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杉田水脈氏は「ムラのいじめ」の道具として利用されたらしい

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当ブログでは、山口県連が杉田水脈氏を推したのは「ネトウヨ票を取り逃したくなかったからだろう」と書いた。だが、新潮が伝えるところによると真相はムラのいじめだったようだ。

ネトウヨ釣りの道具として利用され最後はイジメの道具に使われたということになる。

デイリー新潮が杉田氏推薦の内幕を書いている。安倍昭恵さんのお気に入りだった吉田真次氏を推薦したくない山口県連が名簿入りする見込みがない杉田水脈氏をわざと推したという筋になっている。

日本の古い体質の企業(特にオーナー企業)で働いている人や地方の人間関係を知っている人は「ああそんなこともあるかもしれないなあ」と思うかもしれない。だがあまりにもムラ的なので都市に住んでいる人には理解ができないのではないか。結局吉田氏は名簿に掲載されることになるからだ。

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このデイリー新潮の記事を読むと自民党はネトウヨどころか普通の有権者のことも全く眼中にないと言う事がわかる。隣の北九州市は都市的性格があるためこうした内輪の揉め事が有権者の離反につながるが、舞台となった新山口3区はまた違った性格を持った地域だ。

新山口3区は下関市、萩市、長門市、美祢市、山陽小野田市、阿武郡阿武町から形成されている。旧長門国から宇部市と山口市の一部(阿東町)を除いた地域である。明治新政府を牽引した薩長土肥の一角をなす長門藩の所領だったところなのだが今では雑駁に「山陰」に分類される。

昔の繁栄と今の状況が全く異なることで山口県の選挙区には独特の雰囲気がある。人口減少に伴って選挙区が4つから3つに減る。ところがこの選挙区には安倍晋三、河村建夫、林芳正、高村正大(高村正彦の息子)、岸信夫という5人の名家出身の政治家がいる。

林芳正氏は林義郎氏の息子だが義郎氏の時代に選挙区を安倍家に譲って参議院に転じた。だが息子の林芳正氏は参議院議員として総裁選の出馬して果たせなかった経歴があり(古賀誠氏が宏池会後継者として強引に推したと言われている)衆議院転出を狙っていた。

この選挙区には河村建夫氏がいた。河村氏は二階派の重鎮だったが岸田政権になったため影響力がなくなり林芳正氏に選挙区を奪われてしまう。代わりに河村建一氏を比例名簿に載せようとしたが息子は県連幹部のイジメに遭い「国外追放」措置になった。健一氏は東京都連所属となり後に比例北関東ブロックに飛ばされてしまう。今回の選挙では東京6区から維新候補として出馬する予定になっているそうだ。

林氏が古い政治文化を残す3区に割って入ったことで地元の議員たちが林派と河村派に分かれてしまう。県議会議長が林派だったため河村氏が負けても「縁者は許せない」ということになったようだ。

このように山口県では世襲による候補者選びが行われているが、選挙区が限られており自民党の世襲貴族層であっても息子に譲り渡すのが難しい。地方が縮小したことで戦国時代さながらの壮大なイス取りゲームが行われている。そしてそのイス取りゲームは地元有権者を置き去りにしたままで地方議員同士にウエットな感情的なしこりを残す。

では殿も姫もいない家はどうなるか。安倍晋三氏には子どもがおらず後継も決めないまま突然亡くなってしまった。本来ならば合区する林家と「所領」を取りあう必要があるがそもそも「所領」を相続させる「殿か姫」がいない。

高村家はすでに高村正彦氏から高村正大氏への代替わりが済んでいる。また岸信夫氏は体調不良により「所領」を息子の岸信千世氏に相続させた。新潮の主張をそのまま採用するともともと新3区を安倍氏に譲り渡し林氏が1区にまわり実績がない高村・岸氏が交代で議席を得るというコスタリカ方式が取り入れられる予定だった。だが「安倍家がいなくなった」ことで所領を失う危険がなくなったとされる。

結果的に、やがてなくなる4区の候補者は「別に誰でも構わない」ということになったようだ。山口県連の重鎮たちが気に入った人を誰か立てればいいということだ。だが新潮は「ここで安倍昭恵さんが介入して吉田真次氏を入れた」と書いている。こうなると吉田氏はそもそも気むずかしやが多い山口県連にとって「気に入らないムコ」のような状況になる。正確には東京からやってきたヨメが連れてきた男扱いだ。

おそらく、これが今回のポイントだ。

最初の入り方が悪かった人はその後もケチをつけられて決して気に入られることはない。嫁いびり・婿いびりがはじまってしまう。なんとかして排除しようということになる。

今回の報道では「吉田氏がいくら連絡を取ろうとしても全く連絡を受けてもらえず、申込書も贈られてこない」状態だったと書かれている。極めて陰湿な意地悪が行われている。

「実際は、吉田氏の方から何度も県連幹部に連絡を試みていたようです。幹部たちはわざと電話を取らず、申請フォーマットすら送らない嫌がらせをしていたとも聞いた」(前出・地元関係者)

「裏金議員」の杉田水脈氏が出馬断念…自民党山口県蓮が“どう考えても無理筋だった”杉田氏を公認申請した「本当の理由」

あくまでも「新潮の取材によれば」だが、県連は「どう考えても公認が認められることがない候補」を立てれば相手が最も嫌な思いをするだろうと考えたようだ。そのために「利用された」のが杉田さんだということである。もともとネトウヨ釣りの道具だったが、最後は嫌がらせの道具として利用された。杉田氏は参議院選挙での出馬を目指しているそうだが本当に県連の理解を得られるのだろうか?という気がする。

地方の状態を知らない人は「そんなことくらいで」と思うのではないだろうか。

NHKが長門市の市長選挙のドタバタぶりを書いている。長門市の市長選挙は保守同士の分裂状態が続いている。地方特有のウエットな人間関係があり「どっちの言い分が正しい」という状態になっているのだろう。長門市は下関の「奥座敷」である。山陰側に位置し人口は3万人を少し割り込む程度。

このときには吉田氏が「比例に転出し林芳正氏が3区を守る」などと書かれている。林氏が介入したことで「林氏が支援する候補は絶対に応援しない」と意地になる人もいたそうだ。結果的に林氏が推した候補は負けてしまう。

このようにドロドロとした人間関係でぐちゃぐちゃになっている山口県(特に下関や長門などの3区)だが、FLASHは林氏で丸く収まっているところ安倍昭恵さんが「吉田真次氏をゴリ押ししようとした」と書いている。すでに林氏が3区で浸透していて吉田氏に「申請書が届いていない」と書かれており新潮の記述と一致する。

そもそも有権者の顔が全く見えないなかで自民党関係者たちだけが過去の恨みつらみによる醜い争いを繰り広げている。

「それでは吉田さんは名簿に載らなかったのか?」と思ったのだが、実は追加で公認され名簿掲載されるようだ。さすがに現職を推薦しないというわけにはいかなかったのだろうし推薦しないつもりもなかったのかもしれない。わざと意地悪をして陰湿な「受動攻撃」をしかけたのだ。

すると、山口県連の人たちは「お前のことは快く思っていないんだぞ」と示すためだけに杉田氏を推薦してみせたことになる。全く意味はないが日本ではよく見られるイジメの構造である。

よく当ブログで「自民党は村政治・やっていることは自治会と変わらない」と書くことがある。これまでは世間とは隔離した中で行われてきた「密室政治」だったわけだが、こうした事情もSNSや週刊誌記事などでさらされる時代になった。

こうしたことは山口県のような地方の出来事ではないかと思われるかも知れない。だが例えば東京15区では柿沢家・木村家・山崎家の3つの家が確執を繰り返していた。都市であるか地方であるかに関係はなく日本人が持っているウエットなメンタリティを感じる。

まるで自治会のおじいさんたちの争いと書いた。だが厄介なことにこの「自治会」はお金をたくさん持っている。江東区では山崎家の配下を柿沢氏と木村氏が引き剥がすという事件が起きた。この時にお金が動いたとされており江東区長選挙の買収事件に発展している。

岸政権が政治と金の問題を解決できなかった背景にはウエットで狭い人間関係に基づいたドロドロした人間模様があるものと見られる。

これを動かすために密かな軍資金が必要になる。

岸田文雄氏のお膝元である広島県でも河井克行氏による地方議員の引き剥がしが行われている。参議院選挙買収事件に発展した。発端は安倍晋三氏を「過去の人」と糾弾した溝手顕正氏への嫌がらせだったと考えられている。こちらは闇を暴くために検察(組織的な背景はなく一検事の暴走とされた)が「司法取引もどき」の誘導捜査を行った。結果的に全容の一端は解明されたがかなり多くの地方議員が有罪判決を受けている。

つまり自民党が隠したいのは不記載のような「入り」ではなく選挙のときにそれがどう使われたのかという「出」の部分だ。過去のお金の流れを詳(つまび)らかにすれば自民党を支えてきた地方議員のネットワークが破壊されかねない。だが今の公職選挙法はかなり不完全な内容で全容を解明しようとすると検察もかなり無理をしなければならないという事情がある。

結果的に自民党は過去の人間関係のしがらみに足を取られて身動きがとれなくなっている。隣の福岡9区のように産業が発展していれば住民の離反も起きる。だが主に山陰からなる山口3区にはその様な元気な有権者はいない。おそらく日本にはそんな忘れられた地域がたくさんあることだろう。

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