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国家戦略特区は満州国だった

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前川前文部科学審議官への質疑が終わった。衆議院・参議院合わせて7時間の質疑だったそうだが理路整然と対応が印象に残った。午前中の質疑を聞いてきて、国家戦略特区は満州国として利用されたのだと思った。構造として似たものがある上に、安倍首相は満州国を実質的に経営していた政治家の子孫にあたる。

実はこの質疑は自民党の方に有利だった。自民党は加計学園が戦略特区にふさわしいということさえ証明できればよかったのだ。だが、それは果たされなかった。すると、なんらかの力が働いて不自然な形で業者選定が行われたとしか思えなくなる。文部科学省や農林水産省にはそのような動機はないので、内閣府か官房の力が働いたのはほぼ確実だろう。加えて、文部科学省からは資料が出てくるが、内閣府は何一つ資料を示さなかった。国民に説明できないことがあるのだ。

加えて、加戸前愛媛県県知事が、加計学園ありきだったということをバラした上で、総理とお友達だから実現したのではないかと思うと暴露してしまった。

獣医学部を新設するかという問題は実は政治課題だ。つまり、獣医学部を新設したいなら今までの政策を捨てて、獣医の数を制限しないが、代わりに淘汰される人が出てきても仕方がないというように政策を変更すれば良い。ただし、市場に任せるということは公費の支出を抑えるということでもある。一方で現在は獣医の数をコントロールしており、なおかつ深刻な偏在が見られるわけだから、これは学校教育の問題ではなく、政府全体の問題であるはずである。

だが、この全体像が見えていない人がかなり多かったようだ。多分、自民党の関係者はそれが理解できないか、興味がなかったようだ。一方で、総理のお友達のために利権を確保してやることには興味があった。つまり、獣医学部を安倍派の満州国にしようとしたのだが、通常の話し合いでは進出できないので、関東軍にあたる人たちに無理やりこじ開けさせたことになる。

満州国は日本人が好き勝手に国家を作ることができた上に民主主義的な手続きをきにする必要はなかった。軍で住民を抑えつければ良く、政治的責任は傀儡である溥儀にとらせれば良いからだ。そうした利権作りに奔走した政治家の一人が岸信介元首相である。

岸は満州国で得た利権を元手にして東条英機を支援したことで知られる。中には阿片の利権をつかんだんのだと指摘する人もいるが、これは確証がないようだ。いずれにせよ、満州国で岸が学んだ手法は日本に持ち込まれて、戦時経済の基礎になってゆく。

満州国には表向き「日本が中国東北部の民族を解放してやるのだ」という目的があったのだが、実は日本の植民地作りが目的になっていた。当然、周囲との軋轢が生まれ、やがてアメリカや中国から反発されることになる。これが第二次世界大戦につながった。

これを政府内部でやっているのが現在の首相官邸だ。はたから見ると理解しがたいが、山本担当大臣は「国家戦略特区というのは規制を撤廃するのが目的なのだから、文部科学省が正当な理由を持ってきて対抗しない限り、国家戦略特区の理論が優先される」と言っている。だが、実際には加計学園が最初から決まっており、国家戦略特区の理論はそれに合わせて修正された。その上に農林水産省は「獣医の需給の資料は出さなくて良い」と言われており、文部科学省は論すら出すことができなかった。さらに山本担当大臣は「獣医の需給なんかどうせわかるはずがないから、これから必要になりそうだなあという定性的な傾向さえつかめれば良いのだ」と言い放ち、周囲を唖然とさせた。

よく考えると、内閣は政府を統括しているのだから正当な手続きを経て獣医供給の政策を変えることができたはずである。だが、そうした手続きの一切が面倒になってしまったのだろう。満州国が当時の国際秩序に挑戦したように、内閣内部の手続きを破壊してしまったのである。

こんな中で前川さんは、政府の説明責任というのは政府が一体として負うべきもので、内部で「誰が責任を負うのか」という議論は全く国民には関係がないと繰り返していた。多分、在任中も同じことを言っていたのではないかと思う。「在任中に言えばよかった」と自民党の議員たちは前川さんを糾弾していたが「言いましたよ」と反論したかったのではないかとすら思えた。

が、山本大臣は聞く耳を持たなかった。利権確保に一生懸命になっており頭が回っていないという見方もできるが、どうやら本当に理解できていないように思えた。逆にそういう人でないと、青年将校的な役割は果たせなかったのではないかと思う。

マスコミの関心は「首相の関与があったのか」という点だと思うのだが、これは不自然な圧力がかかった時点で確定してしまっている。だが、どうして安倍政権が関東軍的に暴走しなければならなかったのかということがわからない。一番簡単な答えは、彼らがバカであり、期待通りに官僚を動かせなかったからだというものだが、もっと切実な事情があるのかもしれない。国内の産業が縮小して支持者たちに配る利権が枯渇しているのかもしれないと思うのだ。

だが、加計学園問題の質疑から見えてきた最大の懸念は、安倍首相は他でも同じような破壊行為を行っているのではないかというものだろう。文部科学省は愚直に抵抗してしまったので公衆の面前で「恥をかかされた」わけだが、他の省庁では表面化していないものと思われる。中でももっとも歪められている可能性が高いのが、金融政策と年金だ。多分、デスマーチになっているはずで、その責任を取らされるのは自民党政権ではなく、国民だということになる。多分、日々の暮らしでやりたいこともせず、欲しいものも買わないで真面目に納税しているような人が一番の被害者になるのではないだろうか。

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