北朝鮮が新しいなにかを打ち上げた。米韓日はこれを飛翔体と言っており、ミサイルとは認めていない。この状況を見て金正恩の方が一枚上手だなと思った。
国際社会は北朝鮮の調教に失敗した。吠えたら黙らせるために餌をやるというやり方で失敗したのだ。これからも北朝鮮は吠え続けるに違いない。関係各国は自分たちが調教に失敗したという事実を認められないので、あの犬は吠えているのではないといい続けるだろう。
各国がこれをミサイルと認められないのはなぜだろうか。二つの問題がある。まず、日経新聞が書いているように「弾道ミサイルと認めてしまうと国連安保理の決議違反になる」のでなんらかの制裁をしなければならなくなるという問題がある。
各国は北朝鮮との対話は進んでいると喧伝してきた。特にトランプ大統領は「北朝鮮はもうアメリカにミサイルは撃ってこない」とまで言っている。文在寅大統領も北朝鮮融和策を取っておりなおかつ軍事力がアメリカ頼みなのでアメリカとは違う判断はできないのだとテレビ朝日は伝える。彼らは国民に必ずしも事実でないことを伝えており、つじつまを合わせなければならなくなってしまったのだ。
特にアメリカの反応は露骨だ。ハンギョレ新聞が伝えるところでは、ポンペオ国務長官は日本海に向けて撃ったのだから韓国と日本に脅威はないと言いつつ国内向けの本音を漏らしている。「モラトリアムは明らかに米国を脅かす大陸間ミサイルシステムに焦点を当てたもの」だから今回のアメリカに届かないミサイルは問題がないと言っているのである。つまり、アメリカさえよければあとはどうでもいいと考えているのだろう。これをアメリカファーストという。
しかし、このポンペオの見込みは間違っている。実際の在韓米軍は危険にさらされるのである。韓国の軍隊は焦りの色を隠せない。中央日報は次のように書いている。
写真を見ると発射体がロシアの弾道ミサイル『イスカンデル-M』と全く同じ [中略] 朝鮮が打ち上げた発射体がイスカンデルの改良型だった場合、韓半島(朝鮮半島)に致命的な安保脅威になる
韓国軍「北の発射体」 韓国党「ミサイルをミサイルと呼べないのか」
ポンペオ国務長官は国内向けに「大したことはない」と言っているのだが、実は陸続きの韓国には脅威であるということがわかる。イスカンデルについては軍事ブロガーという人が記事を書いている。誘導性能があり固形燃料で準備が簡単ということだ。そしてこれは紛れもなくミサイルだそうだ。
半島に脅威が迫っており、海峡を挟んで隣同士の日本にもほぼ直接の影響があることを意味する。半島情勢が悪化すれば難民の一部は日本に押し寄せてくることになるだろう。だが、令和の祝福ムードで満たされた日本の報道はこのことを伝えなかった。日本の報道は「安倍首相が強い決意を持って北朝鮮と対峙する」という政府側の広報を伝えるのみだったようだ。
表向きの強い決意とは裏腹に、乗り遅れており相手にされていない日本はついに焦り出し「条件なしで話を聞いてやる」という線まで譲歩してしまっている。これも「吠えれば餌をもらえる」という学習になっている。条件をつけないということは拉致問題について話し合えなくても良いということである。
トランプ大統領もここに商機を見出しているようだ。北朝鮮と貿易交渉をリンクさせて日本に譲歩を迫ろうというのである。「良い会話だった」とご機嫌だ。安倍さんが泣きついてくれば「代わりに何をくれるの?」というのは当然といえば当然である。
Just spoke to Prime Minister Abe of Japan concerning North Korea and Trade. Very good conversation!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) May 6, 2019
安倍首相の「策なき外交」がどれほど日本の国益に反しているのかということがよくわかるが、日本のマスコミはもうこの今ここにある危機を直視できない。日本は自分たちの命運が自分たちで決められないので危機を煽ることしかできなくなってしまうからである。そしてこの手の問題で騒ぎそうなネトウヨも騒がない。彼らもまた「失敗者」と見なされるのを恐れている。
北朝鮮の金正恩はスイスに留学した経験があり欧米人がどのような志向様式を持っているのかよく知っているのだろう。民主主義国では政治家の約束は国を縛り政治家は約束に縛られるということを熟知しているのだ。
冷静に考えれば武器を使って恫喝を続ける独裁者が許されるべきではない。しかし、アメリカ・日本・韓国ともに劇場型ポピュリズム政治に半分足を突っ込んで抜け出せなくなっている。だからこそ独裁者が勝つというようなことが起きてしまうわけである。ポピュリズムはお話を作って大衆を手なづけるのだが、そこから抜け出せなくなってしまうのだろう。