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アメリカ合衆国がシリアに居座るのは「石油利権」があるからなのか?

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シリアで新しい政権づくりに向けたプロセスがスタートした。

アメリカ合衆国はシリアにとどまりたい考えだが、新しい政権との距離を決めきれていない。なぜか上から目線で「4つの条件さえ飲めば全面的に指示する」と主張している。バイデン政権(大統領なのか政権全体なのかは別にして)の病気は最後まで治癒しなかったようだ。

問題になるのはトランプ次期大統領の出方だが今のところシリアには関心がない。ただトランプ次期大統領はシリアに石油利権があることは知っている。

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新しくシリアを統治する政権の中核のシャーム解放機構(HTS)は現在西側諸国からテロリスト指定されている。暫定首相のバシル氏は政権移乗に向けて旧政権側と交渉に入った。これまでイドリブ県という狭い地域を統治していたにすぎず全体統治ができる政権が作れるかどうかは未知数だそうだ。

アメリカ合衆国はなぜか「4つの条件さえ守れば認めてやってもいい」と上から目線。自国の民主主義が崩壊寸前にもかかわらず他国に対して上からの態度に出られる神経の太さはある意味「見習いたいものだ」と感じる。結局バイデン大統領の病気は最後まで治らなかった。現在枠組みづくりはトルコの思惑通りに進んでおりアメリカ抜きで次期政権構想が決まる可能性もある。アメリカは「自動的な権力掌握に反対」と表明している。要するに「俺達にも一枚噛ませろよ」と言っていることになる。

アメリカ合衆国はISを掃討するために現地に残りたい考え。ただしアメリカが支援するシリアの東側は油田地帯になっているため「アメリカはその利権を狙っているのではないか」と指摘する人達がいる。

実際にトランプ大統領は一期目に「アメリカがシリアにいるのは石油利権があるからである」と宣言し高官たちを慌てさせたことがあるそうだ。しかしこの収益化は実現しなかったとされる。記事はネットメディアのデイリー・ビーストのもの。反トランプで即時性を重視するため不正確な情報も交じるというのがChatGPTの評価だった。ただし読み応えがある記事も多くメディアからの引用も多いそうだ。

トランプ次期大統領は現在シリアに興味を持っておらず「中国あたりが面倒を見るのではないか(しらんけど)」という対応。仮に石油利権を意識しているのであればこのような対応にはならなかったはずである。

アメリカ合衆国には「世界警備業」を生業にしている人達がいる。多額の軍事費は利権にもなっているのだろう。ただしそれをトランプ大統領に説明するときに「実は石油で儲かるからなんですよ」と説明した可能性もある。しかしトランプ氏がそれをマネタイズしようしようとしてもうまく行かず「だったらもういいや」と考えてしまったのかもしれない。ビジネスマンらしい割り切り方ではある。

ただしバイデン政権はこの石油収益がISなどに渡ることは避けたい。また次期政権がお気に入りにならないなら次期政権にも利権は渡したくないだろう。このため900人と言われる在シリア米軍はそのまま維持される見込み。バイデン政権はトランプ政権に在シリア米軍について申し送りをするそうだがトランプ政権がどう対処するかはよくわからない。

ただし、新しい政権を支援するトルコが東シリアの石油利権をどう考えているかという別の問題がある。そもそもクルド勢力を「テロリスト」とみなしており、トルコからクルド勢力に対しては攻撃が加えられている。トルコ・アメリカというNATO加盟国がシリアを巡ってどのような取引をするのかは今は見通せない。また川口市のようにクルド人移民問題を抱える地域にも間接的な影響があるかもしれない。おそらく難民受け入れに消極的なはずの日本政府がクルド人を受け入れている背景にはアメリカの支援要請があるはずだ。

またイスラエルはシリア南部に緩衝地帯を作りたい考え。これもシリアに対する重要な主権侵害となりトルコやサウジアラビアとイスラエルを支援するアメリカの間の懸念材料になるかもしれない。

なお日本でも「アメリカ合衆国がシリアの石油を盗んでいる」と主張する人がいる。NHKでもシリア論評を行っており一定の識者として評価されているようだ。ただしXでは「NHKはまだこの人を使っているのか」などとも言われている。過去に「なぜアサド政権が必要なのか」という記事を出しているそうだ。アサド政権は化学兵器を使った非人道的な市民弾圧を行っているため人権派の識者たちからは敵視されているようである。

このようにシリア関係の話は表面上の「シリア人のシリア人によるシリア人のための政府づくり」という表向きの話題とは別にお金絡みの様々な思惑があることがわかる。これは遠い外国の話ではない。日本のシリア分析にも実に様々なポジションがあるのだ。

そもそも安定的な政府が作られるかはわからない上に天然資源や基地利権を巡る駆け引きも始まっておりシリア情勢はしばらく先行きが見通せない状況が続く。

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