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日本で新型コロナによる都市封鎖は実際に起こるか – 悲観論と楽観論を概観する

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世界各地が日本を心配している。ヨーロッパやアメリカではロックダウンが起きているのに日本人だけはお花見を楽しんでいるというのである。ついには3月30日は悲劇的な日になるかもしれないという論考まで飛び出した。これについて調べてみた。意外なことがわかった。

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お祭りが危ない

第一に「危険だ」という論拠から集めて行きたい。イタリアで大流行した時「オランダは大丈夫」だと思われていたようだがオランダでも死者の数が増えている。北ブラバント州で増えていて「謝肉祭」が影響したのだろうとしている記事を見つけた。謝肉祭は復活祭の46日前に行われるお祭りなのだそうだ。これは北海道の雪祭りと同じような現象である。

アメリカではニューヨークの他にニューオーリンズで感染者が増えているようだがこれは「マルティグラ」という謝肉祭の最終日のお祭りの影響なのではないかといわれているそうである。ルイジアナ州はフランスの伝統が根強い地域でありやはり屋内だろうが屋外だろうが大規模イベントが危ないということがわかる。ニューオーリンズは医療崩壊一歩手前という状態なのだそうだ。

欧米のキリスト教文化圏では春を待つために節制しなければならない時期が一ヶ月以上続く。「その前に騒いでおこう」という習慣が病気を拡大させていることになる。皮肉なことである。

都市の過密も危ない

ロンドンやニューヨークのように過密都市で「知らないうちに」流行していた地域もある。日本がダイヤモンド・プリンセス号で大騒ぎしていたとき「ロンドンでオリンピックを」などと言っていたイギリスでも感染が広がっている。

チャールズ皇太子が感染しボリス・ジョンソン首相も感染が確認されたそうである。イギリスではどこから感染が広がったのかということがわかっていない。ボリス・ジョンソン首相は自らが下した決定の犠牲者になった。

集団免疫作戦が失敗したとわかってからボリス・ジョンソン首相が国民に向けてメッセージを発出するまでにそれほど時間はかからなかった。リスクを見ながら戦略を変えてゆこうということなのだろう。これは不幸中の幸いである。だがやはり危険な状態の一歩手前であることには変わりはない。

このことから日本の都市のお花見は極めて危険であると結論付けたくなる。東京の花見はイベント型と都市型の両方のリスクにさらされることになるからだ。渋谷では若者が騒いでいると腹をたてる人もいて「大丈夫なのか」とついつい心を揺らしてしまう。

自粛が強い意味を持つ

ところがこれとは全く別の現象も見られる。東京都知事が週末自粛要請をしたところそれに従う人が増えた。中には潰れるかもしれないのに営業を諦めたところもあるようだ。東京の土曜日は閑散としていたそうである。

日本には極めて強い同調圧力がありそれが社会隔離に役立っている。特にラテン圏では国が禁止するまで人々は社会隔離政策に従わなかった。おそらくこれは拡散抑止に役立つだろう。だが、同時にこれは経済を殺す。日本政府は口では補償をすると言っているが実際には商品券をめぐる予算の奪い合いが起きている。このままではウイルスではなく政治に殺されかねないという状態だ。お肉券やお魚券だけでなく、メロン券、マグロ券配布の案も議論しているそうである。

BCG

ところがこれとは全く別の話が出てきた。BCGワクチンである。小さな記事だがオーストラリアでBCGワクチンの臨床試験が始まった。BCGワクチンには基礎免疫を上げる効果があるのだという。

調べてみたところアメリカとイギリスでは日本型のBCGは使われていないそうである。スペインは感染が広がっていて死者も増えているのだが隣のポルトガルでは広がっていない。

「財政再建に成功したからでは」と説明されてきたのだが、オランダの事情などを考えるとそれだけ説明するのは難しそうである。ポルトガルでは日本と同じタイプのBCGを使っているから広がらなかったのだと説明する記事を見つけた。調べていたら意外なことに横浜市のウェブサイトが見つかった。2016年まではBCGをやっていたがやめたそうである。

同じような国にはアイルランドとノルウェーがある。どちらもボーダーレスになっているのだが隣の国とは状況が明らかに違う。今後これらの国に感染がどれだけ広がるか(あるいは広がらないか)で様々なことがわかってくるだろう。BCGをやっているということは結核汚染国であるということなのだが、それが結果的に功を奏したことになり皮肉といえば皮肉だ。

落ち着いて見てみると広がりは主に院内感染

東京で1日に63名の患者が見つかったとして騒ぎになっているのだが、そのうちの29名は永寿総合病院という一つのところから見つかっている。

千葉県東庄町でも障害者施設で58名が感染した。このことから日本ではまだクラスターレベルの広がりであるということがわかる。東庄町のケースでは職員を全員検査したようだが症状なしが26名で症状ありが6名である。これが期せずしてサンプル調査になっている。市中には症状なしの患者が同じくらいの割合いることが考えられる。

障害福祉施設における新型コロナウイルス感染症の集団発生についてから独自作成しました。

ここから免疫力の違いにより日本では無症状者が多い可能性も排除できない。もしこれがわかればロックダウンのような政策も無駄だし過剰な経済封鎖政策もしなくて済む。これは多くの人の命を(経済的に)救うだろう。一方無症状感染者が来院して病気を拡散させ続けるだろう。これも医療コストに跳ね返る。

今の日本には「調査したら政府の失敗が露呈したり医療崩壊が起こるのでは」という人間に対する恐怖心がある。これまでなんども書いてきた「自分以外の人間は信頼できないバカ」というマインドセットが官民問わず広く浸透しているのである。

だがやはり「世界が大騒ぎしているのに地理的に近い日本で広がりが抑えられている」ことには理由があるはずだ。その原因を突き止めるためにサンプルでも構わないので大規模な検査を今すぐ実施するべきである。

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