このブログで何回か取り上げたスパイト(いじわる)行動。
元になった論文はコチラ。
この論文から私が読み取ったのは次の点だが、どうやら「1」は正しい理解ではなかったようだ。
- 筑波大学の学生は(カリフォルニアの学生に比べ)公共財のフリーライドを目指す傾向がある。
- 筑波大学の学生は自分の利得を削ってでも、フリーライドを禁止する傾向が高い。
- これにより、フリーライダーは協力せざるを得なくなる。
これについて、ゲーム理論で解く (有斐閣ブックス)で、もう少し調べた。ご本人の論文よりもこちらの方が分かりやすかった。他にも面白い例がたくさん掲載されている。ゲーム理論は一昔前の流行と見なされているフシもあるが、いろいろなヒントを与えてくれるようだ。
公共財供給とスパイト行動 (西条他)
- 公共財とは一人が消費することによって別の人が消費できなくなるという性質を持たないもの。(私的財に対応する言葉)
- アクセスに制限を儲ける(有料テレビのように)ことで、排除可能な公共財を作る事もできる。
- 公共財はただ乗り(フリーライド)が起こるため、協調によって得られる最大利得行動がナッシュ均衡にならない。
- ただ乗りを防ぐためには、制度設計が重要(Groves&Ledyard, 1977)
- 社会の全部が自発的に公共財投資を行うインセンティブを常に持つ戦略を立てるのは不可能(Saijo & Yamato, 1997/1999)
- 経済実験(Saijo, Yamat, Yokotani & Cason 1999)では、このようなゲームを繰り返し行う事で参加68%,不参加32%という均衡戦略に到達するかどうかの実験が行われた。(※いつも2/3、1/3になるというわけではなく、利得表で調整しているものと思われる。)
- しかし筑波大学の実験では参加率が95%まで上がった。それは自分の利得を犠牲にしてまでも、相手のただ乗りを阻止する選択をする人が多かったからだ。これをスパイト行動と呼ぶ。
- このような違いがなぜ起こるのかは、解明されていない。
自分の利得を削ってでもただ乗りを防ぐ努力が抑止力になっているという説明だが、インプリメンテーションはなかなか難しい。普通に読み取ると、相互監視的な抑止力がなくなると「普通程度」にただ乗りが起こるコミュニティーができあがるということなのだろう。ただ、フリーライド抑制のメカニズムは他にも存在するかも知れない。
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