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早期解散の呪縛に苦しめられる石破総理

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石破総理が早期解散の呪縛に苦しめられている。自民党が末期症状に陥っていることがわかる。問題は末期症状の政党がこのまま消えて亡くなるか、あるいはそのままもがき続けるかである。今のところ後者の可能性が高い。国民が変化を望んでいないからだ。「国民が変化を望んでいない」と聞いて「冗談じゃない」と思う人もいるかも知れない。

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石破総理が早期解散の呪縛に苦しめられている。

まず、じっくり政策をまとめてアピールする時間がない。

キャンペーン中に岸田政権の基本的な主張を踏襲することを約束させられており場当たり的な低所得者対策や地方交付税交付金の部分的な増額などの限定的な政策が盛り込まれることになっている。所信表明演説で全体が明らかになるがおそらく「具体的な検討は選挙後」ということになるのではないか。そもそも内容を事前にリークして期待感を高めるという伝統的なマスコミ対策が使えない。

過去の清算にも失敗しつつある。

石破総理は「裏金議員の対応が不十分だったために支持が伸びないのだろう」と自己分析している。当初は一人ひとりにじっくり話を聞いたうえで再発防止策をまとめて公認する予定になっていた。だが早期解散を選択してしまったためにその時間が取れない。統一教会問題では朝日新聞が新しい写真を提示しているがとても再調査はできないだろう。石破総理は「当選した人たちの身元保証人」になってしまう。代わりに幹部たちから話を聞いて再発防止策をまとめることにするそうだが、そもそも彼らは岸田政権を短命に終わらせた人たちだ。石破総理にも協力しないだろう。刷新本部も箱だけを作って具体的な検討は「選挙後」ということになりそうだ。

田崎史郎氏は「総裁選直後であれば支持率はもっと高かっただろう」と言っている。急速に周囲の圧力に取り込まれたことで有権者は落胆したという分析だ。

大臣では石破総裁誕生につながった人たちが処遇されたが党内には不満が渦巻いていると報道されている。このため、副大臣まで手が回らなかった。欠員補充をしただけでほぼ「居抜き」になる。

しかしその一方で「選挙がないときに自民党の支持を迷っていた人たち」が結局自民党支持に戻ってしまう不可解な現象について分析する人はいない。

「立憲民主党などの野党がだらしないからだ」という人もいるかも知れないが都知事選直前に自民党離れが起きていたときと今の大きな違いはなにか。具体的に選挙を意識するか意識しないかだけだろう。どんなに迷っても結局は「おなじみの政党」を選んでしまう人が多い。

東京都知事選の蓮舫ショックからもわかるように「いざ投票になると変化に踏み込めない」という有権者が多いことがわかる。改革を希求する政治に熱心な人たちは「いやいや自分たちは変化を望んでいる」というだろうが、現実的には「変わることが怖い」という人たちが日本の政治を支配しているのである。

これまで自民党は外向きには「変化」を訴えつつも内部の政治文化はさほど大きく変わってこなかった。派閥の領袖と言われる人たちが見せ方を調整してきたためだ。表向きの談合と外向きの総裁選挙を使い分けることで支持率を延命してきたことがわかる。自民党支持者たちは薄々はこうした欺瞞(ぎまん)に気がついていたかもしれないが「変化を恐れる気持ち」が勝っている。

派閥の領袖たちが影響力を行使できたのは選挙のときには面倒を見てもらえると期待していたからだろう。安倍派は派閥が大きくなりすぎてしまいすべての派閥メンバーの面倒を見ることができなくなる。そこで「パーティーを提供してあげるからそれを使ってそれぞれが稼いでください」という手法が編み出された。結局、これが安倍派崩壊の原因となり岸田政権を破壊した。

石破新総理がこの呪縛から自由になるためには選挙前に裏金議員を整理するしかないのだが早期解散でその芽は摘まれた。しかしじっくり整理しようとすると中から崩壊しかねない。マスコミは「バランスを取るのに苦慮している」というが実際には詰んでいる。

唯一残ったのは麻生派だった。麻生太郎氏は自派閥の河野太郎氏を支援するといいつつも高市早苗氏も支援した。今回総務会長になった前鈴木財務大臣などは石破茂支持に転じている。結局、麻生氏は派閥をまとめることができなかったのである。

もう一つ気がかりがある。菅義偉氏の体調だ。マスコミは根拠なく体調悪化を伝えることはできないのだろうが、誰がどう見ても表情が乏しく歩き方もぎこちない。おそらく党内の取りまとめに菅義偉氏が尽力することはなさそうだ。

長老たちは静かに影響力を失いつつありそれに代わる人達も出てきていない。結果的に「見え方・見せ方」を調整する人が誰もいなくなりつつある。

選挙互助会としての自民党は崩壊しつつありこれを森山裕氏一人が支えている。皮肉なことにかつて自民党から飛び出した経験のある石破茂総理は誰も何もまとめてくれなくなった政党を森山氏と二人でまとめるという役割を担わされることになった。

このままでは崩壊してしまうという危機感があり早期解散が選択された。ここで自民党が大勝すれば石破総理は一定の力を得ることができるだろう。だが、仮に現状維持かやや減になると今の不安定な状態が温存されることになる。

とはいえ有権者も「政権交代のような面倒なことは望んでいない」と考えられる。そうなるとゾンビ化した政権がそのままダラダラと政府を運営し続けることになるのかもしれない。

歴史とは皮肉なものである。

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