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中選挙区連記制 石破政権の狙いとは

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石破総理が「中選挙区連記制」を提案している。戦後に採用されたことがあるそうだが各政党の反対で中止された経緯あるという。なぜ今になって石破政権がこんな制度を持ち出してきたのかという気持ちになる。支持率の再浮揚が望めないなかでライバルの立憲民主党を封じ込める狙いがあるのではないか。立憲民主党は予備選を提案しているが、玉木雄一郎氏が過去に連記制に言及していた。

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時事通信が「石破首相「中選挙区連記制」を意識 衆院選挙制度、各党協議へ」という記事を出している。自民党は政策立案が全く出来ないダメな政党だが権力闘争になると妙案が出てくる。

現在の小選挙区制度には日本にもアメリカのような政策ベースの選挙を浸透させるという表向きの狙いがあった。しかしこれは2つの理由でうまく行かなかった。

  • 日本の外交戦略はアメリカが決める。また経済政策は大蔵省(後に財務省)が決めている。このため各政党が独自の政策立案を行う意欲が生まれなかった。政策立案どころかシンクタンクを作って現況を分析することすらやっていない。
  • もともと自民党はイデオロギーなき利益分配集団の寄せ集めだった。選挙によって派閥が競争することはなくなったが、事前整理が党内に持ち込まれ不透明化した。自民党が「政治とカネ」の問題を泥沼化させたのは派閥闘争で身動きが取れなくなっているからだ。

このため有権者から見れば小選挙区制度は「代わり映えのしない政治家2人の中から誰かを選べ」という理不尽極まりない制度になっている。さらに負けたほうも比例復活する可能性がある。小選挙区制度はわかりやすく無意味化しており、この提案は国民に受け入れられやすい。

日本人は目的ベースの議論にはさほど興味は持たないがテクニカルな議論は大好きだ。時事通信は「局面転換」を期待する自民党の閣僚経験者の声を拾っている。

自民の閣僚経験者は「連記制実現を通じた与野党連立で局面を転換すべきだ」と期待をにじませた。

石破首相「中選挙区連記制」を意識 衆院選挙制度、各党協議へ(時事通信)

だが狙いはこれだけではないだろう。立憲民主党と維新の間に「予備選」の機運がある。「連合」という大きな組織に支えられた立憲民主党ベースの協議を潰したい。そのためには「連合」の内部分裂を誘うのが最も手っ取り早い。

案の定過去に国民民主党の玉木雄一郎氏が過去に連記制を提案していた。

日本人の手取りを増やすためには、政治が積極的に国の形を議論すべきだ。このためにどのような政党のあり方がふさわしいかを考えるのが本筋なのではないかと思う。しかし日本人はこのような生産性の高い「デザイン型」の思考はしない。

このため、なぜ現在の小選挙区制度が当初のような効果を発揮しなかったのかという検証型の議論が行われることはない。むしろ「野田佳彦氏がこういう提案をしている」から「これをどうやったら潰せるか」という不毛な方向に議論が進んでしまう。

生産性の高い建設的な議論よりも「相手をどう妨害するか」という不毛な議論に意識が向かうのが日本人というものなのだろう。

なお、連記制は戦後の混乱期に導入されたことがあるそうだが、結果的に取りやめになっている。なぜ取りやめになったのかについての考察はまた出てくるのだろう。選挙ドットコムの記事を読む限り「理想は比例」と書かれているので小政党を中心に日本も比例単独性にすべきなのだという議論も出てくるかもしれない。

いずれにせよ、さまざまな議論が出てきてまとまらなくなったほうが自民党にはトクになる。今回の提案のうらに誰がいるのかはわからないがよく考えたものだなあと感心させられる。

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