ざっくり解説 時々深掘り

「なぜイスラエルはレバノンに侵攻したのか」「また中東戦争が始まるのか」など

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イスラエルがレバノン南部に地上侵攻した。ネットでは様々な意見が出ているが何らかのポジションを取ったうえで思い入れを乗せている人が多い。そうした投稿を見つつ「意見ではなく自分で判断したい」という人もいるのではないかと思った。

とりあえず「今どうなっているか」だけを知りたい」という人に向けて解説すると、イランがイスラエルにミサイル攻撃を加えていて、バイデン大統領とハリス副大統領がシチュエーションルームで見守っている。

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そもそも「侵攻」か「限定的・局地的な地上作戦なのか」で表記に揺れがある

まずマスコミの表記に揺れがある。TBSの須賀川記者は「侵攻ではなく地上作戦と表現する社があるのか」と立腹していた。TBSは地上侵攻と書いている。大本営発表が好きなNHKはイスラエルの「限定的な地上作戦」をそのまま報じている。間を取ったのが日経新聞だ。「レバノン侵攻「限定的作戦」」とバランスを取っている。

ネットではイスラエルをウクライナの側に置くかロシアの側に置くかによって見方が変わる人が多いようだ。イスラエルをウクライナの側に置く人はこの作戦をイスラエル防衛とみなす。一方でレバノンの国境を越えた地上軍展開をレバノンの国家主権の侵害とみなす人はイスラエルをウクライナのように捉えていると言えるだろう。

当座の狙いはリタニ川以南の占領

イスラエル軍の当座の狙いはリタニ川以南の占領にあるものと見られている。イスラエル軍はレバノン市民に対してリタニ川を超えないように呼びかけているそうだ。この地域を占領し「ヒズボラを無害化する」のがイスラエルの狙いだ。

実はこれはレバノン内戦から2000年までの原状回復でもある。イスラエル軍はレバノン南部に22年間駐留していた。

またCNNはイスラエルは中東の勢力均衡を崩そうとしていると書いている。各地に逃れた人々が周辺地域を混乱させる。そして長期的に見るとイスラエルの存続を危うくする危険な存在に育ちまたイスラエルに報復するということが繰り返されている。

人々は何を恐れているのか

人々が恐れていることは2つある。

1つは中東戦争の再開だ。REUTERSがレバノンとイスラエルの国境の変遷について書いている。イスラエルは2000年まで22年間レバノン南部に駐留していた。PLOがレバノン政治のバランスを崩しレバノン内戦が起きるとイランが介入した。イスラエルと旧フランス領地域(レバノン・シリア)を中心に断続的に続いている戦争である。

ところが今回はイスラエルがイランの体制を直接刺激している。つまり中東戦争よりも広くイランが戦争に参加する可能性がある。イランとアメリカ合衆国の関係は敵対的なため、アメリカを巻き込んだ戦争が起きる可能性は否定できない。

リタニ川以南占領で終わるか、中東戦争が再開されるか、もっとひどい戦争になるか。今後のシナリオは見えてこない。

イランがイスラエルを攻撃

そんな仲、イランのイスラエル攻撃が注目されている。イランは自身が主催する抵抗の枢軸の指導者が殺されるたびに「報復」を行ってきたが、多くは花火のようなものだった。アメリカに事前に告知したうえでイスラエルにわざと迎撃させるのだ。今回も事前告知があったもの(イランのターゲットが詳細に報道されているそうだ)と見られているが、弾道弾(バリスティックミサイル)が使われている。

大方はアイアンドームで撃退されたが一部は着弾したそうだ。イスラエル各地では空襲警報が鳴り響き人々はシェルターに避難している。アルジャジーラはパレスチナのエリコで死者が出たと伝えている。

また今回はハメネイ師が安全な場所に避難している。イランはイスラエルからの直接攻撃を危惧しているようだ。イスラエルとイランの全面戦争に陥った場合に備えている可能性もある。

ネタニヤフ首相はわざわざSNSでイランの体制を刺激し「イラン国民が解放される日は近い」と情報発信している。体制を怒らせて戦争に誘い込みたい気持ちがあるのだろう。自動的にアメリカ側からの支援が得られるためイランとアメリカを巻き込んだ全面戦争が始まることになる。

アメリカの対応は

バイデン大統領はアメリカ市民の間に根強い反イスラム感情と外交的建前のバランスを取った発言を繰り返してきた。このために用いられてきたのが「失言・放言」のたぐいだ。今回もホワイトハウスはイスラエルに「限定的な攻撃を越えてはならない」「外交的解決が重要だ」と情報発信している。だがバイデン大統領は「ナスララ師の死は正義の執行である」と言っており国防総省はイスラエルの地上侵攻を容認する発言をしている。NHKが「限定的地上作戦」というイスラエルの大本営発表をそのまま引用するのはこれがアメリカの姿勢だからなのだろう。

そもそも、ヒズボラ攻撃にはアメリカの爆弾が使用されている。

アメリカ合衆国は無線機爆発、空爆、地上侵攻まで「イスラエルから報告を受けていない」としているが、これを積極的に止めることまではしていない。

バイデン大統領とハリス副大統領は作戦司令室(シチュエーションルーム)に入り状況を見守っているそうだ。

Biden and U.S. Vice President Kamala Harris are monitoring the attack from the White House situation room and receiving regular updates, NSC spokesperson Sean Savett said in a post on X.

Biden directed US military to help Israel shoot down Iranian missiles, White House says

人々の間に広がる奇妙な「慣れ」

そもそもこの地域はかねてより断続的な中東戦争が繰り広げられてきた。しかし関係諸国の対応は限定的かつ比較的冷静ものであって第三次世界大戦のような惨事は起きていない。今回も専門家は「イランの出方次第だがイスラエルはリタニ川で止まるだろう」という見方をしているようだ。

主権国家であるレバノンの政治の崩壊もレバノン内戦を知っている人から見れば「ああまたか」という感じなのだろう。イスラエルのレバノン駐留にも過去の事例がある。

イランはこれまでもイスラエルに挑発されてきたがアメリカの参入を恐れて対応は抑制的だった。このため今回も「ああどうせまた花火だろう」と考える人は多い。

だが、過去に抑制的だったからと言って今回も抑制的に終わるという保証はない。

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