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金持ちなのに金の使い方が下手になった日本人

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安倍総理の桜を見る会が炎上している。最初は「法案審議もしないでお花見議論か」などとバカにしていたのだが、ついにフジテレビまでが取り上げた。よほど「隣の選挙区だけずるい」というのが気に入らない人が多いのだろう。

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この様子をテレビで見ている高齢者は医療保険があてにならないと考えていて「とにかく病院のお世話にはならないようにしよう」と思っているはずだ。毎日健康のために歩いたり、健康食品のセミナーに通ったりしている。そして蓄えた貯金は絶対に使わない。そんな中この「無駄遣い」である。腹が立たないはずがない。

桜を見る会自体は1952年から開催されているそうなのだが、安倍政権になって招待者が膨らんでいることがわかった。予算要求は1766万円だったそうだが、実際にかかったのは5200万円だったと東京新聞が伝えている。いくらなんでもおかしいと共産党が調べたところ本来は「優れた業績がないと入れないはず」の桜を見る会に特定の政治家の支援者が紛れ込んでいたというわけである。かつて1万人だった招待者は1万8200人になっているというのだ。ここまでくると「大宴会」である。この中に安倍首相の後援者が850名も招待されているのだそうだ。また安倍晋三後援会は前夜祭をやっていて記念撮影などの行事もセットされているという。

日本は公職選挙法で厳しく支援者への利益供与を禁止しているにもかかわらず、一部の政治家だけが得をしていいのかと大騒ぎになっているのだろう。日本人は原理原則にはさほどこだわらないが「誰か特定の人だけが得をしている」というのがとにかく嫌いである。

官邸はいつものように「資料は廃棄した」と言い募っているようだが、今回は自慢したい人たちがブログや会報などに「お呼ばれして嬉しかった」というような記事をたくさん載せている。追求する方もよく見つけたなと思うのだが、周南市長のように記事を削除してそれが話題になったりもしている。つまり、日本人は「自分だけが得をした」ということをこっそり見せびらかしたい。

いずれにせよ「金権政治」というにはいかにもいじましくあまり反応する気にはなれないのだが、それが一番響くというのが今の政治的な景色である。

日本は経済が没落傾向にあるのだがお金は潤沢に入ってくる。こういう国にできることがある。それが文化を売ることである。文化にはお金がかかる。例えばノーベル賞などは壮大な無駄遣いだ。スウェーデン王室が主催して豪華な食事会を行うがこれを「私物化」などという人はいない。こうして「スタイル」を作るのが金持ちの仕事である。隣の芝生の嫉妬に敏感な日本にはこうしたひけらかしの文化がない。

アメリカにもイギリスにもセレブウォッチのような雑誌がある。映画祭や王室主催の晩餐会など様々な見せびらかしの機会があるのだろう。プライベートジェットでそこに駆けつけるセレブや豪華な洋服は庶民のあこがれになり文化が牽引される。製造業段階を抜けた国ではこうして新しい需要を喚起する必要がある。

今回も飲食費が2,262万円だったそうだが、実際には18,200人も来ているのだから一人頭1万円程度の食事でしかない。多分立食なので大したものは出ていないだろう。やるならもっと豪華な「園遊会風料理」を作ってゆっくりと楽しめばいい。そうすればそれは文化になる。だが「バレたくはないがちょっとはバレてほしい」というような気持ちではしょぼい文化しか生まれない。

もう役に立つものだけを作って食ってゆくことはできなくなった。皮肉なことなのだが日本人はお金の使い方を知らないまま金持ちになってしまったとも言える。金持ちは金を周囲にばら撒くことで地位をひけらかしさらにお金を集める。だが日本人は私物化し余計に怪しまれてしまうのである。多分、ここまで騒ぎになったからには来年の桜を見る会は自粛ムードに包まれるのだろう。

菅官房長官が3,000円のパンケーキを食ったと言って恨まれるこの国ではそもそも生粋の金持ちたち(多くは土地を売って儲けたりしていて表面上は質素に暮らしている)はそもそもこれを最初から心得ていてお金を贅沢に使ったりしない。こうして日本の景気はますます冷えていくのではないかと思う。

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