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国民民主党は何に負けたのか

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国民民主党が共産党との協業を模索しているという。安倍政権を打倒するために協力するというのだ。それに関連して「玉木代表と志位党委員長がピアノで協業した」というニュースが入ってきた。玉木さんは演歌を演奏したようだが志位さんはショパンだったという。浮世離れした感じだなあと思った。この協業は失敗するだろう。浮動票を掴めないからだ。浮動票とはつまり大衆のことだ。

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調べてみたら志位さんには実業経験がない。純粋培養の共産人なのである。四街道の出身で千葉高校から東大に進み、東大でオルグされそのまま共産党に入ったという。Wikipediaでは国会議員の前職は「党職員」と書いてあった。共産党のような左翼は労働組合の人たちが中心に運営していると思っていた。「ショパン好き」というところからインテリゲンチュア(知識階層)という言葉が浮かんだ。つまり上層部の人たちはおそらく世間を知らない。

ちなみにSNSでも活躍している小池晃さんは医者で職業経験がある。小池さんはナンバーツーの書記局長だそうである。患者と接した経験があればSNSでもそれなりの説得力のある発言ができるだろう。

政治家の貴族主義というと自民党のことがよく頭に浮かぶ。典型的なのは麻生太郎さんである。祖父が偉大な宰相吉田茂であり天皇家の外戚でもある。アメリカ英語が汚いということでイギリスに「転校させられた」というセレブっぽい逸話も有名だ。ちなみに麻生さんは職業経験があるが、実際には経営者として家業を継いでいるだけであり世間一般のいう職業経験ではない。このため麻生さんは「経営経験ない政治記者よりも経済がわかっている」という自負があるようだが、実際には家業に過ぎない。それが彼の独特の「浮世離れ感」につながっている。ラーメンの価格が分からなかったという逸話が有名である。麻生さんは自らの経歴に負けて首相の座から引き摺り下ろされた。

面白いことに共産党というのは自民党と同じ「純粋培養の方がえらい」という自民党の「反世界」のようだ。副委員長まで調べてみたが「職業経験」がある人がほとんどいない。ほとんどがなんらかの団体の職員出身なのである。

民主党は珍しく職業経験のある人が多い政党だった。自民党のように既存の利権集団に支えられてもおらず、かといって公明党のように宗教が支えているわけでもない。そうなると自分で稼いで生計を維持する必要があるということなのだろう。枝野さんや菅さんのような市民運動上がりの人が主流になっている。全体をつかんでいるわけではないのだろうが、一応市民社会とのパイプがある。

ところが、国民民主党の代表と代表代行までを見るとこれがない。三人のうち二人が財務省出身である。大塚さんだけが日銀出身であり「やや実務経験」がある。副代表まで見ると鉄鋼会社や新聞記者の経験のある人がいる。意外と労働組合の出身者がいないんだなあと思った。支援団体を持っておらずなおかつ実業経験がある人も多くないということがわかる。少なくとも彼らが地方組織を持っているとは思えない。つまり、彼らは支持基盤がないがゆえに別の寄宿先を探さざるをえなかった人たちなのである。共産党は自前で新聞を売っており寄宿先にはなり得る。だが先行きはあまり明るくなさそうだ。高齢化していて新しい共産主義者を獲得・開発できていないからだ。

おそらく、国民民主党議員が最初に見つけた寄宿先は大規模企業・公務員・教員の労働組合だったんだろうなあと思う。だが、そうした人たちとどういうわけか折り合うことができず、かといって利権集団と妥協もできなかった。そうして最後に相手にしてくれたのが赤旗という基盤を持っている共産党だったことになる。だが実際の共産党は大衆にアピールしようとしてショパンを弾いてしまうような浮世離れした人たちだった。国民民主党は枯れてゆく運命なのだろうなあと思う。あとは自前でYouTubeファンを獲得するしかないが、官僚出身の人が無理して大衆派を気どるチャンネルは見ていて痛々しい。

ちなみにこういう時は自民党出身の重鎮に頼れば良いと思い小沢一郎さんの履歴を調べてみたのだが、大学卒業後弁護士を目指して院に進みそのまま父親の急逝で地盤を継いでいる。山本太郎は民衆と話ができるので外に出てしまった。おそらくそれは正解だったのだろう。

もっとも政治家たちが世間とのつながりがないというのは悪いことばかりではない。下手に実業経験がある人の中には大衆扇動の才能を発揮する人が出てくる。政治家がほとんど浮世離れしているので我々は政治家に扇動されにくいのだ。

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