きし様々な幻想を振りまいている。一方、国会のマインドは全く変わっていない。

安倍総理大臣は権限を移譲することもできないし、党内・政府内をまとめることもできない。これが「緊急事態宣言」で日本が陥る状態である。少なくとも日本では独裁なんかできないことがわかる。誰も協力せず人の言うことも聞かないので意識が変わらない。なんかすごい案が出てくるのだろうという期待値と調停要求だけが一人の権力者に向かい権力者を潰してしまう。

おそらくこのままで安倍首相を頂き続けばインパール作戦と同じことが起こるだろう。新型コロナ禍は他の先進国と同じような状態になり医療機関や夜の繁華街は「必要な支援を与えられないまま」玉砕を余儀なくされるようになるはずだ。この予想はできれば外れてほしいと思っている。BCGが神風になってくれないかなあなどと本気で祈ってしまうのである。

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