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小泉進次郎氏の危ない解雇規制緩和議論とその背景

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自民党の総裁候補による討論会を見た。「小泉進次郎氏の解雇規制議論は危ない」と書いたのだが「さすがに本人の主張も聞いてみないとまずい」と思ったからだ。議論を見て「思っていたより危ない議論なんだなあ」と感じた。理由はいくつかあるが、最終的には国民生活に関する重要な問題が国民とは関係がないところで話し合われていると言う問題に行き着く。

実務を知った人が政治に参加しない限りこの問題は解決しないだろう。

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労働者の声も転職実務も反映されていない

まず最初に「企業の声だけを聞いているのだろうなあ」と感じた。企業は現在の整理解雇が重荷になっていると考えているようだ。そこで自民党に陳情を重ねているのだろう。

小泉氏の改革提案は要するに「整理解雇要件を緩和し」「リスキリングを条件に」「解雇を認める」というものである。これを「緩和でなく見直し」と言っているが「解雇規制強化」ではないのだから「見直し=緩和」である。

現状も無視している

企業は「人あまり」と「人手不足」同時いを感じている。これは日本の職業教育環境が行き詰まっていることを意味している。人あまりはおそらく事務職・中間管理職的な人が企業内に滞留していることから生じている。一方で高度人材と低賃金労働者は足りない。ただ、「リスキリング」でこれ等の問題を解決することは出来ないだろう。総合的な対策が必要だが専門家ではなく専門知識持った政治家が議論を手動する必要がある。

白紙委任を求める内容

小泉氏の提案は単なる思いつきに過ぎない。にも関わらず有権者に白紙委任を求める内容になっている。そして、小泉進次郎氏はおそらく自分が何を言っているのか全く理解していない。橋本五郎氏が早期解散について質問をしていたが何を聞かれているのかよくわかっていないようだった。これを理解した石破茂氏は「自分ならそんな言い方をしない」と答えている。


このように一つひとつの要素があまりにも根深く「今のような雑な議論では問題は解決しないだろう」と感じる。

現在の企業経営者は「生産性の向上に寄与しないムダな事務職が多い」と感じているだろう。一方で低賃金労働者と高度人材が足りない。だが、この問題はリスキリングでは解消しない。

経営者

まず、日本にはプロの経営者が少ない。このためどんな人材が自分たちの企業に必要なのかを見極めることが出来ない。また今いる労働者を動機づけるのも苦手だ。ただ現状を見て文句ばかり言っている。

アメリカでマネージャーになりたい人はエントリーレベルの仕事でお金をためてMBAに自費で通う。自費で通うのだから真剣に費用対効果について悩む。実際に有名MBAの費用は高騰している。このためアメリカのMBAの参加者はとてもよく勉強するし期待に沿わない内容の講師は厳しく批判される。

さらに日本の製造業は「マニュアルにならない=非形式的な」知識に依存していて講習でそれを教えることは出来ない。日本の非形式的な知識は企業の海外移転と高齢化による退職(その後の人材が続かないから知識が受け継がれない)で蒸発しつつある。

現在提案されているリスキリングは「首切りのための手続き」なのでおそらく儀式的な教育に終わるだろう。実施する企業も受講する受講者も本機にならないだろう。所詮他人のカネだからだ。

高度専門人材

例えば企業のサイバーセキュリティ担当者が足りないという声に応えて「サーバーセキュリティ技能士養成講座」のようなものを作ったとしよう。ハッキングは日々進化しており講座で1年位かけて人材を要請しても現場では使い物にならないはずだ。おそらく「ハローワーク斡旋のサーバー講座を受けました」と履歴書に書いても企業はそれを本気にしない。

さらに高度専門人材は常用雇用ではなく下請け的なフリーランスとして不安定な地位に留め置かれることが多い。サーバー管理者やプログラマが高賃金を得られるなら自費でも教育を受けようという人が出てくるだろうが日本はそうなっていない。だからわざわざ国がお金を出さなければならなくなってしまうのである。

低賃金労働者

また、低賃金労働者にはそもそもリスキリング講習など必要ない。

このように、マネジメント・高度技能・低賃金労働のどれも現在提案されているリスキリングでは問題が解決できない。

要請された政治家もまともな職業経験がない。就職したとしても腰掛けでしかない。そもそも小泉進次郎氏は職業経験がない。アメリカで大学院を卒業しているが英語の成績が足りず語学研修から行っている。その後私設秘書となり、そのまま後継指名されて父親の地盤を継いでいる。


そもそも小泉進次郎氏と記者たちの間に会話が成立していない

もちろん小泉進次郎氏がすべての政策をまるで理解していないとは言わない。ライドシェア問題については危険なドライバーの存在を指摘する高市早苗氏に「相互評価制度があるから大丈夫だ」と反論していた。それだけに解雇規制をめぐる議論の雑さが際立つのである。

さらに小泉進次郎氏個人の問題も露呈しつつある。

橋本五郎氏が「内容が何もわからないのに早期解散なんかされても国民は判断できませんよ」と詰め寄っていた。石破茂氏はこの質問の意味がわかっており「もちろんきちんと新内閣の方針を説明してから解散します」と説明していた。厳密には「すぐ解散しますという言い方はしない」と発言している。早期解散をしないとは言っていない。説明をしないで早期解散すると、あとから「そんな話は聞いていない」という声が出てくるとわかっているのだ。

だがおそらく小泉進次郎氏はそれが理解できていないのだろう。すぐに解散すると言ってもそんなことができるわけないじゃないですか!と言う意味の反論をしていた。

菅義偉戦略では「小泉進次郎氏はイメージ戦略」を担っている。菅氏の最大の誤算は総裁選が伸びたことだろう。独自の発言が目立ち「チームでカバーする」という戦略が破綻しつつある。

これがよく現れているのが外交だ。小泉進次郎氏はトップ外交にこだわりと意欲を見せている。記者に「あなたは中国に行ったことがあるのか?」と聞かれて「台湾ならある」と答えていた。さらに「チームには中国に詳しい人をいれる」共発現した。トップ外交にこだわるというが中国との対話ではその主張は破綻している。


では、そもそも本来の問題はどこにあるのだろうか。

日本では副業ブームが起きている。本業の正社員の地位を守りつつ副業で収入を確保する方針だ。これでは、当然本業が疎かになり、労働時間が細切れになる分だけ生産性と士気が低下する。日本の労働者は「本気」の出し惜しみを始めた。

ここで「正社員の地位が問題なのだ」と言いたくなる。

しかし、実際に問題なのは「本業としてじっくり取り組むことができるほどの新しい産業や職業分野が日本に生まれない」という点にあるのだろう。

例えばサイバーセキュリティの専門家のような専門性のある教育をじっくり受けたい人もいるだろうが正社員の地位を手放してしまうとその先はフリーランスとして不安定な地位に置かれてしまう。

成長分野はあるが「副業として取り組む程度の価値しかない」ということになる。おそらく正社員を非正規社員化したとしても全員が貧しくなるだけで、状況は悪化するばかりだろう。

これらの問題を「選挙のために機能から考え始めました」という人が解決することはできない。実業を知った人が政治に入ってくる必要がある。

だが世襲の多い自民党はプロの政治参入には消極的だ。この姿勢は野党にも見られる。特に国民民主党と維新がひどい。

国民民主党の公認候補だった人が亡くなった問題があった。苦労した女性という「属性」が利用されたが法的な問題が浮上し国民民主党に見捨てられた。ところが「政治家になった人には石をぶつけても良い」という文化が生まれており自称保守の人たちから激しいバッシングを受けた。このようにまともな人が政治家を志すことはリスクでしかない。

一方で他人を支配したい人や自分は支配できて当然だと思っているような人たちも政治家を目指すようになった。斎藤元彦兵庫県知事のケースを見るとそれがどんなに無惨な結果をもたらすかがよくわかる。維新はこの知事を応援し続けていたが持て余した結果見捨てつつある。とはいえ知事は議員たちの説得に応じておらず議会解散を選択する可能性がある。兵庫県にとって知事はもはや災いでしかない。

今回の問題は直接的には総選挙を目当てにした付け焼き刃的な議論がもたらした問題だが、考えを巡らすとやはり「政治家と言う職業が世間一般の常識と乖離している」という政治家独占問題に行き着いてしまう。

これを変えて一般の人が政治参加できるような状況を作らない限り問題はますます悪化し続けるだろう。おそらく本物の政治改革ではこのあたりのことが議論されるべきだ。選挙制度の問題ではなく政党のあり方が問われているのである。

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