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稲田防衛大臣が辞めれば問題は解決するのか

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稲田朋美防衛大臣が、南スーダンで戦闘という報告を受けながらも日報をなかったことにしたらしい。国会で説明ができないので聞かなかったことにしたようだ。よく考えてみれば、現地の状態について説明し、その上で国民の支持を集めるような動機付けをすればよかったのだから、政治的リーダーとしての資格はなさそうである。と、同時にこれは稲田さんの資質や形式的な文書管理の問題に矮小化してはならないだろう。

確かに、自衛官たちは「戦闘があった」と認識しているのだが、これをそのまま国会に報告すると大混乱することは目に見えている。もともと無理を押し切って駆けつけ警護の任務を強行採決しているからだ。

だが、一方で現場の人たちも自分たちが何を書いていたのかはわかっていたはずだ。PKO派遣の原則として戦闘状態にある地域には自衛隊は派遣できないことを知っていたのだから、「助けてくれ」と言っていたことになる。これを黙殺したのだから政府上層部の罪は思いだろう。

この結果、内部ではかなり深刻な対立が起きているのではないだろうか。マスコミは内部告発を受けているのだから、コンテンツ確保のためにこの対立を黙認していることになる。防衛省は陸海空とは別に統合幕僚監部というものが置かれているそうだ。権限としては並列なのだそうだが、PKOは統合幕僚監部の支配下にあり、陸上自衛隊は彼らに「使われる」立場にある。こうした微妙な関係がリークを生んでいるのだろう。つまり、政治家に恩を売れる人たちと駒として使われる人たちができてしまう仕組みになっているのである。集団主義的な傾向の強い日本ではこうした序列化は時に深刻な対立をうむ。

こうした危機が半ば顕在化しているにもかかわらず、法的にはとても複雑なことになっている。複雑さのレイヤーは二層ある。もちろん憲法と自衛隊の関係が整理されていないというドメスティックな事情はあるのだが、実は国連側の政治も要因になっているようなのだ。

確かに現場では「誰がどう見ても戦闘だ」という状態に置かれていたのだろう。が、国連がどう認識してどう法的に意味づけていたのかがよくわからないのだ。戦闘だということを認めてしまうと、各国のPKOが撤退してしまうことが考えられる。だから、戦闘状態であるということが認められないのだろう。特に内覧勢力を国準と認めてしまうと、戦争状態に発展するのでPKOの枠組みでは平和維持活動が継続できないのだ。このため、下手に手を出してしまうと、各国の軍隊が内部の勢力(中には暴走した政府軍も含まれる)が戦闘状態に陥るというようなことも考えられる。そのため、国連は軍事的な行動すら起こせず、結果的に地元の住民が守れないという事態が起きていたようだ。このため治安が悪化しPKOやNGOにも危害が及んでいるのだ。(AFP 2017/2/16

国連は状況がわかっていながら失敗を認めようとしなかった。だから、その枠組みで活動している日本の防衛省も国連の建前に沿った発言をせざるをえない。さらに、多くの『あんな人たち』が反対しているなかで法案を変えてしまったために、国民にたいして冷静に説明するのも難しい。

だから、記録そのものをなかったことにするしかないのである。だが、なかったことにされてはたまらないと考える現場の人たちがいて、そうした人たちが内部告発するという、かなり緊迫したことが起こっている可能性が高い。

マスコミの罪は重い。まず、南スーダンの事情についてほどんど伝えなかった。南スーダンが深刻な状況にあることも、国連がうまく機能していないことも知らなかった人が多いのではないか。しかも、内部リークがあっても防衛省の中にある対立を伝えようとしない。情報をもらうためにこうしたことは「細くてどうでもいいこと」と切り捨てざるをえないのである。自分たちの商業的利益のために、人命を犠牲にしているということになる。

南スーダンの場合、実質上内戦状態にあるだけでなく、アフリカの常として国際紛争にまで発展しているものと考えられる。周辺国から武器が流入したり、周辺国に武器が持ち出されたりしている。が、このことも日本のマスコミは特に伝えてこなかった。

もちろん、背景には説明能力も、政治的なリーダーシップもない安倍首相が一番大きな原因になっているのだが、それを黙認している人たちの罪も実は大きいのではないだろうか。マスコミは「多くの人が複雑な国際情勢には関心を持たないから」と言い訳するだろうが、人々に問題提起をするという役割を全く放棄している。

自衛隊をプログラミングに例えると、それぞれに矛盾する命令が与えられていることになる。だから、デタラメなアウトプットが出るのは当たり前だ。だから、途中の経過をすべてなかったことにして、正しい計算結果を出力しているように偽装するしかなかったのだろう。つまり、アウトプットだけを避難しても問題は解決しないのではないだろうか。

こうした問題を根本的に解決することは難しいので、ここは「稲田さんが隠していた」のか「防衛省の偉い人が隠していたのか」というテクニカルな問題に矮小化する以外はない。実際にワイドショーは防衛省よりの人たちを出演させて、火消しを図っている。これが延焼すると、なんだかよくわからないがとにかく自衛隊の存在は間違っているということになりかねない。だから稲田さんが狂っているか能力がなかったことにしたいのだろう。

この件を冷静になって眺めてみると、まだわからないことは多いものの、政治的リーダーシップが中学校2年生レベルで止まっているような政権と、単に日々の話題が欲しいだけのマスコミが複合的に作り出したのではないかと思えてくる。そのことを踏まえた上で、これがどのように報道されるのかということを冷静に観察したい。

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