つい最近モニターをFull HDに買い換えた。これで最先端だろうなどと思ったわけだがそれは誤解らしい。
急速に普及したフルHD規格
長い間モニターの標準は15インチ(1024 x 768)だった。しばらくして17インチというソリューションが出てきた。しかし、地デジのパネルで使われる1360 x 768ピクセルがノートパソコンの普及で一般化た。これが去年の中盤あたりから急速に変化した。2016年までには約1/4が1920 x 1080ピクセルになっているそうだ。これはアクセス履歴からみたものなので「現役でネット接続されているモニター」と考えてよさそうだ。
このモニターが主流になったのは、テレビモニターの価格が下がったからなのだろう。1920 x 1080ピクセルはフルハイビジョンと呼ばれるテレビの主流画面なのだ。このため1920 x 1080ピクセルモニターは新品でも15,000円程度から手に入るほど価格がこなれてきたようだ。
1920 x 1080ピクセルはつい最近まで超巨大モニターとみなされていた。1360ピクセルですら巨大と考えられてきた。ところが実際には「標準型」モニターのシェアは確実に下がっている。中古市場では15インチモニターが500円程度で売られているほどの下がり方だ。
一方でインターフェイスは限界に近づいているようだ。DVIケーブルはシングルリンクの限界が1920 x 1200ピクセルなのだそうだ。ビデオカードも外部モニターは1920 x 1080までしか対応しないというものが多い。液晶パネルの価格が下がっても制御機能が追いつかないということが言えそうだ。
規模が機能やデザインを駆逐する
パソコンの画面が16:9が主流になってしまったのだがこれはなぜなのだろうか。パソコンを使う主な目的は文書制作とウェブの閲覧だと思うのだが、どちらとも関係がない。文書は紙を縦方向に置くことが多いし、ウェブも横書きにして下に伸びてゆく体裁をとっている。機能的には縦長モニターが求められるはずなのだが、実際のモニターは横型になっている。このため広いモニターを買っても右横がガラ空きということが起こりえる。
このため横置き前提のインターフェイスも増えてきた。Macのメールは横に3つのレーンが並ぶがこれは横置きを意識したものだろう。かつてはスクエア(実際には4:3だが)が前提だったので、2レーン・3分割だった。
Appleはかつて16:10というサイズのモニターを推奨していた時期がある。いわゆる黄金比でデザインとして美しかったのだろう。しかし、このサイズは普及しなかった。テレビモニターの方が生産台数が多いので16:10のようなサイズは相対的に価格が上がってしまうのかもしれない。見た目の美しさや機能性よりも、生産数で主流派が決まるのだ。
モニターが広くなると生産性は上がるのだが……
メーカーは盛んに「画面が広くなるほど生産性が上がる」としてきた。2006年のNewYorkTimesの記事がで元になっているらしい。当時はデュアルディスプレイにする必要があり、若干高価なソリューションだった。確かにメモを参照しながら文章を書いたりするためにはデュアルモニターは便利だ。1920ピクセル幅のモニターは960ピクセル幅のモニターを二つ並べたのと同じ条件になるので、かつての生産向上術が安く実現できるようになった。
傍にSkypeを置いて話し合いをしながら資料を共同で作るという使いかたをすれば会議時間を減らして生産性もあげられるし、Evernoteを開きつつブラウザでブログを書くというようなこともできる。一方で情報量が多くなると気が散りやすくなるという考察もある。当たり前の話だが、量も質もどちらも重要なのだ。