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とにかく戦争がしたいアメリカは戦争10分前まで行った

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アメリカがイランと戦争状態に突入する10分前だったというニュースが入ってきた。散発的にいくつか情報が出てきていたが一番ショックだったのがブルームバーグだった。

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トランプ大統領は21日に「われわれは昨夜、3カ所への報復攻撃を準備していた。私は何人死ぬことになるのかと質問した。150人というのが将軍の答えだった」とツイート。「攻撃の10分前に私が止めた」と説明した。

トランプ大統領:イラン攻撃は10分前に中止-「相応」でないと判断

トランプ大統領の心理状態がどのようなものなのかというのはTweetをみるとよくわかる。ほぼ選挙キャンペーンの話で埋め尽くされていた。2020年の大統領選挙キャンペーンのキックオフミーティングの高揚感に包まれていたのだろう。そんな中でとにかく戦争がしたいる部下からの一方的な情報を聞き「なんとなく」攻撃を決定したのかもしれない。だが、そのあと「念のために」確認したところ、150人くらい死にますねと言われたらしい。それでそれを止めたのだ。

だが、それほど悪気はなかったのだろう。だからTweetしてしまったということだ。一番恐ろしいのは「もうちょっとで戦争だったんだよね」と気軽に世界に発信してしまったところにあるのかもしれない。

このことから戦争など簡単に起こるものなのだということがわかる。問題はそれが継続できるかである。

日本の新聞を読んでいる人は、世界はイラン包囲網を形成していて国際的にイランを攻撃する空気ができていると思い込んでいるかもしれない。イギリスのようにそう考えている国はあるのだが、実際にはアメリカの言い分に懐疑的な国も多い。

また、民主党もアメリカはイランと戦争をする気がないと言っている。コトバンクで調べたところ、宣戦布告はもともと大統領の権限とされていたようだが「事後でもよいので議会の承認を得るように」と変わっているようだ。さらに予算措置は議会が行う。つまり、攻撃してイランを怒らせても戦争ができない可能性があるのだ。この基本的構造はアメリカが全ての戦争を泥沼化させる要因になっている。大統領が先走り議会が反発すると根本的解決ができず事態が長期化する。被害を受けるのは現地の住人と周辺の国際社会である。シリアの場合は難民の流出がヨーロッパに広がりヨーロッパの民主主義が大きく動揺した。

「大統領の気まぐれで戦争が回避された」というニュースは日本のマスコミではほとんど取り上げられていない。ご存知のように参議院選挙が近くなり「総理大臣が議会を解散するのか」というようなことばかりが話題になっているからである。内政の問題は選挙になれば休戦だが国際状況はその間も刻々と変わり続ける。

しかし、アメリカが単独で戦争を維持できずヨーロッパも協力者がいないとなったとき、これまでトランプ大統領に最大限「いい顔」をしてきた安倍晋三さんがトランプ大統領の要請を断れるかどうかはよくわからない。日本だけが頼みの綱になってしまう上に、石油をホルムズ海峡に依存する日本の方が当事者度合いが高い。

これまでこうした要請を断るのに便利に使われてきたツールがある。それが憲法第9条だった。賛成派も反対派もいろいろなことを言っているが実は自民党はこれを隠れ蓑にしてアメリカの要請を断り続けていたという経緯がある。最近デイリー新潮に「ベトナム戦争の派兵は憲法第9条があるから断ればいい」と田中角栄が言っていたという記事が出たばかりだ。

「角栄は『そういう時には、憲法9条を使えばいい』と返したそうです。アメリカが日本に押し付けた憲法を逆手に取って、日本が派兵しない理由に使うというのは、リアリストの角栄らしい理論だと思います」

田中角栄が「憲法9条」を盾にベトナム戦争への派兵要請を断っていた

安倍首相は周囲の反対を押し切ってまでこのカードを放棄してしまった。その際にわざわざ焦げた肉のような模型まで使ってホルムズ海峡の話をしていたことを記憶している人も多いはずだ。野党が騒いでいた巻き込まれ不安が現実的な問題になりつつある。

さらに、アメリカとイランが国家間の戦争をしたくない場合、イランは革命防衛隊やそのシンパを使って「ゲリラ的に」ホルムズ海峡を封鎖するこができる。ホルムズ海峡は日本にとっては重要な航路だが、アメリカにとってはそれほど重要ではない。

2020年に向けて対立を「演出したい」アメリカ議会はトランプ大統領に戦争をする権限は与えてくれないかもしれないのだ。結局、戦争にもならずに緊張だけが高まった時一番被害を受けるのは日本かもしれない。

そうなればすべてのアジェンダが中止されてイラン対応一色になることは想像に難くない。

日本はとても厄介な問題を抱えたのではないかと思う。「世界で一番トランプと仲が良い」と自認しているのなら安倍首相はテヘランなどに行かずトランプ大統領が軽率な動きを取らないように止めるべきだった。

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