トランプ氏の勝利が確定するとアメリカの株価は急騰した。従来の規制緩和と法人優遇が続くものと見られている。同時に30年ものの国債は金利が上がっている。トランプ政権下では財政が拡大するものと見られているためだ。これを背景に円相場は急落した。今後しばらくはトランプトレードへの熱狂が見られ中長期的にはインフレと財政拡大が加速するものと予測されている。
トランプ氏の47代大統領就任が決まりアメリカの株式市場はトランプトレードに熱狂した。直後の日本のXでも「トランプトレードきた!」など興奮状態のコメントが見られた。法人優遇・富裕層優遇・規制緩和が予想され株式市場にとっては追い風となる。特にトランプ氏にオールインしていたイーロン・マスク氏のテスラは13%高となった。
一方で米国債は急落している。財政拡大が予想され国債金利が高騰(国債は下落)したためだ。FOMCでは0.25ポイントの利下げと言われているがそれを打ち消す効果があった。ドルは他の通貨に対して一人勝ちの状態になっていて新興国通貨が安値に沈んでいる。日本円も急落した。
米株高・ドル高は少なくとも直近の日本の株式市場に良い影響を与えるものと期待されている。
ただし、中長期的に見るとアメリカ経済は厳しい状況に直面するものと考えられている。トランプ大統領の経済政策には中身がない。特に産業政策に乏しいため関税政策に頼るものと考えられている。移民に対しても厳しい態度をとるものとされており労働力も逼迫するだろう。このため中期的に見ればインフレが加速する。インフレの加速は民主党敗北の原因となっていたがおそらくトランプ政権でも同じ現象が見られるはずだ。
また、関税の多用は当然ながら日本の輸出企業にも逆風となる。石破総理やそれに続くかも知れない政権は対応に苦慮することになるだろう。
国内のインフラとそれに付随する不満をカバーするために、トランプ政権は財政出動路線を加速させる必要がある。下院の情勢はわかっていないが議会も共和党が支配する公算が高いため財政規律が乱れインフレの加速が予想される。現金の価値が下がるため株価は好調かも知れないがこれも金利の高騰がティッピングポイントを超えれば崩壊する可能性がある。
そもそも今でも株価は割高なのである。
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次に日本との関係について簡単に触れておく。トランプ氏が大統領に返り咲くことが決まると一部のテレビ局が盛んに「安倍総理がやったように石破総理もトランプ氏との関係構築に動くべきだ」と喧伝し始めた。
おそらくこの戦略は2つの意味で失敗するだろう。
確かに一期目のトランプ氏と安倍総理の仲は良かった。日米同盟の重要性を理解している共和党の側近に囲まれていたからだ。ところが大統領選を意識しだすとトランプ氏は盛んに関税と経済交渉に頼りはじめた。そこで「安倍総理はうまくやっているとほくそ笑んでいた」と態度を急変させている。ただここで政権は期限切れとなりバイデン政権に移行したためトランプ氏の負の側面を日本人が意識することはなかった。
日本とトランプ政権の間をとりなしてきた人たちはトランプ政権から逃げ出しており日本側は最初から関係を構築し直す必要がある。二期目のトランプ政権は単独主義・経済偏重主義を加速するだろう。
日本の安倍首相たちはいいやつで私の友人だが、「こんなに長い間、米国にうまくつけ込んでこられたとは信じられない」とほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ
安倍首相には、もうつけ込ませない(日経ビジネス)
次に石破総理自身のアメリカ観が見えてこない。内閣総理大臣補佐官(安全保障担当)は伝統的な共和党を含むアメリカに人脈があるとされる長島昭久氏だが、内閣官房参与の川上高司氏は「トランプ政権で日米関係が混乱すれば日本は真の独立を達成できる」と言っている。長島氏の人脈は未知数だがおそらくトランプ氏と旧来の共和党の間には人材のギャップがあるのではないかと思う。
そもそも「相手(アメリカ側)」にその気がない上に「こちら(日本側)の意欲もよくわからない状況」だ。また、石破総理がなにか約束してもそれが議会を通る可能性は高くないかもしれない。別のエントリーで触れたがまだ国会の委員長の構成が見えていない。
ただし有権者にはその様な複雑な事情は理解されないだろう。
マスコミの一部が「安倍総理はトランプ氏とうまくやっていた」と喧伝すればするほど「石破氏はなにをやっているのだ」ということになる。時事通信によれば高市早苗氏は萩生田光一氏らと会食し「今は自民党が揉めている場合ではない」と訴えたとされるが、マスコミの一部は勝手に高市氏に期待するようになるのかも知れない。
ただ仮に高市氏(かそれに代わる安倍総理の継承者)が安倍総理を模倣したとしても相手の状況が変わっているため第二次安倍政権時代の再現はほぼ不可能だろう。
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