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よくわからない韓国の保革対立と地域間対立

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今回はオタク差別について考えるのだが、その前になぜ差別が存在するのかということについて考察する。オタクについて考えるのになぜか題材は韓国である。

韓国について調べていると保革対立というよくわからない概念がでてくる。日本の保革対立はイデオロギー対立のように見えるが実はそうではなさそうだ。同じように韓国にも保守系と革新系の大統領がいると言われるが、原理的に社会主義が存在しえない韓国で革新系が生まれる理由がよくわからない。

革新系の大統領にはキムデジュン、ノテウ、ムンジェインの3名がいる。あとの人を保守系と呼び、それ以前は軍人が大統領になっていた。

大統領の出身地をプロットしてみた。ほとんどの大統領が南部出身である。中でも目立つのは慶尚道と言われる地域だ。ソウル近辺と忠清道出身の大統領はいない。朴正煕と全斗煥の間にいた崔圭夏という大統領が江原道出身だそうだが8ヶ月しか大統領を務めておらずクーデターによって交代させられた。

よく韓国には地域間対立があると言われる。よく耳にする説明は光州事件起源説である。朴正煕大統領が出身地(大邱の北にある亀尾の出身だそうだ)を優遇して全羅道を差別したので全羅道の人たちが怒って光州事件を起こしたというような説明がされることが多い。

光州事件は朴正煕大統領が暗殺されたあとに起きた民主化運動が鎮圧されたときに発生した。軍の実権を握った全斗煥がライバルになりそうな政治家たちを逮捕し大統領になった。特に反発を強めた地域が光州などの全羅道地域だったとされる。死者数は170名という大事件だったのだが、軍人政権が続けばこのまま全羅道が冷遇されると思った人が多かったのかもしれない。

しかし、この対立は朴正煕の地域優遇の結果だとは考えられておらず、さらに根深いと説明する人もいる。もともと朝鮮時代には慶尚道と京畿道・忠清道の対立があり、全羅道の人たちは政治参加すらできなかったという説明を見かけた。士林派という朱子学を信奉する一派が学術的な闘争を繰り広げたというのだ。

この士林派の対立は、実はイデオロギー対立ではなかった。もともとの保守勢力が腐敗したあとに地方出身者からなる科挙合格者が台頭して生まれたのが士林派である。そこに好き嫌いの争いがうまれ、それが地域を巻き込んだ対立となっていったという歴史があるようだ。最初に何があったのかはよくわからないが、人は群れを作るとお互いを差別し始める。

この不毛な争いがなくならなかったのは韓国が朝献国だったからだろう。敵がおらず外交的なオプションもないので、内部で不毛な争いを続けても国が滅びることはなかったのである。士林派は分裂を繰り返して最後までひとつにまとまることはなかった。

ところがこの争いにすら参加できなかった人たちがいる。それが全羅道出身者である。全羅道の人たちが冷遇された歴史を遡ると高麗の太祖にまで遡る。湖南地域の人たちは最後まで高麗に従わなかったので「今後湖南地域の人たちは登用してはならない」という条項を含む訓要十条が作られたという。いったん作られた地域差別はなくならず、現在につながる差別感情が生まれた。全羅道の人たちは意思決定から外されたままで首都で差別されることになった。

よく日本は集団主義だなどというが、ここまで激しい対立はない。朝鮮半島には人材登用をめぐる激しい対立があり、それが現在まで生きていることに驚かされる。

いったんある種の非差別集団ができると、それは様々な形で利用される。

朴正煕大統領は自分たちの基盤を強固なものにして国をひとつにまとめるために全羅道を冷遇したのかもしれない。それが現在でも残っているのだが、表向きは地域差別とは認めたくないので保革対立と言っているのかもしれない。

韓国の争いは顕在化しているのだが、日本は表向き平等具合の強い社会だ。このため非差別当事者が自分たちは差別されていると声をあげにくい。さらに差別する側も構造そのものを認めたくないという意識を持つ。

この傾向は最近のMeToo運動で顕著に現れる。本来女性は被差別集団なのだがそれを認めてしまうことは社会における自分たちの劣位を認めることになる。また男性に対する敵意の表れになってしまうと男性社会で生きてゆくことができない。こうした事情があり声を上げる不都合な人が現れると女性の中からも「差別される側にも落ち度があったのでは」という意見が聞かれる。

さらに野党議員はこの運動を利用しようとして黒い服を着てMeTooとやってみたが女性は賛同しなかった。もちろん男性側の根深い抵抗意識も背景にはあるのだろうが、女性がまとまれないことも運動が盛り上がらない理由になっているのだろう。野党側はMeTooではなくWithYouとやるべきだった。

こうした地域間差別が念頭にあるためなのか、QUORAで韓国人に保革対立について聞いても地域間対立や構造について教えてくれる人はいなかった。韓国人も日本人同様「自分たちは特殊な世界に住んでいてとても外国人には理解できない」と考える傾向がある上に自らの国が抱える非差別感情については表沙汰にはしたくないだろう。だから説明する人がいなかったのではないかと考える。さらに全羅道差別には歴史的な経緯と首都での権力闘争が絡んでおり普通の人に「なぜ全羅道が差別されるのか」などと聞いても明確な答えは帰ってこないだろう。

こうした動きを解消するためには外に敵を作るのが手っ取り早い。現在は北朝鮮が現実の脅威として存在するのだが、これがなくなってしまえば他に敵を作るしかなくなるだろう。そしてそれは日本である可能性が高い。

今回はこのように「すっきりと」まとめたが、当事者は「それほど問題は単純ではない」と考えるのかもしれない。このことがまた差別感情の解消を難しくしている。当事者が必ずしも問題を認識しているわけではないということがわかったので次のオタクについて考える。

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Comments

“よくわからない韓国の保革対立と地域間対立” への1件のコメント

  1. […] 逆にいうと転落を恐れる人はオタクという下層を作ることによって「自分たちは普通なのだ」という満足を得られる。これは統計をとって「普通」を定義するよりも簡単にまとまりを作ることができる。前回の韓国の全羅道差別では「普通をまとめるための被差別集団」を観察した。これと同じことが日本でも起きているということになる。自分たちが普通だということを感じるためにはオタクが必要なのである。 […]