突然、韓国で45年ぶりの非常戒厳令が出され慌ててしまったのだが大統領が撤回を宣言し正式な手続きまちとなっている。この時間を利用して中東情勢についてまとめたい。
ガザ地区からシリアまでの状況が泥沼化している。ロシア・イランに支援されている勢力を掃討しようとして地域に駐留してきたがその間にテロ勢力が伸長しアレッポを占拠してしまった。レバノンとイスラエルの間にかろうじて結ばれていた停戦協定も実効性に乏しく実際に衝突が起きている。さらにガザ地区の状況は統治の崩壊と言える状態になっている。
ガザ地区では依然激しい攻撃が続けられており今回も23名が亡くなったという報道がでている。また、CNNはモシェ・ヤアロン元国防大臣がガザ北部では民族浄化が行われているとネタニヤフ首相を批判したと伝える。ガザの治安は崩壊状態になっているとする報道もある。状況は悪化し続けていて表現が日増しにエスカレートしている。
レバノン南部は停戦に向けて60日のトランジションピリオドに入っているが実際には衝突が続いている。ネタニヤフ首相は停戦は戦争終結ではないと宣言しており、識者たちの「ネタニヤフ首相は本気ではないのだろう」という観測は当たりつつある。むしろ60日の間に体制を再度整えて激しい攻撃を加える可能性も残されている。
アメリカ合衆国は敵対勢力の違反は激しく攻撃するがイスラエルに対しては甘い対応を取り続けており「何にでも例外はあるものだ」との姿勢。バイデン大統領の息子の恩赦でわかるように「一般論」と「特例」を分ける恣意的な姿勢は民主党からの支援者離反を招きトランプ大統領の二期目に道を開いた。
米国務省のミラー報道官は2日、「大まかにいえば」停戦は成功していると主張。「どんな停戦にも違反はあり得る」としたうえで、米仏が設けた違反検証の仕組みに基づいて対処するとの方針を示した。
イスラエルがレバノン南部を攻撃、死者9人 停戦後で最多(CNN)
シリアの反政府勢力はヒズボラと協調行動を取っていると取られることを恐れておりイスラエルとレバノンの停戦を待ってアレッポ占拠の作戦を延期していた。結果的にバイデン大統領が停戦を急いだことでシリアの反政府勢力にゴーサインを与えた形となる。
反体制派軍司令官らも、もっと早く作戦を始めていれば、ヒズボラと戦闘中だったイスラエルの味方をしていると見なされるのを懸念していたと語った。
シリア反体制派のアレッポ制圧作戦、レバノン停戦を待って開始=幹部()
このシリアのアレッポ攻撃に刺激される形でシリア軍(ロシア・イランに支援されている)とクルド系勢力(アメリカ合衆国に支援されている)が衝突した。これとは別に現地ではアメリカが攻撃を主導しているという観測も出ているそうだがREUTERSは確認ができていないという。
関係筋は、シリアで過激派組織「イスラム国」(IS)に対して活動する米国主導の軍事連合が空爆を行ったとしている。ロイターは外国軍が空爆に関与していたことを独自に確認できていない。軍事連合からのコメントも得られていない。
シリア北東部で新たな戦線、米支援クルド勢力と政府軍が交戦(REUTERS)
アメリカ合衆国は建前としては政治・外交による問題解決を求めており軍隊やテロ組織を使った現状維持とは距離をおいていることになっている。しかしながら政治・外交による問題解決は頓挫しつつありアメリカが「テロ組織」とみなす勢力(旧ヌスラ戦線)が勢いを増しつつある。そんななか任期切れ間近になったバイデン大統領の選択肢は限られている。政権開始当時のアフガンからの撤退は現地に悲惨な混乱をもたらしたが、政権終了目前の大統領の戦略も中東に大きな混乱をもたらすかも知れない。
アメリカバイデン政権とロシアはウクライナ情勢巡り対立状態にある。しかしシリアでは旧ヌスラ戦線が共通の敵となっておりロシアと連絡を取りながらでないとISISの活動を抑える駐留シリア米軍を維持できない状態になっているという。アメリカが支援するクルド勢力とシリア政府・軍はユーフラテス川を挟んで対峙している。この対立を背景にアレッポが旧ヌスラ戦線側に落ちた。とはいえシリア軍を支援するわけにも行かない状況であり、アメリカ政府は厳しい状況に置かれているとCNNは伝えている。
仮にトランプ政権が明確な戦略を持って外交・安全保障に取り組むのならば「バイデン政権の失敗」で終わるかも知れない。しかしトランプ大統領は単にハマスが人質を開放しなければ地獄の代償を支払うことになると脅しているだけで明確な方針が見えてこない。