ポンペオ国務長官がイラクを訪れて対応を協議したというニュース(時事通信)が伝わった。イラン情勢が緊張しているようだ。イランも核関連活動の一部を再開(朝日新聞)すると宣言した。
今回緊張を高めているのはどうやらアメリカ側のようである。この二つの記事によると「イラクが軍事的な緊張を高めている」と主張して空母などを展開したのだが根拠は示していない。背景にはイラン原油輸出の全面禁止がある。日本も2019年5月末(つまり今月中)には全面禁止を求められるようになるという。これに対する軍事的な反発に備えて予防措置を取っているものと思われる。
この一連の記事を読むと「なぜこの時期なのだろうか」という疑問がわく。実は、アメリカがイラン核合意から離脱してから一年になるのだ。この枠組みにアメリカが復帰せずプレッシャーをかけ続けているので、イランもついに「対抗策を打ち出しますよ」と宣言する予定(時事通信)なのだ。
アメリカ・日本・韓国は北朝鮮に弄ばれているが、イランの状況は全く異なっている。見方を変えればトランプ大統領の頭の中には中東のことしかないのかもしれない。
イラン・北朝鮮両国に対するトランプ大統領の態度には一貫性がなく説明がつかない。あえて説明するとしたらトランプ大統領の「総合的判断」としか言いようがないのではないか。そう考えて1年前の記事を読んでみた。
いろいろな理由があるようだが、どれも彼の個人的な都合に楽観的解釈をまぶしたものに過ぎないようだ。平たく言ってしまえばめちゃくちゃなのだ。
- イランはトランプ大統領を支援しているイスラエル(及びユダヤ系)と敵対関係にある。
- 北朝鮮に「圧力をかけたから」北朝鮮が取引に応じたのだという単純な理解がある。
- トランプ大統領が「大人の対応」を求めていたスタッフをすべて解雇し強硬派に置き換えてしまった。
- イラン合意でイランを普通の国として扱おうとしたのがオバマ大統領であり、トランプ大統領はオバマ大統領を否定したい。
Nippon.comの鈴木一人さんの記事ではは「当面大した問題にはならないだろう」と分析していた。アメリカが離脱したが他の国は合意の枠組みに残ったからである。しかし今回アメリカが状況をエスカレートさせて「deal」をしかけたためにフランスも合意を離れれば制裁をせざるをえなくなると言わざる得なくなった(Reuters)ようだ。イランはまだ大人の態度を保っていて60日のマージンを作ってヨーロッパと交渉すると言っている。
「大人のヨーロッパ」がかろうじてつなぎとめてきた枠組みをアメリカ流の(あるいはトランプ流の)Dealが押し流そうとしている。そしてこれは突発的な事態が起こりやすくなっていることを意味し、地域の緊張が高まれば中東各国も核武装に向けて動き出すだろう。
トランプ大統領は中国に対してもDealをしかけている。関税の引き上げを仄めかし中国を恫喝した(日経新聞)のだ。もちろん中国経済に影響はあったが、アメリカの株価も極端に下がった。彼の考えるDealは世界を危険なところに連れて行こうとしている。