斎藤元彦知事を巡る状況に新展開があった。これまではパワハラ問題だったが、イベント寄付の見返りに信金への補助金を増額した問題で信金側から新証言が出た。
キーマンは元側近グループを組織していた片山元副知事だ。
片山氏は自分が被害者であるような風情で涙の会見を行い退場した。また斎藤知事も「自分がふがいない」と涙を見せている。実に安易な涙だが、そろそろ自分たちの立場を本気で心配したほうが良いのではないかと思う。
斎藤知事は「自分に負けた」と泣いている場合ではなく法律家に具体的なアドバイスを求めるべきだろう。
アエラドットが信用金庫側から証言を取っている。優勝パレードの寄付の見返りに補助金の約束があったと言う認識を示している。実際に補助金は増額されているが県庁側は関与を否定する。
「うちの最高幹部は『(当時の副知事)片山氏がどうしても寄付をと頼んでいる』と言っていました。片山氏は副知事になる前は、兵庫県信用保証協会理事長だった。つまり公的融資の保証人で、金融機関からすれば頭があがらない。『片山氏が斎藤知事のメンツを立ててと言っている』ともうちの最高幹部から話がありました。片山氏に加え斎藤知事からもとなれば、小さな金融機関にとっては天の声、神の声。他の金融機関にもこっそり聞くと、同じように補助金と寄付、セットになっている、寄付するつもりだとの話だった。そこで、歩調を合わせるべきと結局、300万円を寄付しました」
【独自】兵庫・斎藤知事らの補助金キックバック疑惑で金融機関幹部が重要証言「補助金と寄付はセットだった」
「寄付金と補助金の問題」はすでに各方面で語られていた。では、なぜ今更こんな証言が出たのだろう。
片山氏がもともと「公的融資の保証人」であり信金側はお願いする立場だった。斎藤氏が復権するようなことがあれば片山氏が影響力を増す可能性はある。だがすでに不信任案提出秒読みと言う段階になっている。
信金側が恐れているのは片山氏や斎藤氏ではなく片山氏と斎藤氏の権限だ。これがなくなることがわかっているのだから今更遠慮をする必要はないということなのだろう。
ここから考えると今後もこの手の証言が続々と出てくる可能性は低くないが、斎藤氏も片山氏もそれを防げない。
斎藤知事の後援会にも片山氏が関わっている。すでに片山氏が退出し空中分解していたようだが「逃げ遅れては大変」と考えるアシックスOBの尾山氏はあらためてマスコミに退場をアピールした。ここから片山氏が地元経済界に強い影響力を持っていたことがわかる。
同会は2021年の前回知事選を前に片山氏や経済人らでつくられた。昨年7月には政治資金パーティーを神戸市内で開催。パーティー券は1枚2万円で約800人が参加した。
斎藤知事の後援会、トップのアシックス尾山氏辞任 「言動にがっかり」経済界との断絶決定的(神戸新聞)
兵庫県庁内には牛タンクラブと呼ばれる斎藤知事とのつながりが深い幹部たちの非公式の集まりがあった。この牛タンクラブが斎藤知事を取り囲んでおり県政運営に影響を与えた可能性がある。斎藤知事は短期間に「王様化」していったようだが県庁内で何があったのかは全くわかっていない。
結果的には典型的な垂簾政治になっている。王様はすだれの向こうにいて限られた幹部たちとしか話をしない。幹部たちが王様の意向をかさに自分たちの私利私益を追求してもすだれの中にいる王様は意外と気が付かないものだ。
しかしながらすでにすだれは破られ王様は外に引きずり出されてきている。こうなると周りの人たちは王様にも側近にも気を使う必要がなくなる。つまり、ここからさらに様々な問題が露呈する可能性があるということだ。
片山氏の涙は「自分たちはあくまでも知事を支える側であった」と印象付けるための涙だった。だが、むしろ斎藤知事の名前を使ってさまざまな活動を推進していた可能性がある。ただ仮に名前が使われただけだとしても「はんこを押した」斎藤知事の責任が消えてなくなるわけではない。
その意味では斎藤さんは「自分に負けたなどと」泣いている場合ではなく具体的な心配を始めたほうが良いということになるだろう。
被害は維新の側にも及んでいる。当初兵庫・維新はこの問題を「自民党・維新の党派争い」と位置づけていた。維新の国会議員が亡くなった職員の告発を「怪文書」と決めつけたと話題になっている。
関係者などによりますと、掘井議員は今月、駅前で活動中に、民間人から斎藤知事に関する質問を受けた際、亡くなった元幹部職員の内部告発文書について”ビラ”や”怪文書”と表現し「自民党と作った怪文書。地元紙に渡したと思うが、くしゃくしゃにして捨てられた。」などと不確かな情報を伝えたということです。
維新の国会議員を厳重注意 兵庫県元職員の告発文書を”自民党と作った怪文書”などと噂ベースの話を民間人に伝える 堀井健智議員は「言い間違え」と釈明
不信任案を突きつけられた斎藤知事は県議会解散を選ぶ可能性があるが当初維新の議員たちが斎藤知事をかばっていたことは有権者の判断材料になるだろう。仮に斎藤氏が議会を解散しなかったとしても維新が擁立した知事が県民に信任される可能性は極めて低い。維新議員団は斎藤氏就任直後から斎藤氏と行動をともにして斎藤氏が県庁内の党派争いに巻き込まれないように監視すべきだった。
いずれにせよ維新は問題を作り出したばかりか問題から逃げ遅れている。政治カンのなさが仇となった。今回の事案は国政政党としての維新にも大きな傷を付けつつある。