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日本被団協がノーベル平和賞受賞 マスコミが書いたことと書かなかったこと

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日本被団協がノーベル平和賞を受賞した。日本の80年近くにわたる被爆者の歩み(被団協の歴史はそのうちの70年になる)が評価された喜ばしいニュースだ。ここではマスコミが書いたことと書かなかったことをまとめる。

日本の団体が受賞したことはどこも伝えている。またイスラエル・パレスチナやウクライナ・ロシア情勢などの影響は欧米メディアには書かれているが日本のメディアには書かれていない。また被団協の中に分裂があることを書いているところはない。「お祝いムードに水を差す」と思われているのかも知れない。意外なことに政権与党の中に核兵器禁止条約に参加すべきと主張する政党があることはきちんと書かれている。

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日本の団体がノーベル賞を受賞したことはどこのメディアも取り扱っている。政府は受賞を歓迎し反核運動に勢いを与えたい左派野党もこの機会に日本の反核運動を前進させるべきだと主張していると書かれている。

BBCなどの欧米メディアはノーベル平和賞が置かれた厳しい状況も伝えている。

パレスチナ・イスラエル問題では「何が正義なのか」に関する議論の混乱がありICJやUNRWAなどに賞を与えるなという運動があったそうだ。またおそらく今回の受賞の背景には緊迫するウクライナ情勢がある。ロシアの核兵器使用をヨーロッパの各国が恐れており、日本の反核運動を通じて今一度核兵器の脅威を強調しておきたいという気持ちがあったのだろう。

この2つの視点(特にノーベル平和賞が持つ独特の政治的主張)は日本のメディアに欠けている視点と言えるだろう。どうしても権威が先に立ちそのためには「公平・中立」でなければならないと考える人が多い。

各メディアとも社民党と共産党がこの機会に反核運動を盛り上げたいとしていることは書いている。だがこの2つの政党の系列に亀裂があることは書かれていない。日本被団協は各県の被団協から構成されている。だが広島などの一部の県に被団協が2つあることは広く知られている。

ソ連が核実験を行ったときに社会党系の人たちは「ソ連の核兵器使用は許せない」と考えた。だが共産党は党内に路線対立からの修復過程だった。とてもソ連の核兵器使用を否定できなかっただろう。この運動から距離を起き独自の団体を作っている。

2012年に朝日新聞が「最初は一つじゃった。けれど冷戦のあおりで分裂した被団協の理事長2人」で始まる記事を出している。広島の被団協が坪井被団協と金子被団協に別れているという。

県被団協は1956年に結成。63年、旧ソ連の核実験への姿勢などをめぐり社会党と共産党が対立。原水禁運動が分裂、あおりで県被団協も64年、旧社会党・総評系(坪井被団協)、共産党系(金子被団協)に分かれた。

壁の向こうに 記者が見た被爆67年:2  (2012年8月1日 朝刊)

マスコミが主に取り上げるのは社会党系の坪井被団協の方だ。坪井さんはすでに96歳でなくなっていて今回も盛んに坪井さんの功績が引用されている。

分裂した社民党系・共産党系の団体が再統合したという話は聞かないが、おそらくは共産党系が日本被団協から距離をおいている形になっているため共産党系があまり取り上げられないのではないかと思う。今回取材を受けているのは坪井さんの跡を継いだ箕牧さんという方だった。

ことしのノーベル平和賞に日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が選ばれたことを受けて箕牧智之代表委員は「本当にうそみたいだ」と涙を流して喜びました。

ほおをつねって「本当にうそみたいだ」平和賞受賞に被団協は

いずれにせよ今回は社民党も共産党とも「自分たちの運動が評価された」としている。どちらも核兵器禁止条約批准に触れている。

政府は表向きは「極めて意義深い」と表明しているが、核兵器禁止条約への加盟やオブザーバー参加には後ろ向きだ。日本人の中にも「アメリカの核の傘に入って安心したい」という人が多くいる。このため「これはこれ、それはそれ」でスルーされてしまうのではないかと感じた。

だが時事通信の記事を読むと野党だけでなく護憲政党である公明党も核兵器禁止条約に参加すべきだと指摘していると書かれている。条約を批准しろと言っているわけではなく「オブザーバー参加すべきだ」という立場のようだ。

日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞が決まったことを受け、石破茂首相は11日、ラオスの首都ビエンチャンでの内外記者会見で「平和賞授与は極めて意義深い」と語った。公明党と野党からは核兵器禁止条約への署名などを政府に求める声が上がった。

石破首相「極めて意義深い」 公明・野党は核禁条約参加要求―ノーベル平和賞

おそらく立憲民主党も内部では対立があるはずだがそれには触れられておらず「オブザーバー参加」を目指すべきとなっている。「真正保守」の自民党離れは話題になるが、野田佳彦のもとで右傾化する立憲民主党の左派がこのコメントにどう反応するかも注目ポイントなのかも知れない。

立憲民主党の野田佳彦代表もコメントで「わが国がオブザーバーとして参加しなければ核廃絶に向けての本気度が問われる」と問題提起した。

石破首相「極めて意義深い」 公明・野党は核禁条約参加要求―ノーベル平和賞

この様なめでたい話題に水を差すようなことを言うなという声もあるだろう。だが、日本の核兵器廃絶運動はアメリカとの距離についての戸惑いを内包しておりそれなりの揺れがあるというのもまた事実である。さらに、被爆者団体も「ソ連の核兵器は自衛手段なのだ」と主張する人がおりそれなりの複雑さはある。また今回の受賞をきっかけにロシアの核兵器使用を思いとどまらせたいというノルウェーの意向もあるだろう。

日本の被爆者の歩みはソ連の原子力兵器開発で分裂したわけだが、そのソ連の技術を継承したロシアの脅威が広がることで再評価され80年目の受賞(被団協ができてから70年)につながったと考えることもできる。

日本の核兵器廃絶運動はこうした複雑さを内包しつつ歴史の重みを耐えてきた。その歴史的な複雑さに触れることが運動を否定することになるとは思えない。

なお、左派に批判的な産経新聞がどのように取り上げているのだろうかと思ったのだが「中国が報道しておらずSNSでは批判的なコメントがある」と伝えている。なるほど産経新聞らしい独特の抗い方だった。

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