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「高市潰し」でザワつくネット保守 岸田総理の狙いはどこに?

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高市早苗氏に逆風が吹いている。岸田総理が「事前の文書送付」についての処分が軽すぎると提言した。主語がよくわからないがXでは「高市潰し」がトレンドワード入りしていた。特にネット保守からの反発が強いようだ。

このニュースを見ても岸田総理と森山裕氏の本当の狙いがわからないが、狙いが曖昧なだけにネット保守の反発は必至だ。次の政権は憲法改正で保守の気持ちを繋ぎ止めようとしてきた。だが、その戦略も見直しを余儀なくされるかもしれない。

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まず、そもそもこれが高市潰しなのかはわからない。主語が実に曖昧だ。岸田総理主導のようにも見えるが表題は「岸田総理ら」となっている。

岸田文雄首相(自民党総裁)は17日、森山裕総務会長らと党本部で会談し、総裁選候補の高市早苗経済安全保障担当相が政策を訴える文書を党員らに送付した問題について協議した。その結果、先の口頭注意に加え、さらなる対応が必要だとの認識で一致。

自民総裁選「正当性問われる」 岸田首相ら、文書郵送で追加対応検討(時事通信)

岸田総理は退陣する総理・総裁なので今回の総裁選には介入しない建前になっている。しかし、実際には森山氏と会談し逢沢一郎選挙管理委員長にさらなる対応を求めている。口頭注意以上ということなので「出馬取り消し」もあり得るということなのだろう。これでは「介入」を疑われても仕方がない。

岸田総理にありがちなタイミングの悪さである。」

当初は総裁選では「小泉・石破氏が先行している」と言われてきた。菅義偉氏の後援を背景に小泉進次郎氏が国会議員票で躍進。一方の石破茂氏は党員に根強い人気があると言われている。石破氏は防衛増税に肯定的だ。また「改革のプリンス」も「増税王子」とみなされている。その意味では総裁選はある程度管理された論争になっている。

ところがこのところ「高市早苗氏が支持を伸ばしている」という記事が増えてきた。テレビでも「決選投票は小泉・石破・高市の戦いになる」との報道が一般的だ。アベノミクス継続を訴えていて投資家からの期待が高い。

非常に興味深いことだが「増税はしない」とされている茂木敏充氏にはあまり光があたっていない。それよりも従来通りの財政拡大路線を継承し日経平均に冷水を浴びせない高市氏に人気がある。

高市氏と森山氏の間にはかねてより軋轢があると言われている。奈良県知事選挙では維新の山下真氏が当選した。このときに高市早苗は平木省氏を応援していたが、一部の県議は高市氏に従わず現職の荒井正吾氏を支援した。このときにも森山氏が介入し荒井支持に回ったと言われている。

また高市氏と岸田総理との仲も良くない。安倍総理の路線継承をアピールし積極財政派のポジションを取る高市氏は「覚悟を持って申し上げている」と防衛増税に反対姿勢を示し「閣内不一致だ」と批判されている。

この2つの事例からわかることがある。

国民が安倍総理を支持していたのは「国民に持ち出しがなく強い日本を維持できる」と感じていたからだろう。つまり高市氏はネット保守が負担を嫌がっているということがわかっている。だからこそ高市氏はアベノミクスに賛成し財政再建路線に抗い続けている。

岸田総理は財務省の移行を受けて「防衛増強」を「増税」に結びつけたい。無党派層は黙って自民党を支持してくれれば良いのであって政策には口を出してほしくないのだ。

また、高市氏が現職の荒木氏を見限って新しい人を連れてきたのは「維新の勢い」を肌で感じているからだ。森山氏は鹿児島選出である。79歳の高齢で維新の勢いもそれほど感じていない。既得権を守りたい地元の県議たちの声が切実なものに感じられたのかもしれない。

つまり、高市早苗氏は現在のネット保守や生活者たちが何を求めているのかがある程度わかっている。そして、それが現在のマネジメント層には「反逆」に見えてしまうのだ。ネット保守や生活者は単に自民党政権を支えるために選挙で利用されるだけの存在であり政策に影響を与えてはいけない。

自民党総裁選はもともと

  • 未来志向を掲げて政治とカネの問題と統一教会の問題から目をそらしたうえで
  • とりあえず選挙をしのぐ

ためにデザインされている。対立は管理されており、各候補は見えない一線を踏み越えてはいけないのだ。つまり「見えない一線を読み合う」ゲームが行われている。そして高市さんはそれを踏み越えてしまった可能性が高い。それが財政拡大路線の継続提案である。

仮に岸田総理と森山裕氏がルールを重んじる人であれば政治とカネの問題がここまでこじれることはなかったはずだ。つまり「文書を配った問題」など所詮言いがかりではないだろうか。

自民党の人たちは「ネット保守」には気持ちよく寝ていて欲しい。そのために利用されたのが憲法改正である。自衛隊を憲法に書き加えたところで現在の矛盾が解決することはない。だが「リベラルが悔しがるだろう」問題を取り上げることでネット保守を安上がりに満足させる事ができるはずだった。なにせ憲法改正にはお金がかからない。

しかしながら、最悪のタイミングで「安倍総理と統一教会の組織的な関係」を示す動かぬ証拠が出てきた。さらに、岸田氏・森山氏はネット保守がある程度のプレゼンスを示すのは構わないが「総理・総裁になるのはふさわしくない」と考えていることもわかってきた。

財政再建派の人たちは憲法改正というお金のかからない問題で保守を引き付けつつ財務省の路線に従った増税を通そうとしている。仮に朝日新聞が火をつけようとしている統一教会キャンペーンが盛り上がったうえで、高市氏が総裁選から切り離されてしまうと現在の執行部がどんなに「保守アピール」をしようが、無党派層のうちのやや右側の人たちは自民党を信じなくなるだろう。

岸田総理と森山裕氏は選挙を「枠内」で管理したいのだろう。だが岸田総理はいつも絶妙なところでタイミングを間違えると言う稀有な才能がある。争点を潰すなら菅元総理が野田聖子氏に対してやったように「事前に潰したうえで取り込んでおく」べきだった。

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