ざっくり解説 時々深掘り

現在のファッション雑誌を見ても今の流行はわからない

常々このブログでは「ファッションがわからない」と書いている。最近、数冊のファッション雑誌を古本屋で手に入れて電子的に切り取ったりして勉強をしていた。数ヶ月かけて数冊を読むのだ。そうしているうちに「過去のファッション雑誌ってどうだったんだろうか」と思いはじめた。
過去のファッション雑誌を見つけるのは意外と難しい。古本屋は増えているのだが、チェーン店は過去1年分くらいの雑誌しか扱っていない。それ以前のものは廃棄するかそもそも買い取っていないのだろう。一方、町の古本屋は淘汰されつつある。だから、オークションで落とすか国会図書館にでも行かないかぎり、数年さかのぼることすらできない。ネットにファッション雑誌をアップすることは「いけないこと」とされているのでネットにも残らない。そのまま忘れ去られてしまうような状態になっている。
公立図書館では2013年4月までのMen’s NON-NOなどが見つかった。2013年4月号は色の特集をやっている。これは現在のファッション雑誌にはない特集だ。つまり、ここ数年で色が消えて形の方に力点が映っていることがわかる。赤いパンツなどが採用されている。つまり「逸脱が許容される」のが流行なのだが、その逸脱が移り変わっているのである。
日本のファッションカラー100 ―流行色とファッショントレンド 1945-2013によると、多色展開をインダストリアルデザインに持ち込んだのはアップルらしい。iMacで「ボンダイブルー」などと聞くと懐かしく思い出す人もいるのではないだろうか。ファッションに持ち込んだのはユニクロで「フリース」の登場が1998年ごろで、藤原紀香がユニクロのカラーチノのモデルになったのは2009年だそうだ。
多色展開が流行しなかったのかそれとも廃れてしまったのかはわからない。少ないアイテムで着まわししようとするとどうしてもベーシックカラーばかりになってしまう。結局、ユーザーが付いてこなかったのかもしれない。
今、カラーチノを履いていても別に流行遅れだとは思われないだろう。きれいに履けば「おしゃれな人だなあ」と思ってもらえるかもしれない。つまり、色は流行として古びるわけではなく「新しさ」の記号としての意味が失われているというだけなのである。
当時みんながカラーアイテムを着ていたということはない。あくまでもMen’s NON-NO界隈(東京のおしゃれコミュニティ)の人たちの流行に過ぎない。裏にはファッションコミュニティのキャンペーンがあるものと思われる。
現在Men’s NON-NOが推しているのは太パンだが、これを着ていたとしても「お洋服屋さんで働いているんですか」と言われるくらいで、特にオシャレとみなされるわけではないだろう。実際には定番のジャケット(今はMA-1と長めのコートが主流だとされているらしい)が流行している。着回ししやすいからだろう。「おしゃれ」と「流行」は全く別の概念なのだ。
「やってはいけない」逸脱もある。例えばダメージジーンズや黒づくめのロックテイストなどはやめたほうがいい。これは「田舎の不良」くらいにしか思ってもらえない。鋲がついた革ジャンなどもダメである。最近では不良でも「きれいめ」にジャケットを着るのがよいとされているからだ。逆にファッションコミュニティが太いパンツを履いているのだから、昭和とは構図が逆転している。
おしゃれ服はファッションコミュニティの制服のようなものなのかもしれない。ファッションコミュニティでは数年ごとに制服が変わってしまうのだ。
いずれにせよ、現在のファション雑誌だけを見ても今の流行はわからない。過去を眺めて初めて「今はこれがおしゃれではない」ということがわかる。しかしその記憶は残っておらず、これが現在の流行をわかりにくくしているのかもしれない。


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