韓国で大統領が突然非常事態を宣言(非常戒厳)し大騒ぎになった。議会多数派を閉める野党が高官の弾劾を連発しているというのがその理由。すべての政治活動とその報道をすべて禁止するという厳しい内容に韓国世論は騒然となった。
その後、軍が国会を封鎖したが国会議員は封鎖に抵抗し国会内に押し入り全会一致で非常事態宣言の無効を決議した。これを受けて大統領も非常事態宣言を撤回する意向を示した。
日本ではこの声明を以て非常事態が解除されたと伝わっているが「まだ解除されていないのではないか」とする人がいた。非常戒厳令宣言の前に国務会が大統領主催で行われており憲法規定により首相を含む国務会が戒厳令解除を決定する必要があるとのこと。
大統領は戒厳軍を撤退させ戒厳令事態も解除の意向だが、国会に対して弾劾を注視するように求めており謝罪はしていない。一部では「内乱罪を適用すべきだ(TBS)」とか「失敗したクーデター(실패한 쿠데타)」という意見も出ており依然騒然とした状態が続いていた。
結果的に夜明けごろになって「閣議決定が出された」と報じられ(ソースは聯合)法的にも非常戒厳は解除されたようだ。
KBSは大統領室の参謀も直前まで計画を知らなかったと伝えている。実際に与野党、軍隊、放送局も一斉に反発していることから「根回しなきクーデター」ということになり文字通り大統領の暴走だったと言えそうだ。
大統領の宣言後に韓国軍が国会を封鎖したが、議員たちは封鎖を破って国会内に侵入。議会が定足数に達したため全会一致で無効決議が行われた。非常事態(非常戒厳)宣言じたいは大統領権限と見られるため散会せずに大統領が非常事態宣言(非常戒厳)を解除するのを待っている。
KBSでは軍隊の封鎖を押し切り国会が開かれて全会一致(共に民主党も国民の力も大統領に追従しなかった)で無効宣言(계엄 해제 요구안 가결=厳戒・解除・要求案・可決)を採択するまでを繰り返し報道していた。またその後議会が何もせずに待っているのは大統領側の応答を待っているからだと考えられる。
その後大統領が非常事態を解除する宣言を出した。ここで終結したと思われたのだが、宣言直前に韓悳洙首相らが集められ国務会が行われていたことがわかっており解除にも国務会の開催が必要になると指摘する人もいる。
KBSは韓国ウォンと株価に影響が出ていると伝えている。REUTERSの記事はこちら。韓国政府は「無制限の流動性を注入する」と宣言していて一種のパニックになっていることがわかる。民主化に伴って経済成長が始まった国なので当然の反応と言えるかもしれない。
KBSのライブでは早い段階から軍隊が撤退したことがわかっている。共同通信も軍は撤収しているという議長声明を伝えている。また与党の韓東勳代表も大統領には追従せず宣言は無効になったと言っている。またKBSも大統領参謀も直前まで知らされていなかったと伝えているためまさに大統領の暴走だったと言えそう。
つまり大統領が議会・与党や軍隊に必要な根回しをせずに一方的に戒厳令を出したことになるがなぜ差し迫った状況になったのかは報道されていない。
ただし、軍隊と議会の抜きしならぬ緊迫を示す資料もある。KBSライブでは時折CCTVという文字が出ていた。防犯カメラで民主党が李在明(共に民主党=野党代表)・韓東勳(国民の力=与党代表)・禹元植議長が拘禁されそうになったことを確認したと共に民主党(野党)が主張しているという内容。
またKBSはアメリカ大統領府の反応(今のところ静かに見守るとしている)を繰り返し伝えている。NHKの報道も取り上げられている。韓国がアメリカと日本の世論を気にしていたことがわかる。
大統領戒厳令解除待ちになるとKBSは45年前の映像を流し始めた。韓国は1979年から1980年にかけて激しい民衆蜂起があり光州では軍隊との激しい対立があった。韓国はこの民衆蜂起を抑えられなくなりパルパル(88年)民主化につながった。民衆弾圧を行っていた軍は国民の理解を得るために「開かれた軍隊化」を進めていた。北朝鮮と停戦状態にあり国土防衛のためには国民の協力が欠かせないためだ。
今回、軍隊が議会に対して流血を伴う抵抗を見せなかったのは、軍隊が民衆弾圧のトラウマを抱えており国民世論と対立することを避けたかったからだと思われる。軍隊が追従しなかったことは不幸中の幸いと言えるかも知れない。
尹錫悦大統領は自由と民主主義を守るために非常戒厳令を導入すると発表しているが韓国人は軍政を敷く大統領が民衆を抑圧した過去の歴史を覚えている。
KBSは尹錫悦大統領の主張と軍政時代の記憶を重ね合わせることで大統領の主張に正当性がないと暗に示している。KBSはNHKと同じ公共放送だが今回の混乱では国会・国民世論に立った報道を続けている。尹錫悦政権は電気料金に含まれていた受信料を別途徴収する方針を示しKBSは「違憲」を訴えるなど大統領との間に軋轢があったようだ。
Comments
“韓国・尹錫悦大統領が暴走 国会制圧を試みるも失敗” への2件のフィードバック
このニュースを聞いたときは正直驚きましたね。あまり韓国の政治に関するニュースを聞いているわけではありませんが、そういうことが起きる兆候があったとは思わなかったからです。
市民が議員たちの封鎖越えを協力している様子を見て、やはり市民自ら民主主義を勝ち取った歴史があるからなのか、こういうことがあった時にちゃんと動けるんだなと思いました。
今からまとめますが、どうも国防部長(国防長官)と大統領のほかに知っている人がほとんどいなかったみたいですね。軍の人たちも突然知らされてすぐに市民と対峙することになったという経緯があり(そもそも皆兵制度なのですぐに市民生活に戻るという兵士も大勢いたでしょう)深刻な衝突に発展しなかったんだと思います。