経験則では9月の株式市場は不調ということになっているようだ。連休明けの初日のダウは626ドル値を下げエヌビディアは「時価総額は2790億ドル減の2兆6500億ドルとなった」とロイター通信が伝えている。日本の株式も下落し終値1638円安だったそうだ。アメリカの経済不安でむしろ日本のほうが株価が下がっている。
株価の下落についてはAIが期待したほど伸びなかったとか、中国の影響だとか様々な要因が囁かれている。だが「消費は好調だが実はアメリカの経済は下り坂なのではないか」と言う懸念が払拭できていない。FRBは利下げを行うものと思われているが「利下げは確定したもののその理由については意見が割れている」状態だと言われている。つまり「インフレが再加速する可能性は否定できないが、それでも利下げをしなければいずれ景気後退が来る」という切実な懸念がある。
景気後退懸念が払拭できない中「唯一の成長点」であるAIに期待が集まっていた。だがその期待はバブルとはいわないまでも明らかに煽られすぎている。エヌビディアでは独禁法違反の捜査が開始されておりこれも下げの要因になっているものと見られる。
だがやはり見逃せないのは日本の株の下落だろう。9月1日は日曜日、9月2日はレイバーデイの休日だった。3日の火曜日に市場が開き利益確定売りの人たちが一斉に株を売る。するとその余波が日本に到達し津波を起こす。そんな状態になっている。
このように不安定な状況にもかかわらず、Xのトレンドワードに「エヌビディア」が出てくるほど一般にエヌビディアの名前が浸透している。もともと自作PCをつくる人やPCゲームを楽しむ人が知っているだけの「グラフィックカード」の会社だった。暗号資産発掘のために注目されたが、おそらく多くの人は「買っておけば儲かる株式」として認知しているのではないかと思う。
それだけ日本でも株式投資が一般化しているということになる。自分は手を出さないにしても名前くらいは知っているという状態だ。コストプッシュ型のインフレが始まっておりその対策として株式投資が広まっているのかもしれないが、中途半端な知識で株式に手を出すと大怪我をしかねない。
だが、その株価はアメリカの経済指標に連動して動いており日本人はそのたびに一喜一憂している。
東証が1500円超の下落になった時点で専門家たちは「株価はアメリカ経済次第」と分析しているが、一般投資家がこの情報をすべて織り込むのはほぼ無理だろう。一旦投資を始めたらあとは経済メディアを見ないというくらいしか対策が取れそうにない。
アメリカ合衆国の株価はAI成長依存になっており日本の半導体需要は更にそれに依存する形になっていると分析する人もいる。値上がりを期待するのではなく「値段がさがらなさそうな株(内需・ディフェンシブ)」を買えというのは至極真っ当なアドバイスだ。
国内の半導体関連株を巡っては、半導体製造装置の対中規制を巡る報道も嫌気され、このところさえなかった。ディスコ(6146.T)の株価は一時、8月5日の「令和のブラックマンデー」の水準を下回る場面もみられ、二番底が警戒される。当面は外部環境に左右されない内需・ディフェンシブが比較的物色されやすいだろう。
<auカブコム証券 チーフストラテジスト 河合達憲氏>
自民党の総裁選挙候補者たちは中間所得層こそもっと株式を買うべきだと主張しているが、現在のアメリカ頼みAI一点賭けの株式市場はとても一般人が手を出せるような堅実な市場ではない。本気で株式投資を広めたいなら日本経済を再強化する必要がある。そのための議論が起きることを期待したい。