アメリが合衆国の株価がまた上昇した。こうなると「様子見」だった人たちもバスに乗り遅れてはいけないと考えるのではないか。だが徐々にトランプラリーは失速するのではないかと予測する人達も出てきている。
ただこの「トランプ・ラリー」という言葉は日米では別の使われ方をしているようだ。経済情報を見慣れていないのでやや戸惑った。
「様子見だった人たちも」とさも第三者のように書いているが「バスに乗り遅れてはいけないのではないか」というのは個人的な感想でもある。アメリカの株価が下がったときにお試しで買った株が20%以上の値上がりをしている。一時19%まで下落したがこのところガンガン値上がりしておりついに23%上昇となった。
またトランプ氏の就任に伴って株価が大暴落するということにもなっていないため「これは今のうちに乗っておいたほうが」とどうしても考えてしまうのだ。
しかしながらREUTERSの2つの記事がどうしても無視できない。「トランプラリー失速」とか「政策リスク」などと書かれている。
選挙を巡る不透明感が払拭されなおかつベッセント財務長官候補が穏健な人物だったこともあり恐怖指数が低下している。だがじわじわと「プロテクション需要」が伸びているという。遅れてきた投資家たちが群がりはじめる裏でプロたちは「いざというときの備え」を始めているのだろう。
日本の株に関してはまた別の事情があるようだ。このコラムは米株のことは書いておらず日本株について扱っており実質的には通貨動向の読み込みになる。
- アメリカの株価は絶好調だが米国債の価格も持ち直している。
- アメリカの経済成長は金利由来(2%)と潜在成長率1.8%に分解できる。つまり3.8%程度となる。これが10年もの国債のあるべき利率だろう。現在はそれよりも高い水準(4.50%)にある。
- ベッセント氏は3-3-3の経済政策を標榜している。2028年までに米国の財政赤字を国内総生産(GDP)の3%に抑制し、規制緩和を通じて3%の経済成長を促し、原油などを日量300万バレル増産するという内容。
- これが成功すればアメリカの国債水準は5%となる。ヨーロッパの国債が売られアメリカの国債が買われるかも知れない。現在の国債利率(4.50%)はこれよりも低い水準。
- 考え合わせるとドルが売られる可能性は低くしたがって日本の株は円安による「恩恵」を受けないだろう。
ベッセント財務長官候補の政策がどれくらい効果を出すかはわからないが実際には3.8%〜5%がレンジということになり、今の国債価格はそのレンジ内に収まっているということだ、
実際に現在のドル円市場は150円台まで円高に戻ってきている。
お気づきのように最初のアメリカ経済に関するパートと日本経済に関するパートでは「トランプラリー」が別の使われ方をしているように思える。経済ニュースを読み慣れていないせいもあり非常に戸惑う。
アメリカの場合「政治不信が解消されたことでアメリカの株に期待が集まっている」ものの「さすがに高値が高値を呼ぶバブルになっているのでは?」と考える人が出てきているという意味になる。またベッセント財務長官候補の登用が株価の押上材料・債権の押上材料になった一方でトランプ氏が「関税」に何を期待しているのかがわからないという不確実性もある。
合理的な経済戦略の一環である可能性もあるが国境安全保障と経済政策がごちゃごちゃになっている可能性も否定できない。トランプ氏は興味のない政策については最後のプレゼンターの言うことを信じてしまう傾向があるとされる。言い方は非常によくないが「お猿さんがダーツを投げる」ようなところがある。つまりベッセント氏が市場を抑えているにも関わらずそれを理解せずに真逆のことをやって市場を混乱させる可能性があるのだが、これは「お猿のダーツ」なので最後まで確率計算ができない。
しかし日本の場合は事情が異なっている。まずドルは諸通貨に比べて高くなっている。しかし日本の株価が置かれた状況はやや特殊で日銀とFRBの金利差が意識されている。このためドル円相場が不自然な状態になっている。日本ではこの円安による株価上昇を「トランプ・ラリー」と言っており本国とは使われ方がやや異なるのだ。
このような状況を総合すると、とにかく「通貨」の価値は下がってゆくのだから債権か株に投資をすべきだと言える一方で、ではどの通貨で株を持つのがいいのかという正解はないことになる。経験を通じて投資を行っている人たちはなんとかやって行けるのだろうが「さすがに素人には手に余る」というのが正直な感想だ。