世間はお花見の話に夢中なようだが最近気になっている別の話がある。消費税が増税されて景気が悪化しているはずなのだがそれがあまり伝わってこないのである。さらに日経新聞を読むと前年同月比で貿易黒字が9割も縮小していると書いてある。「あら大変だ」とは思うのだが、それもさほどニュースにはなっていない。ただ、その都度検索するだけでまとまった知見が得られない。過去の貿易黒字について半年分くらいを検索してみることにした。
半年検索してわかったのは2018年の「過熱気味」とも言える景気が2019年になって急速に悪化しているということである。顕著なのが原油価格だ。原油価格は2018年10月をピークに下り基調にあるようだ。2018年には石油価格が高騰しているという話があり、その時には「世界経済が好調に推移する」と書かれていた。それから一年で様相が様変わりしたことになる。
ただ、さらにさかのぼるとさらに不安な兆候もある。2017年にはアメリカの政策変更が世界経済に打撃を与えるかもしれないというような記事を見つけた。これら諸々の動きを頭に入れると2019年の中盤から起きた民主主義の動揺の原因の一端が見える。にもかかわらず日本ではあまり景気が悪化したという話が聞かれない。これはいいことなのか、それとも悪いことなのかという疑問を持ちつつまずは切り抜きを見て行きたい。
輸出額の減少幅が輸入額の減少幅を上回ったため、差し引きの貿易黒字幅は前年同月に比べ9割超縮小した。
9月の経常黒字、12.5%減の1.6兆円 貿易黒字幅縮小
まず、直近2019年9月期の評価だが「好調だった」前年と比べると貿易黒字が9割も縮小している。「なんとかショック」なみの大打撃なのだが大した騒ぎにはなっておらず、世間の関心はお花見が私物化かどうかということになっている。ちなみに好調だったのは景気が過熱していたというせいもある。
輸入額は原粗油などの輸入減で6兆299億円と12.7%減と大幅に減少した。輸入額の減少が輸出額の減少を上回り、貿易収支は黒字に転換した。
8月の経常黒字、黒字幅が18.3%拡大 貿易収支の黒字転換で
8月には「石油を輸入しないほうが赤字が減る」と書かれている。どういうことなのかはわからないが、原油を買って加工して売るというビジネスモデルは成り立たなくなっているのかもしれない。別のニュースを読んでいたので「おそらく同じことが鉄鉱石などでも起きているのだろう」と思った。
貿易収支は745億円の赤字と、前年同月から赤字幅が659億円拡大した。自動車部品や半導体等製造装置の輸出が大幅に減った。原油価格の下落によって輸入減となったが、輸出減による影響が上回った。
経常黒字1.3%減 7月、貿易赤字が重荷
実は7月は赤字だった。なので黒字があるだけマシという状態だったのだ。
貿易収支は2242億円の黒字と、前年同期の比べ87.4%減少した。アジア向けの半導体等製造装置や鉄鋼の輸出が落ち込んだことが大きく響いた。輸出額は5.2%減の37兆9497億円、輸入額は1.4%減の37兆7255億円だった。
1~6月の経常黒字10.4兆円、貿易収支悪化で黒字幅縮小
遡って上半期のまとめだがここでも約9割黒字幅が減少していると書かれており、これが9月単独の話ではないということがわかる。そして韓国で半導体が落ち込めば日本も影響を受けるということもわかる。確か「韓国の対応が気に入らない」と言って報復合戦をしていた時期じゃないだろうかなどと思った。
輸出は6カ月連続で縮小し、5月は前年同月比6%減の5兆9180億円となった。中国や韓国向けで半導体等製造装置の輸出が低迷した。
経常黒字16%減 5月、貿易赤字響く
中国向けの半導体等製造装置や電子部品の減少が響き、輸出額は前年同月比3.7%減の6兆3880億円となった。一方、輸入額は6.9%増の6兆4862億円だった。原粗油や電算機類(含む周辺機器)などの輸入が増えた。
4月の経常収支、黒字幅縮小 中国向け輸出減で貿易収支は赤字
日経新聞の見立てによると、原因は中国・韓国向けの減速だ。中国経済がスローペースになっているということもあるのかもしれないし、そういえば韓国との関係もこのところ急速に悪くなってきたなあと思い返してしまう。ただ韓国との関係が悪くなったのは今年の中盤以降だから景気が悪くなったので反日カードが切られ景気がさらに悪化したのであろうという順番になるのだろう。ダウンスパイラル(悪循環)だ。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9648億円の赤字(前年同月は6607億円の赤字)だった。中国を含むアジア向け輸出の低迷で輸出額が6.7%減少した。輸入額も原粗油や石油製品の減少を背景に全体で1.7%減少したが、輸出の減少が上回った。
1月の経常黒字、前年比1.4%増 第1次所得収支が過去最高
少し飛んで1月である。1月も赤字だったらしいが、そんなに大騒ぎをしていた記憶はない。今回の急速な原則にはトランプ大統領の選挙対策に依存するところが大きい。
この線で追って行くとNewsweekにこんな記事を見つけた。トランプ大統領は貿易赤字を敵視していて2017年頃のマスコミにはは「貿易赤字を敵視するのは間違っている」というような論調が見られた。
日経新聞は2017年にこんなことを書いている。
トランプ流の関税政策はむちゃだが、共和党議会が推進する国境税を含めた税制改革は、米国に投資を呼び戻し、消費から投資へ、と経済を変えていく有効な手段となりうる。しかし、これは赤字を減らしても、雇用を増やす効果はほとんどない。AI化の下で、投資の雇用創出効果が加速度的に小さくなっているからだ。それでも製造業の強化は、米国の赤字をベースに成長してきた世界経済を大きく変えることになるだろう。
なぜ貿易赤字が問題なのか
因果関係としてはまずアメリカの製造業の構造不況がありそれがトランプ政権を生み出し2018年末頃からのアクションの結果が今出ていることになる。こんな中、例えばこんなニュースを思い出した。「八幡製鉄所」の名称消える 大分と統合、「九州製鉄所」に 日鉄、6拠点に再編というニュースである。九州以外の人にはインパクトが伝わりにくいと思うが、リストラについてもほのめかされている。多分、これから痛みが出てくるだろうし、多分製造業は日本には戻ってこない。ちなみに福岡県は麻生太郎副総理の地元で、隣の山口県下関市は安倍晋三総理大臣の地元である。
日本は国全体としては債権国なので黙っていても毎月1兆円から2兆円という額のお金が入ってくる。一方、地方の製造業拠点は確実に失われている。多分それが表出するのはこれからなのだろう。ただ東京の経済は損なわれないので地方独自の問題にすり替えられ「日本全体の問題」にはならないのかもしれない。
いずれにせよわからないことが多いのだが、わからないことをわからないままで整理しておくのも大切なのではないかと思った。いずれにせよこれは循環的な景気悪化ではなく構造転換である。おそらくは自民党も民主党系野党も打ち手は持っていないだろう考えるのも恐ろしいことだがそうでなければ「花見の予算を数倍にしよう」とか「いやその問題で国会を空転させてやろう」などと彼らが考えているのは、おそらくは与野党ともにこの一連の変化を見逃しているからなのかもしれない。