石破内閣が成立して8日目で国会が解散した。「解散するために指名された」総理大臣だった。
よく「政治がわからない」という人を叱り飛ばす人がいるが「誰がどう見てもよくわからないだろう」などと思う。ドタバタする1日を追ったので「わからないぶり」をじっくり鑑賞していただきたい。
午前中に臨時閣議が開かれ解散が決まった。このあと天皇陛下に事務作業をお願いするためだ。
天皇は「内閣の助言と承認」にしたがって解散詔書を書きハンコを押して国会にデリバリーする。ピザの宅配のようにはいかないためある程度の時間が必要だが、やはりその日のうちに頼んでその日のうちに届けてねというのはUBERっぽい。ハンコと署名が入るがこれを御名御璽(ぎょめい・ぎょじ)と呼んでいる。臣下が天皇の名前を呼ぶのは失礼なので「名前は言わない」伝統になっている。もっとも現行憲法では大臣は天皇の臣下ではない。
すでに数時間後に失職することがわかっている内閣総理大臣と野党党首が討論を行った。後に別の記事として書くのだがこの党首討論の形式が「国民そっちのけ」の印象を強く与える。与野党がお互いに言い合いをしてそれを国民があっけに取られてみているという印象が作られる。
これが終わった頃合いに御名御璽が入った天皇からのお手紙(詔書)が紫色の袱紗(ふくさ=ふろしきみたいなもの)に乗ってしずしずと運ばれてくる。内閣メンバーは「詔書って見たことある?」などとぺちゃくちゃしながらそれを待っている。
一方、野党は野党でプロレス的に内閣不信任案提出で盛り上がっている。どうせ国会は解散されるのだから意味はないのだが「いちおう決まりものなので出しましょう」ということになったのではないかと思う。4党で協力したことになっているが選挙協力は決まっていない。おそらく自民党・公明党が過半数を割り込んだあとに「お声がけ」が来るのを待っている政党もあるだろう。野党四党は立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党だ。詳しくは触れないがれいわ新選組が入っていない。山本太郎氏はかねてから立憲と維新の共闘を最悪の悪魔合体と言っている。今回もオール沖縄から離脱し独自候補を擁立することにしているそうだ。
議事進行係の井野俊郎さんが「ぎちょーーーー」と呼びかけ不信任決議案の採決を求める。そこに静々と袱紗に包まれた詔書が運ばれてくる。額賀衆議院議長が緊張の面持ちで(手が若干震え気味だ)詔書を読み上げると、自分も含めてすべての衆議院議員が議員資格を失う。
通常、議会が解散されるとバンザイをすることになっている。ところが今回は額賀俊郎さんのタイイング出しがあまり上手でなかったこともあり三々五々バンザイが始まった。
野党議員の中には「何条だ?」とやじを飛ばす人もいた。また内閣不信任決議が採決されなかったことから「石破総理の一方的な7条解散に反対する」という理由からバンザイをしなかった政党もあるという。
これも別立てでまとめるが足元の公認調整がまだ終わっていない。にも関わらず石破総理は逃げるように解散を選択した。
個人的には当初「有権者は現状(自公政権)を追認するのではないか」と考えていたが、内部調査の様子などを見ると都市部を中心に離反が起きているようだ。これが非公認議員追加につながっている。だが、その離反の内容がよくわからない。都市を中心に物価が上昇し生活が苦しくなっているのかも知れないし、都市部にいる「ネトウヨ系」の人たちが離反しているのかも知れない。また意外と裏金を深刻に捉えている人も多いのかも知れない。
今後しばらくは情勢なども伝えられるだろうが15日の公示の後は選挙報道が抑制され名前だけを連呼する選挙カーの声を聞きながら大した判断材料もないまま投票を強制されることになる。「国民の知る権利」など知ったことかという感じで投票日を迎えるが、国民も折込済みで政治には対して期待していない。だから政府の意欲的な目標(経済成長とか最低賃金など)はすべて「そんなの無理だろう」と国民の協力が得られない。
石破総理は会見を行い「すぐに地方創生会議を立ち上げて選挙後に議論します」と言っている。補正予算の編成も選挙後になる。とにかく今は白紙で委任状を出してくれということだ。
地方に分配するためにはそれなりの原資が必要になるはずだが増税などには触れなかったようだ。石破総理によると今回の解散は「日本創生解散」なのだそうだがその言葉を信じる人がどれくらいいるものかと思う。
確かに政治に文句を言っていても現状は変わらないのだろう。だがこの状態を一日見せられたあとで「政治に興味を持ち日本を変えるべきだ!」などと主張するつもりにはどうしてもなれない。