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「半分払って」 アルバニー自首性がオーストラリアンジョーク

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時事通信が「アルバニージ首相のジョーク(軽口)」について書いている。この記事だけを読むとなぜこれがニュースになるのかがわからない。背景には中国とアングロサクソン系国家の太平洋における覇権争いがある。

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AFPは背景情報を書いている。太平洋諸国がオーストラリアに島嶼警察の組織化を依頼した。費用はオーストラリアが持つ。ところが実際にはこの取引はオーストラリアが持ちかけたものでありアメリカ合衆国とも事前に話し合いが持たれていた。アメリカ合衆国はグアムと米領サモアのPIFの参加を勝ち取り、台湾のオブザーバー参加への道も開いたそうだ。

つまりこの「ジョーク(軽口)」は単なるオーストラリアンジョークではなく、中国排除を狙ったオーストラリアとアメリカ合衆国のアングロ・サクソン的な裏ネゴだったことになる。

裏ネゴがあったにせよ中国が排除されるのだから良いではないかという印象を持つ人もいるだろう。そもそもこの島嶼警察の組織化にはどんな狙いがあるのか。アルジャジーラが双方の狙いをバランスよく記述している。

オーストラリア・ニュージーランドが主導して作ったPIFはキリバスが脱退するなどして揺れていた。背景にあるのは太平洋地域での覇権拡大を狙う中国の取り組みだった。だがPIFでは「組織改革」が実現し落ち着きを取り戻している。また、キリバスもPIFに戻ってきた。

PIF諸国としては経済格差を背景にオーストラリアとニュージーランドが地域の盟主を気取ることがないように牽制しより良いディールを引き出すために中国を利用した側面がある。

PIF諸国はいざというときに選択肢を増やすことができる。またオーストラリアは自分たちの裏庭から中国を排除する事ができる。アルジャジーラはPIF諸国とオーストラリア・ニュージーランドの選択的な緊張関係を両面から記述している。

太平洋諸国は、中国、日本・オーストラリア・アメリカなどからそれぞれのディールをつまみ食いできる。ピボット戦略と呼ばれる小国の戦略である。

ツバルのように親台湾派が選挙で負けたものの断交にまでは至らなかった地域もある。ソロモン、キリバス、ナウルが台湾と断交しており、ツバルもそれに続くかもしれないと言われていた。しかし「ツバルが中国サイドにつくのを食い止めたい」と自由主義陣営が思えばツバルにとっては都合が良いディールを引き出すのに役立つだろう。

ところが今回の件にソロモン諸島だけは反対している。ソロモン諸島の中央政府は中国に接近しているがこれに反対する地域がある。このため過去にはデモが暴徒化したこともあった。また今年4月には親中国派の首相が続投を諦めている。

様々な地域からつまみ食いができてるうちは良いのだが、ソロモン諸島のように国内の地域間対立がアメリカ・オーストラリアと中国を背景にして激化しかねない事情を抱えた国もあるのだ。

このように太平洋地域ではアメリカ合衆国・オーストラリアと中国の覇権闘いの舞台となっている。多くの国はこれを利用してできるだけ援助を引き出したい。これは小国ならではの戦略だ。しかしソロモン諸島のようにこの駆け引きが国内の不安定化につながりかねない国もある。

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