先日は「自民党が選ぶのは維新ではないか」とお伝えしたが一転「合意にいたらず」との報道が入ってきた。大阪維新が横槍を入れ医療費を4兆円削減しろとねじ込んできたようだ。小泉進次郎氏は横浜市で予算案に維新と国民民主党の要望を入れるなら連立入りを打診しろと主張している。共同通信の見出しは「首相は維新、国民に連立打診を 25年度予算案で自民小泉氏」となっており、前原総理大臣を提案したことになる。
時事通信が「医療費4兆円削減、自民難色 予算修正、維新と21日再協議」という記事を出している。石破・前原ラインで進んでいた話に大阪側から異論が入ったということのようだ。大阪側から参議院選挙を念頭にもっと勝ち取れるのではという話が出たのではないか。TBSのNスタは選挙を念頭にした駆け引きと捉えている。
いくつか整理するポイントがある。
現在の医療費は過去最高の47兆円となる。維新は積み上げというよりは「一割くらいは減らしてもらわないと困る」と言っているのではないかと感じる。団塊の世代が後期高齢者になり始めたことが背景にあると日経新聞は伝えている。
政府も何も手を打っていないわけではない。健康・医療高額療養費制度の見直しを提案した。
人数が少ないため自民党の集票に影響が少ない。しかしながら患者団体から「命を諦める政策変更だ」と激しい突き上げが起きている。このため政府・自民党自らが予算案を一部修正すると申し出ざるを得なかった。それでも世論の怒りは収まらず島根県の丸山知事は「国家的殺人未遂だ」と厳しく政府の方針を批判している。
ネット系の番組では割と冷静な議論も行われている。確かに高額療養費の問題は重要だ。しかし実際には科学的には不要とされる風邪のための抗生剤や必要ではあるものの優先度が低い湿布など減らせる無駄があるという。なんとなく無駄遣いされている医療費が多いという指摘が出ている。
しかしながらこのなんとなく無駄遣いを減らすためには組織的な取り組みが必要となる。患者は間違いなく「これまで安く貰えていた湿布がもらえなくなったのは政府のせいだ」と感じるだろうから現在の厳しい医療費の現状を国民全体に理解してもらう必要がある。
ところが国民は政治はどうせ何も変えてくれないと感じるようになっており政府の訴えに耳を貸さない。「受け身」の高齢者はそもそも難しい問題は理解できなくなっている。この2つが合わさったことでマイナ健康保健証の切り替え事業は大きく混乱した。
この混乱は地方自治体や医療現場にも波及。現場を知らない官僚たちの無理のある計画とよく意味がわからず「とにかく政府に言われたから変えましたが何がどうなっているのかよくわかりません」という高齢者が小石を積むように現場を逼迫させている。ただし現場の無力感・徒労感が報道に乗ることはない。
医師の側も患者の要望を断って嫌われたくないという気持ちがある上に、処方箋を書けば日銭が稼げるという気持ちがあるようだ。診療報酬制度の問題点はなんとなく無駄遣いと合わせてネット系番組で大きく取り上げられていた。
小泉進次郎氏がなぜ「維新の総理大臣」を提案したのかはよくわからないが、この構想では前原総理大臣ということになる。
前原誠司の最も記憶に残る政治的イベントはその後に現場を大混乱させた八ッ場ダムの突然の中止だった。2011年の記事を見つけたがその後も全くフォローアップしなかったそうだ。
八ッ場ダムはそもそも、ダム本体こそ未着工だが、周辺工事は8割方終了しているプロジェクト。本気で中止にするなら、地方自治体への工事負担金の返還や、地元住民対応など、さまざまな作業が必要なはずだが、この2年間、民主党が熱心に取り組んだ形跡は見えず、ほったらかしだった。
八ッ場ダムはやっぱり再開?
民主党政権2年間の無策
前原共同代表と石破総理は「友達がいない」という共通点があり馬が合うのだろうなどという分析がある。これは双方ともに根回しがあまり上手ではない独断専行型の政治家であるということを意味している。今回の土壇場の合意延期でも「大阪側に根回しをしていなかったんだなあ」ということがよくわかる。人はそう簡単には変われないものだ。
小泉進次郎氏の発言の真意は共同通信の短い記事からは読み取れないが、仮に「前原総理」が誕生すれば政権は大混乱に陥るのではないか。
予算案じたいは締切になれば予定調和的にうまく収まるところに収まるのではないかと思う。しかし熟議の国会などといいつつ不透明な各党の交渉が続いており政治家がどんな国造りを目指しているのかというビジョンは全く見えてこない。
日々報道をまとめていても「一体何をまとめているのだろうか?」という徒労感ばかりが募ってくる。