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京都市長選挙 – 未来なき国のコミュフォビア

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Twitterで京都市長選挙のTweetが流れてきた。現職の門川さんを応援する『未来の京都をつくる会』が「大切な京都に共産党の市長はNO」という広告を打ったというのである。ここに立憲民主党の名前があるとして騒ぎになったようだ。この一連のTweetを読んで立憲民主党は消えて行くんだろうなあと思った。

まず、選挙の構図だが「自民・公明・立憲民主・国民民主・社会民主」が推薦する現職と、共産党が推薦する福山和人さんという弁護士が挑む構図になっている。このほかに元京都市議の村山さんという候補者がいる。前回は63%を門川さんが獲得したそうだ。

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ところが、共産党が応援する候補にれいわ新選組が乗った。いわゆる「リベラル」と呼ばれる現在の政権を歓迎したくない人たちが既得権側と抵抗勢力側に分裂したというのが騒ぎに火をつけたのだろう。共産党とれいわ新選組は抵抗勢力として一貫した姿勢を示しているが「立憲民主党は与党にさえなれるのなら別に政策にはこだわらない」ということを明確に示している。

京都は立憲民主党の福山幹事長の地元なので、国政の政権対決姿勢が明確なら現職あいのりにはならないはずだし、共産党の候補にNOなどという広告に名前を載せることなどありえない。つまり、これはれいわ新選組の作戦がちである。東京都知事選挙に向けて「立憲民主党は実は抵抗勢力の味方ではありませんよ」と言っている。

さらに広告に名前を使われた千住博さんが「許可した覚えはない」と表明しているので、さらに騒ぎになりそうである。

1月26日(日曜日)付の京都新聞の選挙広告について。
千住博は京都造形芸術大学学長当時に候補者を応援してきた経緯から、今回も推薦者として名前を連ねてきておりました。ですが、千住はアーティストとして、意見の多様性や、議論の必要性を大切にしています。今回のような、ある特定の党を排他するようなネガティブキャンペーンには反対です。
まるで千住博がこの様な活動に同意しているような意見広告に、千住の許可なく無断で掲載されたことを大変遺憾に思います。

http://www.hiroshisenju.com/news

Twitterで騒ぎになったのはおそらくTwitterの反政府リベラルの人たちがそれを認めたくないからだろう。いってしまえばまあそれだけのことなのかもしれない。

社会秩序を受け入れたくない人はれいわ新選組に流れ込んでおり、ことによっては共産党を支援してもいいと考えはじめているのだろう。Twitterを見ているとその流れがよくわかる。政権を脅かすことはないだろうが立憲民主党や国民民主党にとっては脅威だろう。

ただ、共産党とれいわ新選組がどこを目指すのかは見えてこない。彼らが言っているのは政権打倒と消費税の減税(あるいは凍結)だけでありそのあとの提案がない。コメントによると京都では観光者対策が語られているようだが全国規模のニュースではそんな話は一切伝わってこない。

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それでは本来あるべき提案とはどんなものなのだろうか。

ドイツでは「持続可能性と環境」が大きなテーマになっている。これは開発と成長依存のアンチ資本主義の動きでおそらく社会主義に代わる新しいイデオロギーなのだろう。イデオロギーということは環境にさほど関心がない人も集まっているということになる。

ドイツには2015年に移民が流れ込んできた。移民は南部からやってきて州の人口ごとに割り当てられたそうである。この直後の国政選挙では東部(旧東ドイツ地域)で右派ポピュリズム政党が台頭した。右派ポピュリズム拡大を恐れた与党は移民に厳しい政策をとるのだが、これが却って離反される。2019年のEU議会選挙では与党から離反する人たちが大勢出た。離反した人たちは右派ポピュリズムに流れたわけではなかった。さらに旧来の左派政党にも流れなかった。既存政党を離れ緑の党を支持したのである。

緑の党は二大政党に失望した有権者の受け皿にもなっている。欧州議会選では、大連立政権に参加して大胆な政策を打ち出しにくくなった中道左派、SPDの支持層から大量の票が流れ込んだ。

ドイツ、緑の党が支持率首位 二大政党の退潮止まらず

環境に対する取り組みはEUの中で重要な政治課題になっているようだ。これがグレタ・トゥンベリさんの動きにつながったのだが、日本では「突然変な少女が出てきた」という見え方になっていたはずである。実はグレタさんの動きは国連が最新のトレンドを取り入れた結果だったのである。

欧州の金融や航空、製造業で環境対策を深掘りする動きが活発になってきた。欧州連合(EU)や各国がリサイクル強化や炭素税を検討し、企業の対策を促す。9月に再開する欧州議会で「緑の党」などの環境会派の議席が増え、環境重視の世論が強まっているのが背景だ。秋からのEU新体制で環境への関心がさらに高まるのは確実で、企業活動にも影響が出そうだ。

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流入の経路になり人口配分にしたがって移民を受け入れた南部の州は実は現在の与党を未だに支持し続けている。南部は豊かな地域で年収が平均的に高いようなので、現状を承認し続けたことになる。ところが、移民の通路にもならず比較的貧しかった東部では移民排斥に向かう人たちが増えた。民主主義の経験もあまり持たない人たちは右派ポピュリズムに動かされてしまった。つまり民族主義的ポピュリズムの台頭は貧しさと相関があることになる。社会主義体制にあった地域の人たちが今度は民族主義に流れたということになる。

中部・北部では社会主義勢力も離反され緑の党の支持が強まった。ノルトライン・ヴェストファーレン州には大都市が4つある。2つはライン川沿いで2つは石炭地域(ルール工業地帯)である。どうやら旧来の工業地帯はこれまで通りに社会主義的な政党を支持したようだ。ブレーメン市も旧来の社会主義政党が支持を得た。ところが、ケルンとデュッセルドルフでは緑の党が支持された。南部にも緑の党が強かった地域があり、緑の党は都市に強い傾向があるのではないかということがうかがえる。また北部の年収が中位の北部地域にも緑の党を支持した人たちが多かった。デンマークに近く文化的に似ているのかもしれない。

ドイツで起こったのは、極右の台頭を恐れた与党が離反され、それが「未来を志向する」緑の党に流れたということである。この中で間に立っていたどっちつかずの社会主義政党は忘れられてゆく。つまり、社会主義は「昔の未来志向」になってしまったのだ。日本の社会民主党が政党から諸派に落ちたのはそもそもコピーする相手を間違えたからだということになるが、おそらく高齢化した日本の社民党はヨーロッパの運動は理解できなかっただろう。

京都の事例だけを見るといったい何が争点なのかがよくわからないが、ドイツの例と重ねてみると日本には緑の党のような未来志向の人たちがいないことだけはわかる。未来型の提案をするためにはITや環境問題に強くなければならない。しかし、日本ではそもそもそんな人たちは政治には近寄らないのかもしれない。現状に不満がある人が代わりに希望を託すのは中途半端な立憲民主党(社民党がまだ京都に存在することも驚きだが)ではなく、より過激な主張をするれいわ新選組だ。だが、共産党とれいわ新選組は現状を否定するだけで将来に対する提案はない。おそらくれいわ新選組の原発廃止は環境派の取り込みを意識しているのだろうが、それはあまりTwitterでは響かない。日本には未来志向のイデオロギーを志向する人たちがそもそもいないのではないかと思える。

京都市長選にはおそらくこれといったテーマがない。既得権を守りたい人が他人の名前を勝手に使ってまで「共産党は嫌だ」と叫び、反対する側のメインテーマも市政ではなくおそらく「消費増税反対」という抵抗運動だ。おそらく令和2年の京都市長選はこうした行き詰まりを表しているのである。

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Comments

“京都市長選挙 – 未来なき国のコミュフォビア” への1件のコメント

  1. 京都市民ですが、一番注目されている市の問題は観光公害だと感じます。
    今回の選挙では、消費税に関する訴えは聞こえてきません。