2024年度の経済成長見通しが示された。当初よりも下方修正された0.4%成長になる。ただし2025年度は1.2%成長することになっている。各政党が票を買うための原資を正当化しなければならないからだろう。
今回はこれについて書こうと考えてXを覗いたのだが「媚中派・緊縮財政派の石破政権では2025年度も経済成長は望めないだろう」という投稿が数多く見つかった。石破政権はそもそも新しい経済成長プランを提示してすらいないが、もはや合理的なレベルではなく感情的なレベルで石破政権への不満が募っているようだ。
REUTERSが「政府経済見通し24年度0.4%に下げ、輸出下振れ 25年度据え置き1.2%」という記事を出している。予算編成のために経済見通しを確定させる必要がある。しかし自動車産業の検査不正問題や中国の経済減速などで輸出が低迷したため政府経済見通しを下げたという。
来年は据え置きになっているが、様々な要因があり「本当に来年度は経済成長するのだろうか?」という疑問が湧く。
自動車産業の検査不正問題は経済産業省の行政能力の低下を示している。すでに農政が行き詰まり、厚生労働行政が行き詰まっているが、当然経済産業省の産業統治能力も衰えている。
これを如実に示すのが日産救済計画だ。噂レベルでは「鴻海が買おうとしていたので経産省が慌ててトヨタとホンダに救済策を打診したがトヨタには断られた」などという話が出ている。別の記事は「日産、みずほ、経産省が救世主として想定するパートナーの本命は、「ホンダ一択」だった」としている。
いずれにせよ経済産業省は鴻海などの外資買収を嫌がっているのは明らかだ。自分たちの言う事を聞いてくれなくなってしまう。しかしながら日本の自動車メーカーはどこも似たような構造になっており補完効果はあまり高くないと言われる。国産にこだわり沈没していった「墓場」には白物家電、PC、携帯電話、液晶ディスプレイ、半導体産業などがある。
製造業依存だったドイツは危険な状態に陥っている。フォルクスワーゲンもドイツから工場を外国に移転するのではないかと言われている。簡単な解決策が見つからないところからドイツも財政規律を緩める以外に経済苦境から脱出する方法が見つからないのが現状である。電気自動車シフトが進む中、日本だけでなく世界の自動車産業は移行期にありこれまでのように地域経済を支え続けることができるかどうかがよくわからない。ただ、ドイツも日本も自動車に代わる牽引産業が見つからずその行き詰まりが政治に影響を与えはじめている。
もちろん来年になって中国の経済が復活するとは思えないがこれに加えてトランプ関税が来年以降の課題になりそうだ。メキシコとカナダに25%の関税をかけるなどと言われている。カナダではついにトルドー政権が倒れる瀬戸際まで追い込まれているが、カナダや賃金の安いメキシコから北米に製品を輸出する日本企業にとっても対岸の火事とは言えない。
アメリカ経済は今例外的に好調を維持している。旺盛な消費意欲が背景にある。トランプ次期大統領の関税はアメリカ人に対する懲罰になることが予想されるため、製造業に依存する国や企業は今後しばらくは苦しい状況に置かれるだろう。
「アベノミクス」で足腰が弱った経済そのものにも懸念が高まる。REUTERSは「焦点:日銀、中立金利「1%に届かない」との見方も 経済・物価の加速弱く」という記事を出している。
足元にはよい兆しもある。しかし、長年の低成長に慣れてしまったことでマインドセットの転換が進まずこうした「良い兆候」を活かしきれていないのが現状だ。特に政策転換の遅れは深刻だ。デフレ脱却宣言を政治的に利用したいという岸田政権の思惑もあり「デフレかインフレかよくわからない」状態が続いている。安倍政権・岸田政権に忖度する石破政権は思い切った政策転換ができていないのが実情だ。
もちろん、経済や物価について日銀内で異なる捉え方もある。人手不足で需要の取りこぼしや設備投資の先送りといったネガティブな要因がある中でも潜在成長率を上回る成長を続けており、経済は堅調だとの見方がある。物価についても、人件費上昇分の価格転嫁がサービスだけでなく財にも広まっており、再び上昇モメンタムが強まりつつあるとの指摘もある。
焦点:日銀、中立金利「1%に届かない」との見方も 経済・物価の加速弱く(REUTERS)
各政党は有権者をつなぎとめるために実に様々な「買収工作」を行っている。そのための原資が税金である。実際に税収は極めて好調だった。
歳入では、主財源となる税収を78.4兆円と想定する。好調な企業業績などを受けて前年当初からは8.8兆円増額。税外収入は0.9兆円増の8.5兆円となる。
新規国債17年ぶり30兆円割れ、25年度予算案は過去最大115.5兆円=政府筋(REUTERS)
しかしながら社会保障費と国債費が増加しており「バラマキ」の原資が調達できない。つまるところこれが自民党(援助される側を代表する政党)と国民・維新(援助する側を代表する政党)の分断を生み出している。
歳出総額は2年ぶりに過去最大となる。前年度当初からは3.0兆円程度の増額とする。歳出のうち、社会保障費を含む一般歳出として68.2兆円計上するほか、地方交付税交付金に19.1兆円を充てる。国債費は1.2兆円増の28.2兆円とする。
新規国債17年ぶり30兆円割れ、25年度予算案は過去最大115.5兆円=政府筋(REUTERS)
政府はこれに加えて悪化する地方の財政を支援するための支出を増やしている。これも都市の人たちからの税金が使われる。ただし東京への一極集中が進む中で援助をしなければ存続できない地方自治体も出てくるだろう。
交付税は地方税収と並ぶ自治体の主要財源で、使い道が自由。19年度に7年ぶりの増額となる16兆2千億円を確保して以降、24年度まで6年連続でプラスとなっていた。地方税収は伸びているものの、高齢化で社会保障への支出が大きく増え、交付税を増やさなければ自治体の財政運営が不安定になるとの判断だ。
地方交付税19兆円、7年連続増 赤字地方債、初のゼロ(共同通信)
政府(と言っても主語は各省庁だが)が新しい経済を作れず、今ある仕組みも経年劣化を起こしつつある。しかし政府(こちらの主語は国会議員と内閣)はこうした事情には興味がなく「どこにいくらバラまくか」ばかりに熱心。都市の比較的若い有権者が政治参加しないこともあり都市住民は搾取の対象としてしかみられていないのが現状だ。
しかしながらXを見てもこうした構造的な理解をしている人はあまり多くないようだ。
岩屋外務大臣が中国の王毅外務大臣と面談し富裕層向けの10年観光ビザを約束したことなどが攻撃対象になっている。中には「中国と縁を切ってアメリカとブロック経済を組むべきだ」などの過激な意見も見られる。Quoraで何回か「この手の人」とコミュニケーションを取ったことがあるのだが「中国は日本に攻めてくるに決まっている」との前提をおいている人が多く、トランプ氏の関税について話をしても全くスルーされてしまうことが多いようだ。
確かに中国の富裕層に依存するのはどうかと思うが、かといって商売の種になる材料を「これは嫌いだからいらない」などと言っているような余裕もないのが現状だ。だがおそらく嫌中派の人たちはそれがよくわかっていない。
この文章をどうまとめようかと考えた。まずは立ち止まって経済が沈んでゆく状況を冷静に捉えたうえで「どうすれば上向くのか」を落ち着いて考えるべきだと思う。全体のパイが拡大しない限り分配も手取りアップも望めないことは明白だからだ。
しかしながら現状を見ていると誰も「まずは落ち着いて考えてみましょう」と言う人はいない。それどころかお互いの主張に耳を傾けることすらせずひたすら誰かを罵っている人が多い。ただ、それが楽しいなら特にこちらで咎め立てするつもりもない。もう、疲れて動けなくなるまで好きにやればいいんじゃないのかという気がする。
Comments
“石破政権では2025年度も経済成長は望めない……” への2件のフィードバック
「どうやったらパイを増やせるか」というを考えるのは難しいことだなと感じます。
現在、観光客が増えて外資を稼ぐチャンスではありますが、オーバーツーリズムに対応できない所もあります。富士山が良く見えるコンビニは黒幕を張り、海外旅行客に対して接客が難しい飲食店は、「Japanese Only」や酷い場合だと特定のアジア人に対する差別的な文言で拒否していますね。本当なら外資を稼ぐチャンスなのに、それを活かすことができなくて損をしています。ちゃんと対応できる飲食店だと、旅行代理店に交渉して海外旅行客に対応できるので旅行パックに入れてくれと交渉し、上手くいけばその後も継続的に旅行パックに入れてもらえるようになるようです。旅行代理店からしたら、海外旅行客に対応できる店を新しく開拓するよりも、既に対応できている店を使い続けるほうが楽なので、お互いに利益があるわけですね。
オーバーツーリズムに対して実施する対策で、単純に減らしたり拒否するだけではパイは増えないので、ディズニーランドみたいに客単価を上げることで客数は減らすように調整しても利益が上がるようにしないといけないのだろうなと思います。
パイを増やすためには何が出来るかを考える必要がありますが、そういう風に考える余裕や希望が、今の時代にはないのかもしれません。諦めてしまっているので、拒絶したりパイを奪ったり社会を破壊しようとしたりするのかもしれません。
コメントありがとうございました。
観光のような人気産業はどうしても「お客さん」に依存してしまいますよね。また全く新しい観光資源を作ることは不可能ではないにせよ極めて難しく、結果的に富士山や京都などの今まで人気だったところに負荷がかかるばかりです。
先進国は製造業から脱却すべきだという声がありますが、それでもマーケティングを仕掛けて魅力的な商品を作ればパイは増えますし、アメリカのようにオンラインのサービスで新しいマーケットそのものを新しく作るということも可能です。
つまり「受け身」から「能動」に意識を変えるべきだということ。
日本はそれをやって先進国になった国なのですが、それを忘れてしまっている人が多いということなんでしょう。