ざっくり解説 時々深掘り

ネトウヨを刺激せず杉田水脈氏を外すにはどうしたらいいのかに苦慮する自民党

Xで投稿をシェア

カテゴリー:

比例名簿に掲載するかでもめていた三氏について一定の結論が出た。尾身朝子氏は掲載、上杉謙太郎しは優遇せず(掲載について明示なし)、杉田水脈氏は不掲載とになった。杉田氏は記載を辞退したとも伝えられる。自民党の身分制がよくわかる采配だった。

石破執行部が一定の保守層(ここではネトウヨと表現する)が離反することを恐れていることがわかるが、おそらく一定の離反はあるだろう。結果的に田崎史郎氏でさえ議席が読めないというほどの不確実な状況が生まれているようだ。

自民党の権力基盤維持のために利用されてきた人たちが今切り離されようとしている。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






今回比例名簿掲載が危ぶまれていた3氏だが、実はそれぞれ状況が異なる。

尾身朝子氏は尾身幸次さんの娘だ。もともと群馬1区が「所領」の姫である。だがここに大勲位中曽根康弘氏の孫の中曽根康隆氏が入ってくる。この2名は群馬1区の公認問題で争うなどライバル関係にあった。「家格で劣るため尾身さんが譲ったのだろう」と考えたのだが地元の議員たちや県知事を巻き込んだ論争があったようだ。

一方の上杉健太郎氏は福島3区で玄葉光一郎氏の対抗馬として戦っていた。だが福島で選挙区が1つ減り会津の菅家一郎さんが割り込んでくる。このため上杉氏が選挙区を譲り比例に転出している。なおこの2名は世襲ではない。上杉氏は比例では優遇されず菅家一郎氏も公認されない。また立憲民主党の玄葉光一郎氏は今回は2区から出馬予定だそうだ。3区は別の人が立候補する。この他に共産党の候補がいる。

このように「世襲」の家格があると優遇される。その下には学歴エリートと地方議会・首長出身者が来るという構成だ。

では杉田さんはどのあたりにいるのか。

事情がかなり異なっている。杉田さんはもともと西宮市の職員だった。著作が安倍総理の目に止まり「優遇」される形で中国地方で比例名簿に掲載される。だた優遇と言っても「所領」である小選挙区を持っている人たちの下位に留め置かれている。

彼女の役割は「ヘイト発言」と指摘されることもある過激な右派思想を振りまくことだろう。安倍総理はこのひとを保護することで「過激な右派思想にもシンパシーがある」と示すことができる。ただ安倍氏本人は右派思想にはあまり触れないので本人が穢れることはない。あくまでも世襲貴族のために汚れ役を買って出る役割が期待されている。

この便利な装置が今回は厄介者扱いされている。

後ろ盾を失った杉田氏はその後も過激な発言を繰り返す。当然その発言は左派から反発を受ける。だが「これを処分しない」ことで「左派が悔しがっているところを見るのが楽しい」というシャーデンフロイデ(妬み嫉みから出る快楽)が供給される。

すると「杉田さんを排除する」ことに別の意味が出てくる。

杉田氏は過去のヘイト発言の報いで外された」ことに左派が喜び(シャーデンフロイデ)を感じ、これまで左派を嗤っていた人たちが排除される側に回ることになる。

純粋な「正義」を保持できる人はそれほど多くない。実はその多くが他者との比較から生まれた別の喜びなのである。あえて言うならば裏切り者を排除し群れの秩序を保つために人間が遺伝的に獲得した感覚と言ってもいい。

すでに高市早苗支持の人たちは「最終的に自民党から排除された」と感じている。高市さんにはその気はないようだが「本物の正義は自分たちの方にある」と考える人たちは「高市さんは自民党から出て「本物の」保守性を作るべきだ」と息巻いている。

このため表現に非常に苦労しているようだ。

杉田さんは参議院での立候補を視野に入れ政治活動を続けると言っている。また、杉田さんの方から辞退してきたという報道も出ている。県連としては「推薦した」という実績を残しつつ「全体のことを考えて栄誉ある撤退をし別の選択肢を目指す」という形を作ろうとしているようだ。杉田氏は「内規の存在は知っていたが、それでも敢えて県連は私を公認申請してくれた」と主張する。

石破執行部は「地元での理解度をもとに判断を下した」と主張するがその主張はすでに崩れている。

福島県連は「独自に」裏金・非公認の細田健一氏を「県連推薦」で支援する。石破執行部のロジックによると地元の理解が得られないから公認が得られていないはずだが当事者の県連はそうは考えていないようだ。田崎史郎氏は追加の6人はトカゲのしっぽ・生贄だろうと推察している。

公明党も中央では「裏金議員からは距離を置く」としているものの重複立候補ができない裏金議員7名を追加推薦している。石井新代表は「地方の意思を尊重した」と言っているがおそらく地方との調整がつかなかったのだろう。

今回の公認判断を見るといろいろなことがわかる。

  • 自民党には「世襲貴族」「高学歴・地方議会首長出身」「その他」という身分制度がある。
  • 自民党も公明党も中央と地方のバランスが崩れかけている。
  • 地方の人口減は自民党の秩序を形作ってきた世襲貴族の既得権を破壊しつつある。
  • いわゆるネトウヨと呼ばれる人たちは、最下層に位置づけられており、左派いじめというシャーデンフロイデで自民党につなぎとめられている。このためネトウヨの希望の星を排除するとこれが逆効果になり自民党への憎しみに変わる危険がある。

また今回の分析ではわからないこともあった。

  • 統一教会が支援をやめてしまい、創価学会も自民党候補を応援しない地域が出てくる。これら宗教層の行方がわからない。
  • 明確に既得権を意識する人は自民党に投票しつづけるだろうが「なんとなく自民党が正解なのだ」と考えていた人たちがどのように行動するかがわからない。特に都市部ではかなりの離反が起きているようだ。
  • 高市氏を支援する人たちが「ポスト石破」に期待して自民党を支持し続けるか、あるいは離反してしまうかがわからない。

このように不確定要素が多く田崎史郎氏でさえ「議席が読めない」という程の混戦模様となってる。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

Xで投稿をシェア


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です