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「安倍政治の終わり」が長引く理由

安倍政権を見てきて「末期症状が出てきたなあ」と思うのだがそれが何なのかよくわからない。つまりなんとなく終わりの始まりのような気がするのだがそれがどんな終わり方をするのかわからないのだ。おそらくキーになるのは国民の主体者意識だと思う。

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インドについて観察していて「分割統治」というコンセプトを見つけた。これは安倍政権にも使えるなあと思った。安倍政権は大臣ポストを一気に握ることで派閥の分割統治をしていたと言える。

  • 派閥に一年ごとの利権としてのポストを配布する。ポストは一年ごとなので植民地は作れない。
  • 官邸主導という名目で官僚の人事権を召し上げる。これにより官僚に新しい植民地を作らせないようにして官邸の方を向かせる。

意図してこの方法に向かったとも思えないのだが常に官邸に目を向けさせるというのはよいやり方だったのだろう。だが、おそらくはこれが機能しなくなっているのではないだろうか。それは安倍政権には統治能力と意欲がないということがバレてしまったからである。おそらく安倍首相にはもうやりたいことがない。単に首相をやめるにやめられなくなっているだけである。

そして安倍後の自民党は大混乱するだろう。

ことの発端は加計学園である。加計学園は「獣医学部を新しく作る」という許認可権をめぐる問題だった。官僚が握っていた許認可を政治が直接やろうとしたのだ。官僚は国会に対して説明責任を追わないので今までこれが政治問題化することはなかったのだが、官邸と内閣府が主導(学校は文部科学省の管轄であり獣医は農林水産省だが特区は内閣府の特区担当大臣が主管する)したことで政治問題化した。

ここから話が複雑化する。これまではポストという名誉だったのだが、これからは利権という札束の話になる。日本人は実体があるものに強く反応する。そして歯止めが利かなくなる。

カジノリゾート(一般にIRなどと言われる)はおそらく総合保養値地域整備法(リゾート法)の失敗を念頭にして利権を限ったのだろう。獲得した人たちは今後建設利権がもらえるし、うまく行けばそのあとも儲けられるかもしれない。儲からなければ損は公共に押し付ければいい。

だが、IRはポストのように入れ替えはできない。つまり派閥に勝者と敗者が固定してしまうのだ。さらには二階派の議員が獲得の見込みもないのに中国企業と組んで検察沙汰を起こす事態にも発展した。

さらに文部科学行政でも問題が起きていることがわかった。文部科学省は利権のない行政だと思われていたが、どうやら下村博文さんの元で入試が利権化が進んでいたようだ。公明党の都政での協力を当て込んで便宜供与まがいのことが行われていた可能性もある。官僚から利権を奪って官邸で管理しているはずがいつの間にか管理不能になっていた。

さらに東京都知事の問題でも揺れている。安倍官邸は小池百合子を嫌っているが、二階幹事長はこれ見よがしに小池さんと会ってみた。安倍さんが小池さんを容認したという噂まで流したらしい。安倍さんが「自民党都連は勝てる候補を見つけられないらしい」と二階さんに言われて曖昧に笑っただけなのだが、それを「事実上の容認だ」と騒ぎ立てたのである。テレビやスポーツ紙が面白おかしく記事に仕立てている。

このことは「そういえば別の場所では菅さんと二階さんが対立していたなあ」とか「岸田さんと菅さんも対立していたなあ」とか「麻生さんも地元の福岡で誰かともめていなかったっけ?」という記憶を呼び覚ます。どうやら地方を舞台に統治不能な状況が加速しているようである。

このことには二つの意味があると思う。

一つは自民党が「単なる大臣ポストだけでは満足せず実際の旨味を求めはじめてる」ということである。つまり地方の飢餓を背景に欲求が拡大している。今まで我慢していた分なんでも食べたくなってしまうのだ。小池さんの話からわかるのは、おそらく安倍首相は統治意欲をなくしているのだろうということだ。「官邸」という軛から解放された人たちは利権獲得に向けてなりふりかまわず走り出す。

もう一つわかることがある。特に地方が国の救済(つまり利権)なしに立ち行かなくなっているということだ。利権化の対象になっているものを見ると次のようになる。

  • オリンピックや万博などのイベント
  • 震災復興(これは被災者の救済には当てられず公共事業の言い訳に使われている)
  • ギャンブルを含む「リゾート」
  • 教育

これを素直に見ると日本からまともな産業(製造業やサービス業)が消えているのだろうなあということが予測できる。この中では教育だけが全国規模なのだが、これに手をつけたのは(以前にも書いたが)種籾に手をつけたという意味でとても危険である。日本人は未来のことが考えられなくなっている。今お腹いっぱいになればいいし、いくら食べても食べ足りない。裏返すとアベノミクスの掛け声の裏側で地方はお腹を空かせて我慢してきたのである。これから先その反動が「財政出動」という名前でやってくる。

政治家に監督されていた官僚は自分で利権領域の拡大はできない。このため自分が獲得した利権領域と長く関わる必要があり搾取して弱らせることまではしなかった。寄宿者ではあっても比較的悪い寄宿ではなかったのだ。

さらに悪いことに安倍官邸自体が「もう管理は不可能だろう」と諦めている様子もわかる。二階幹事長が「小池さんで行きましょう」と詰め寄ってもノーと言えない。とはいえ東京都連も決定打になるような候補者を連れてくることができない。しかしこれは氷山の一角でしかない。地方でも同じようなことが起きていて「バトルロワイヤル」状態だ。

政治家は本質的に価値の創造はできない。つまりどこかで誰かが作ったものを奪ってきて別の人に配るということになる。価値の創造をすると奪われる可能性があるが、政治家と仲良くすれば分配してもらえるかもしれないとなると、誰も価値の創造をしなくなるだろう。そして政治家は党派争いに夢中になっていて、目の前にあるものを全て食べてしまう。

実はこの話はテストとしてQuoraで下書きしたのだが、そこでは書かなかった文章がある。やみくもに増殖してやがて寄宿先を弱らせて行くものをよく「ガン細胞化している」という。つまり政治はガン細胞化しているのである。

免疫は有権者の常識的な判断だが、おそらく日本人の政治的免疫力は相当落ちているのだろう。こうなると日本の将来は暗い。つまり長期的に衰退してゆくしかなくなってしまうのである。

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