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経済のハードランディングを知りながら嘘をつく 石破茂新総理

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テレビで石場新総理に期待することは?というインタビューをやっていた。ある女性が「教職は賃金が低くブラックと言われている。これを総理大臣が賃金を上げてくれれば」と答えていた。石破茂新総理は安倍晋三の亡霊に苦しめられていると思った。

石破茂氏は総裁候補時代に「このままアベノミクス状態が続けば死者が出る」と予言しているが、所信表明演説を見る限り結果的にアベノミクスとキシダノミクスを否定しない道を選んだ。

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この若い女性が政治の力で賃金が上がると信じているかどうかはわからない。おそらく細かく聞けば「私には難しいことはわからない」と答えるだろう。つまり「賃金が上がらないのなら私の生活に政治は関係ない」と言っていることになる。「おまかせ政治」の蔓延がこの緩みきった認識を大量生産した。

では賃金が上がらなければ彼女はどうするか。おそらく何もしないだろう。もらっている分だけ仕事をする。それで現場が回らなくても「見て見ぬふり」をしてプライベートライフを充実させるか割の良い副業先を探すことになる。それでも給料が上がらなければ消費を減らしてそれなりの楽しみを見つけるだろう。

こうして国民の士気は低下してゆく。

TBSがアンケートを取ったところ「若者の6割は将来が暗いと思っている」という結果が出た。5年前に比べて12ポイント悪化しているそうだ。若者たちは口々に給料が上がらない、社会保障の負担が重いなどといっている。そして自見党総裁候補たちは「若者に希望を持ってもらうため」の政策を訴えていた。

政府は直接給料を上げたりGDPを上昇させることはできない。国民の士気に働きかけて経済を加熱する必要がある。そのためには石破茂新総理の初心表明にはそれなりの熱が必要だった。だが候補時代の熱はもうどこにも残っていなかった。

今回の総裁選挙は「アイディアを持っているリーダーはたくさんいるが自民党はそれが実現できない」と明確に示している。

石破茂候補(当時)はアベノミクスに否定的だった。アベノミクス否定に憤る専門家が石破氏のマクロ経済政策は「日銀財政の悪化、(政府)財政規律の麻痺、銀行の体力低下」などを引き起こしていると主張していると言っている。2024年8月7日の著書から引用した表現だそうだ。

石破茂候補は別の番組でもこの指摘を踏襲し「アベノミクスが続けば死者が出る」と言っている。あるネット番組の発言が記事として残っている。

「円安で物価がむちゃくちゃ上がった。積極財政で借金も増えた。金利を上げたら国債費がかさむので予算が組めない。どうにもならない状況になりつつある。ワイズスペンディング(賢い支出)に変えていく話を本当はしないといけない。軟着陸なんかできない。ハードランディングなんだけど、それによって飛行機がぶっ壊れたり、乗客が死傷したりしないハードランディングはなんだということです」

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しかし、総裁選挙で岸田文雄前総理のポジションを踏襲すると約束したために結果的にその前身となったアベノミクスを否定できなくなった。今回の所信表明演説は野党(国民民主党の玉木雄一郎氏)から味のないガムと酷評されている。つまり、石破茂総理は「このままではハードランディングする」と知りながらあの原稿を読んだことになる。国民の心に響かないどころか「嘘」と知りながら原稿を読んだのだ。

そもそもアベノミクスとは何だったのだろうと考えた。国民は日銀に依存していれば自分たちの負担を増やさなくても(しばらくは)なんとかなると学習してしまった。確かに未来は明るくない。将来生活が良くなるような見込みが立たないからだ。だが、それでもそれなりに毎日は過ぎてゆく。政治が賃金を上げてくれたり社会保険料を下げてくれればそれは嬉しいが仮にそれが実現しなかったとしても特に行動は起こさない。

政府もマスコミも「デフレ経済からの脱却」を謳っているが、国民はこの停滞を一種の安定と捉えている。痛みを伴う変化の可能性があるならそれは支持しない。おそらくこれがアベノミクスがもたらした最大の弊害だろう。

これを乗客としてみていた石破茂議員は「このままでは死者が出る騒ぎになるよなあ」と考えていた。そして今回めでたく運転席に座ることができた。しかし、背後からは安倍政権時代の停滞に一種の居心地の良さを感じている議員たちに羽交い締めにされている。だが、その背後にはこの停滞にある種の心地よさを感じてしまっている国民がいる。

「自分は選挙にいかないから関係ない」と思う人がいるかもしれないが、まさにその様な人たちが「変わらない」ことを選んでいる。

「もうこのままでは済まない」という石破茂氏の観測が正しいとすると我々に残された道は2つある。痛い思いをする前に軌道修正するか、痛い思いをしたあとに軌道修正するかだ。今のところ、国民の反応を見ているとどうやら国民は痛い思いをしたがっているようにしか見えない。

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