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蓮舫代表とフジモリ元大統領を比較する

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いわゆる二重国籍問題で蓮舫民進党代表が謝罪した。「戸籍開示を強要されるのは私で最後にしてほしい」といったそうだが、問題の本質はわかっていないんだろうなあと思った。私で最後になどなるはずはないからだ。

幸いなことにこのニュースは大した関心を集めそうにない。そもそも民進党は支持母体の民進党から見放されるくらい政界でのプレゼンスがなく、世間も蓮舫代表が台湾籍を持っていたかということにも大した関心はないからからだ。これに熱心に食いついているのは一部のネトウヨだけなのだろう。

面白いことにネトウヨの人たちは蓮舫代表が「違法状態にあった」といっている。いつの間にか脳内で法律を改正してしまったらしいのだが、日本には二重国籍者が立候補してはいけないという規定はない。

これを裏付けるのがペルーのフジモリ元大統領だ。ペルー国籍を持っているから大統領になれたのだが、同時に日本政府に届け出もしていたので日本国籍も持っていた。ペルーの法律は大統領の二重国籍を禁止しているのだが、これを隠して立候補し、最終的には自分でクーデターを起こして政権を掌握した。

フジモリ元大統領は日本では人気はあった。それは日本人の顔をしている人が一国の大統領にまで上り詰めたからである。つまり大リーグで活躍するイチローを応援するような心情があったのだろう。

だが、フジモリ元大統領が立候補したころ、ペルーでは汚職や殺人などの様々な罪で起訴されていた。その上、日本に亡命したことで「そもそも二重国籍保持者であることを隠して大統領になった」ということまで非難されることになる。日本でこうしたペルーの反発が報道されることはなかった。日本人は内向きであり、ペルーの事情などにはことさら関心がない。日本人が反応したのは「世界で活躍する日本人はカッコイイ」という点のみだったのである。

フジモリ元大統領は日本に亡命したあと突然チリに出国した。つまり日本で余生を過ごすつもりなどさらさらなく、ゆくゆくはペルーに帰りたいと思っていた。その後、日本に帰国しないままで国民新党の名簿に掲載されて立候補した。二重国籍どころか日本に住所すらなく日本に残るつもりもない人が立候補しても、形式的に戸籍さえ整っていれば取り立てて反発されなかったのである。

チリ政府がフジモリ元大統領の出国を許可する見込みはなかったので、国会議員になれたとしても職責を果たすことはできなかっただろう。結果、国民新党は一議席しかとれず、結局フジモリ元大統領が国会議員になることはなかった。その後フジモリ元大統領はペルーに送還され実刑判決を受けた。

二重国籍者がどの程度の公職につけるかということは、各国の成り立ちによりその程度が違ってくるのは当たり前だろう。が、日本の場合には法律で明確に決め事をしないで、人民裁判的に裁くことが容認されている。保守の人たちも、なんらかの行動原理があって二重国籍者を攻撃しているわけではなく、自分が軽蔑している国や地域の人たちや、敵対する政党の人を文脈に応じて叩いているにすぎない。

民進党はこうした一貫性のない空気に反応してしまったわけだが、これはとりもなおさず彼らが一貫性を持った政策を作り得ないということを証明しているにすぎない。

フジモリ元大統領がそれほど批判されなかったのは、フジモリ大統領に現地人の地が混じっていないという点もあるのだろう。移民の子孫であり日本人だから悪いことはしないだろうという、根拠のない見込みがある。一方で、外国の血が入っていると、何か悪いことをしないかということを必死で証明しなければならなくなる。民進党の議員たちも蓮舫代表を叩く前に、多様性については最初から特に尊重しておらず、単に利用しようとしたが受けなかったから、今度は血統によって人々を差別する人の支持を得たかったと堂々と宣言すればよかったのだ。

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