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森友事件は民進党没落の駄目押しになるのではないか

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ここのところ、ページビューが落ち込んでいる。豊洲からはじまり森友事件に至るまで「政治がけしからん」というニュースが多かったのだが、それが落ち着いたからだろう。一連のニュースについて書いていてわかったのは、人を主語にして貶めるようなヘッドラインにすると、それを目当てに多くの人が集まるといういうことだ。特にTwitterからの流入が劇的に増えるのだが、わざわざ検索してくる人も多い。つまり「何を言った」ではなく「誰が言った」ということに関心があり、肯定的な情報より否定的なニュースを求めている。
感想としては「わかった」という人も多かった。わかれば行動ができるはずなのだが、いっこうに行動には結びつく気配がない。どうやら社会に不愉快さを感じていて、その原因が役人や官僚、そして安倍首相にあることがわかったと感じているようだ。つまり、自分はまともなのに他人はバカばかりということが「わかった」ということになる。
こうしたことから、読み手が積極的な自己肯定感を持つことができず、相手を否定することだけが肯定感をえる材料になっていることがうかがえる。
こうした一連の観測から森友事件は民進党没落の駄目押しになるのではないかと思った。「え、自民党ではないのか」と思っていただければありがたい。
防衛省や森友事件でわかったのは、安倍官邸が官僚をコントロールできておらず、また官僚も本気で何かを隠蔽するような必死さを持っていないということだ。そのため嘘はすぐにバレてしまうのだが、官僚はもうそんなことはどうでもいいようだ。「国民をナメている」とも捉えられるが、あるいは無気力さの裏返しかもしれない。
千葉県知事選挙も盛り上がらなかった。30%程度が投票したようだが、それでも多いなという印象だ。東京都のように明確な失敗や悪者がいなかったせいだろう。現職の森田健作知事は加計学園や日本会議との関係が噂されており、今回の流れでは悪者になりかねなかった。が、多くに県民は気にしなかった。つまり構造ではなく人に興味があるのだ。
こうした中で革新系は大した争点が見つけられなかった。ある革新系候補が訴えていたのは「ブラック企業をなくす」などの国政に関する話題ばかりだったが13万票の得票で終わった。現職は109万票で再任されている。
これには安倍政権が作り出した空気が大きく関係している。社会に不具合が露呈すると人々は自分を変えて状況に適応するかやり方を変える必要がある。だが、物語が与えられると「自分は変わらなくてもいいんだ」という安心感が得られる。それを与えてくれたのが安倍首相だ。
それは単なる麻薬にしかすぎないので一部が騒ぎ出した。そこで安倍政権が繰り出した新しい発明は「騒いでいるのは一部の人たちであって、普通の人たちは安倍政権を支持している」という嘘だ。原子量発電が嫌いな人、沖縄で基地が嫌な人などは確かに「一部の人」だったのだが、最近では「保育園が見つけられない人」「将来に展望が持てない人」「教育勅語を信じている人」まで一部の人扱いにしてしまったため、どんどん「一部の人」が増えている。が、それぞれは小さな塊なのでまとまることは難しい。
すると共通目的は作れないけれども敵の存在だけは明確という大きな群れができあがる。彼らができることは、誰かを指差して「世の中の不調は誰か他の人のせいだ」と声高に叫ぶことである。そう言っている時だけ一体感を感じることができる。このような現象をポインティングフィンガーシンドロームと呼んでいる。つまりこれも一種の麻薬なのだ。
だが、このような状態が長く続いたために、革新勢力側は求心力を作る必要がなくなった。求心力がなくてもとりあえずはまとまっていられるからだ。
だから、ポインティングフィンガーの対象がない千葉県知事選挙ではまとまれなかった。ある革新系の人たちに話を聞くと「すみたにさんの陣営から事前に挨拶がなかった」から表立って応援しないという。それでも彼らは安倍首相を糾弾するのに夢中になっており、足元の政治に大した魅力を感じていない。加えて、いわゆる一般庶民が、自分たちの運動に全く興味を持っていないというのも知っており「どうせ何を訴えてもダメだろう」という気分に陥っているようだ。さらに、もともと人のアラが気になって仕方がない人たちなので「あれもダメ、これもダメ」となってしまうのだろう。
このようにして、大きすぎる無力感と明確な敵の存在で革新系の弱体化は着実に進行している。ということで、誰が党首になったとしても民進党が潰れるのは時間の問題ではないかと思う。
もし、革新系勢力の弱体化に力を貸したいなら、今まで通りポインティングフィンガーを続けるべきだろう。これは安倍政権の延命に役に立つ。これは革新系勢力の望んでいることではないかもしれないが、いつまでもTwitterの前で不満をつぶやいていられる。金がからない娯楽なので、まあそれも選択肢の一つかもしれない。が、社会は確実に弱体化するだろう。