ざっくり解説 時々深掘り

産業蒸発とつながる未来

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コンデジを手放した。中古で一眼レフを買ったからという理由もあるのだが、実際の写真はスマホで撮影することが多い。スマホで撮影すると自動的にパソコンと同期されるのでいちいち線をつなぐ必要がない。また、位置情報も付与されており「いつ、どこに行った」いう記録にもなる。どうしても構図をきちんと取りたい写真意外はスマホでいいやということになってしまうのだ。
これを図式化すると、ハイエンドとローエンドの需要だけが残り、ローエンドになんらかの利便性が付与されると、ミドルレンジがなくなるということになる。また、機器同士の接続性も問題になっている。
もちろん接続性のよい一眼レフもあるのだが、機械が重いので持ち運びは難しい。写真を撮影してやろうと思うことは少ない。たまたま撮影したいときにカメラがあることが重要なのだ。
実際にコンデジの需要は激減している。なんと数年間で7割減るだろうという予想もあったそうだ。きっかけはiPhone4なのだという。
このように電子機器は数年で蒸発するように消えてしまうことがある。
ではなんでもスマホに集約化すればよいのかという話になるのだが、これも違うと思う。例えばテレビを高機能化するのは明らかに無駄だ。テレビはチューナーを備えたモニター一体型の機能限定版パソコンだ。同じように電話はマイクとスピーカーがついたパソコンだし、それにプリンターを加えたのがファックスだ。すべてはモジュールであり、それを接続していけば良いからだ。
例えば液晶モニターとチューナーを分離すれば、どちらかが壊れても全てのシステムを買い替える必要はなくなる。
テレビ周りは10年で大きく変わりそうだ。ビデオレコーダーは消滅することが予想される。TVerを使えば過去一週間の番組をいつでも見ることができる。現在ボトルネックになっているのは通信回線ではないかと考えられる。極論すればテレビさえ必要がない。パソコンやスマホがあれば民放の番組が見放題だからだ。テレビがついているのは習慣としかいいようがない。ついていないとなんとなく寂しいからである。
民放とNHKは体系が違う。例えばTVer+アマゾンで映画というのが普及したとすると、NHKが排除されることになる。NHKは全てのパソコンからも受信料を取ろうとするだろうがこれはなかなか厳しいかもしれない。有料にするなら会員制にすれば良いだけの話だ。かつてのテレビのように国内で製造された受像機すべてに課金することは難しくなるだろう。すると、パソコンがわからない高齢者はテレビに残り、壮年層は無料+課金に移行するかもしれない。
一方で守られているものもある。電話回線をパソコンやスマホで受けるシステムはまだ作られていない。このため家の中から電話機をなくすことはむずかしい。ただ、これも悪い方に転がりつつある。無料通話で有名なLINEがスマホ市場に乗り出した。これは、電話回線がLINEの通話ネットワークから排除されつつあるということを意味している。
スマホを使いこなしている人たちは当然のようにLINEを使っている。これに月々500円を加えるとLINEだけにしかつながらない電話を持つことができる。回線はDocomoのものを利用する。すると、彼らにアクセスするためにはLINEを持たなければならないということが起こるのだ。一番安いのはパソコンにLINEのアプリケーションを導入することだが、設定にはスマホが必要だ。もし、こちらが多数派になってしまうと、店もLINE電話を持たざるをえなくなるだろう。
こんなことはありえないように思えるのだが、LINE側から見ると、余計な人たちから電話が入ってこないことを意味する。それは煩わしい老齢の義理の父母だったり、営業の売り込み電話だったりするかもしれない。中でも排除されてしまいそうなのが、こうした機器が自力で設定できない高齢者である。
ここから予想されるのは、高齢者と役所が過疎化した電話回線に取り残され、壮年層がLINEに移行するという未来だ。ここから取り残されているのは、政治の仕組みと消費者の意識だ。例えば、日本の法体系では通信と放送は分かれているが、この区分は意味をなくしつつある。ただ、これを変えようとすると役所を一つ潰す必要が出てくる。
また、高齢者は家電を単機能商品として捉えている。ラジオはラジオ放送を聞くものだし、電話は話をするものだ。すべての機能が動作と結びついている。スィッチをつけるとラジオが聞こえ、受話器を取ると通話ができる。これを乗り越えるのがなかなか難しいのだ。