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大家敏志氏が涙の撤退宣言 ちらつく麻生太郎氏の影と有権者の離反

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衆議院議員選挙の公示を数日後に控え大家敏志氏が涙の撤退宣言を行った。麻生太郎氏が中央で非主流派に転落したために選挙に出られなかったのだろうと思ったのだがそんな単純な話もでもなかったようだ。

背景にあるのは麻生太郎氏の影と有権者の離反だ。県連は自分たちの出した公認を認めてもらえず「不戦敗になる」と不満を表明している。

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福岡県北九州市は福岡市とは別の都市圏を形成している。選挙区は豊前側の10区と筑前側の9区(八幡西・東・若松・戸畑)に分かれている。

福岡県は「福岡三国志」と呼ばれるほど混乱した状況にある。

麻生太郎氏が県知事として小川洋氏を連れてきた。だが小川氏は地元の議員たちと関係を深め麻生氏から離反する。これに腹を立てた麻生氏は新しく武内和久氏を連れてきて県知事候補に擁立した。しかし右も左もわからなかった武内さんは地元と折り合うことができずに県知事選で敗北している。また、小川さんは武田良太、古賀誠、山崎拓といった大物を後ろ盾にし麻生太郎氏に対抗した。

福岡は福岡市、北九州市、筑後、筑豊と別れておりそれぞれが「異なったアイデンティティ」を持っている。このため県全体が一枚岩になりにくい。

ところがその小川さんがガンになってしまう。

麻生太郎氏と県連会長の蔵内氏(県知事選敗北の責任を取って辞任)と武田良太、古賀誠、山崎拓氏の間での争いが再燃するかに思われた。小川氏は後継として副知事を指名したがこれを前回小川氏を支援した武田良太氏が許さず官僚を連れてこようとした。NHKは県連の力が強くなりすぎるのを警戒したのだろうと分析している。だが武田良太氏の介入は地元では歓迎されず二階俊博氏の仲介で沈静化した。

ここまでの経緯はNHKが福岡三国志としてまとめている。

話はこれで終わらない。このゴタゴタが北九州市長選挙に飛び火した。

県知事選挙で敗退した武内氏は北九州市で地元議員をまとめ上げた。北九州市民の間には「自分たちは福岡とは別だ」というアイデンティティが残っているのである。武田良太氏が中心となって津森氏という候補を連れてきた。

県連は麻生氏と近く承認を渋っていたがなんとか説得できた。しかし麻生太郎氏は面白くない。「署名はしないが党が勝手にやればいい」と機嫌を損ねてしまう。恐れをなした菅義偉氏が北九州入りをキャンセルするような事態になっている。結果的に勝利したのは武内氏だった。このため今でも「麻生太郎氏が後ろ盾になっている」などと言われている。

ここで初めて大家氏の名前が登場する。

もともとは麻生派だが(だから、最初にこのニュースを聞いたときには今回の撤退宣言は麻生太郎氏の影響力が落ちた影響だろうと思った)津森氏の選対本部長に就任したそうだ。

つまり、大家氏は地元の歓心を買うために麻生氏から離反したのである。

麻生太郎氏には人望がない。今回の総裁選挙では派閥の河野太郎氏を応援するかと思われたが風を読んで高市早苗氏支持に乗り換えた。結果的に反麻生陣営が形成され石破総理・総裁誕生につながっている。当然、河野太郎氏は麻生氏の離反にかなり動揺したようである。「麻生氏が高市氏支持に転じる」というニュースに対して「選挙妨害の飛ばし記事だ」と憤っていた。

このように選挙のたびに敵を作っているがかといって反省したり諦めたりすることはない。

このように県連と長老たちが有権者から完全に遊離した内輪の論理で政争を繰り広げるなか北九州市における自民党の地位は徐々に低下しつつある。

このため9区では緒方林太郎氏が三原朝彦氏を破り当選を果たした。もともとは民主党の議員だったが立憲民主党には参加せず有志の会を結成している。

県連は緒方氏の対抗馬として大家氏を選ぶのだが、大家氏は支部長にはなれなかった。共同通信の記事に確たる理由は書かれていない。

党福岡県連は昨年、9区の公認候補予定者となる支部長を公募し、大家氏を選出。党本部は支部長とせず、今月9日には公認候補と認めなかった。

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読売新聞はこのあたりを詳しく書いている。第一に自民党本部が「ただでさえ厳しい選挙が予想されるのに参議院の議席が1つ減るのは困る」と考えていた。だが事情としては麻生太郎氏が何らかの理由で大家氏を許せなかったことがわかる。麻生太郎氏は北九州市長を支援しており、北九州市長が三原朝利氏を支援しているという関係性だ。

つまり「俺にまた楯突くなら知らないよ」と言っているのだ。

 麻生氏が指摘したのは、無所属での立候補を表明している三原朝利氏の存在だ。昨年2月の北九州市長選で自民などが推薦した候補を破った現市長を支援しており、麻生氏は「市長がついとろうが。甘く考えるな」と諭したという。

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経緯を調べると「ああなるほどな」とは思うのだがここに一般有権者の事情は全く出てこない。地方議員、国会議員、国会議員のOB(長老たち)が権力争いを繰り広げていて一般有権者は完全に蚊帳の外に置かれている。

ただ隣の山口県(特に山陰側の新3区)とは違いもある。

北九州市は工業地帯であり組合の力も強い。小倉は商都の性格も持っているが八幡・戸畑は純粋な工業地帯だ。このため民主党系の議員がある程度力を持っている。この都市的な性格のために自民党が内輪の争いを始めると自民党からの離反が起きてしまうのだ。

自民党県連は大家敏志氏の公認は許されずかといって三原朝利氏を支援するわけには行かないため「不戦敗だ、あり得ない」と息巻いている。そしてその背後には「無所属」という名前の麻生派の保守勢力がいる。

石破茂氏が総裁選で非主流派になった麻生太郎氏を最高顧問で迎えた理由がよく分かる。機嫌を損ねるととても面倒なことになってしまうのである。

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