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日米同盟破棄報道の真相について考える

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先日、Bloombergの日米同盟(正確にはアメリカの日本防衛)放棄報道(英語原文)が話題になった。この「真相」について考えた。

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出元は3人と複数であり確実性が高そうに見える上に「あの経済紙ブルームバーグ」が書いているのでそのまま受け取った人も多かったのかもしれない。Twitterでは張り切ってトランプ大統領の野望について推理している人もいた。

この騒ぎを見ていて、そういえばマイケル・ブルームバーグさんは政治家だったんだよなあと思った。これがまたかなり複雑な経歴の方のようだ。もともとは民主党だったが共和党からニューヨーク市長選挙に出るために共和党に転じて市長になった。その後2期だった任期を3期に伸ばして再選し任期満了で退任した。

市長退任後はBloombergのCEOに復帰するが、民主党に復帰して大統領選挙に出るのではないかと伝えられた。だが、民主党は現在候補が乱立しており出馬を諦めたようだ。民主党が分裂したままではトランプ大統領に勝てないからだろう。現在では環境問題にお金を使う「いいお金持ち」になったようだ。

Bloombergには「創始者であり過半数の株主である」と書かれているので、Bloombergは実は反トランプ陣営の新聞社なのである。そう考えると「本当に情報提供者は三人はいたのか?」ということも含めて疑問に思えてくる。

日本では辺野古の問題について「土地に価値がある」というようなことを言っていたという発言が削除されているという話があった。

Abe reached a deal in 2013 with Obama to move the base out of Okinawa as early as 2022 if a replacement could be constructed. But Trump believes the land underneath the base is valuable for development, and has told confidants the real estate could be worth about $10 billion, the people said.

安倍は2013年にオバマと2022年までに代替施設ができれば沖縄の外に基地を移すというディールに到達した。しかし、トランプは基地の下の土地は開発価値があり不動産価値は100億ドルくらいあると腹心に話していると人々は語った。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-06-25/trump-muses-privately-about-ending-postwar-japan-defense-pact

トランプ大統領はFOXのインタビューで「日本との同盟は不公平だ」と語っているので、日米同盟に不満があるのは確からしい。だが、この記事だと大統領ではなく不動産屋として話をしているように聞こえてしまう。「なんかいいそうだ」というのがポイントなのかもしれない。さらによく考えてみると、FOXで日本の悪口を言っているとわざわざ伝えているのも実はBloombergなのだから、多分Bloombergは日本を意識して記事を書いているのだろう。

マイケル・ブルームバーグさんは自分が大統領になりたいわけではない。トランプ大統領を追い落としたいのだ。もし大統領になりたいなら民主党の候補者選定に参加していたはずである。そして、トランプ大統領を追い落としたいのだからあらゆることをするだろう。

これをアメリカ人に聞いてみた。フェイクニュースだという人が二人いたが、もう一人はBloombergは信頼できると書いていた。政権内部に不満がある人がリーカー(通報者)になる可能性があるということである。もしその読み通りなら、偶然3人が同じリークをするとは思えないので日米同盟についてなんらかの意思が働いていて「絶対に秘密を守ってくれる」陣営の新聞から情報を出したのだと見ることができる。つまり政権内部の駆け引きはそれほど熾烈になっていてバランスが危うくなっている可能性があるということだ。

これがリークなのか確実に知っている人が一人いる。それがトランプ大統領である。もしリークだと気がついているなら「この中に通報者がいるのだ」と怯えながら残りの任期を過ごすことになるだろう。

もうひとつ言えるのはアメリカ人があまりにも2020年の大統領選挙に夢中になっているということである。つまり、すべての報道やアドバイスは誰かの思惑がらみである可能性が高いことになる。信頼性は確実に落ちているのだ。

日本人は「マスメディアというのは中道でなければならない」と信じ込んでいる。だから、外国のメディアと外国の選挙の動向がそのまま日本に入ってきてそれが日本の政治に動揺を与えかねないということはなかなか想像しにくい。かといって、こうした報道をすべて無視していいとは言えない。我々は疑いを持ちつつも本当のことはわからないというかなり不確実な状態に耐えなければならない。

とにかくアメリカさえ信頼していれば大丈夫だとしてきた安倍政権はオバマ大統領からトランプ大統領に変わっても変わらぬ盲従の姿勢を示してきた。そしてトランプ関係者とのパイプがなかった政府(外務省はクリントン側が勝つと思っていたようだ)も「安倍首相と大統領の個人的な関係」に頼ってきた。

普通日本人はアメリカがこれほど分断されているとは思わないはずだ。だからこれが一番確実なやり方のように思える。だが、深刻な分断を抱える側からみれば「誰でもいいのか」ということになりかねない。今までメリットだと思っていたものがリスク要因になりつつある。

この安倍首相依存の安易な姿勢は日米関係をさらに悪化させる可能性があると言えるだろうし、イランとアメリカにどっちつかずの態度を取ったことも、中国に安易に近づいたこともこの後大きな禍根を残すに違いない。しかしよく考えてみれば全方位にいい顔をして「いい奴と思われたい」という外交の安倍の一番「いい点」なのである。

周囲が不確実な文、日本はこの先「自分たちがどうしたいのか」を鮮明にして国際社会と付き合う必要があるのだが、よく考えてみればそれは日本人の一番苦手なことなのかもしれないし、少なくともみんなに嫌な顔を見せたくない安倍首相にとって一番苦手なことなのだろう。

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