神社の境内で誓ったのに……と感じた。
小林鷹之氏に続いて総裁選出馬を宣言したのは石破茂氏だった。地元の伝統ある神社の前で安倍派議員の公認について言及したため「ひょっとすると石破氏はやってくれるのではないか」という期待を持った人も多かったのではないか。
しかしその発言は早々に修正されている。「自分一人で決めることはない」という。
穏やかかつ厳正な党内改革を無党派から期待される石破氏だが総裁選出馬前に早くも安倍派裏金議員たちに膝を屈する形となってしまった。
石破氏は地元に帰還し神社の前で「最後の戦いになる」と決意を示した。毎日新聞によると神社を選んだ理由は初心に戻るということだったようだ。地元の人達にとっては郷土の誇りであり「神様の前で嘘はつかない」ということだったのではないかと想像する。この際に「安倍派議員たちの公認」について触れたため安倍派議員たちから反発されていると時事通信は書いている。
石破氏は「公認にふさわしいか、議論は選対委員会で徹底的に行われるべきだ」と話していたが最終的に「自分一人で決めるのではなく新体制が決める」と発言を修正した。結果的に神社の近いは安倍派の反発によって破られることとなった。
和多理神社は延喜式神名帳に(927年編纂)掲載された由緒ある神社だそうだ。由来は諸説あるようだが和多理は「渡り」に通じるという説があるそうだ。祀られているのは猿田彦命なので高天原から「渡ってきた」人々を手引した人たちを祀っているのではないかと思う。この地域に住んでいる人たちがどこから神社を持ってきたのかはよくわかっていないようだが、地域住民がどんな人達だったのかがわかる神聖な神社である。
毎日新聞の調査によると石破茂氏は非自民党支持者からの支持を多く受けており調査全体では小泉進次郎氏を抑えて首位に立っている。日本の有権者は野党がこの国を刷新してくれるとは期待していない。非自民党支持者たちは「石破茂氏のような変わり者が政権交代なしに自民党を生まれ変わらせてくれるのが一番無難なのではないか」と考えているのではないかと思う。
おそらく石破氏に対する期待は石破氏の政策に向けられたものではないのではないかと思う。現状維持バイアスの高い有権者は、今自民党を替えて日本を混乱させるのは嫌だが今の自民党は応援できないと考えているのではないかと思う。
「お祭り感」を演出する総裁選挙だが、しょせんそれは「やっている感」にしか過ぎない。最終的に総裁を決めるのは自民党国会議員だ。彼らにとって重要なのは自分たちの既得権を守ってくれる総裁を選ぶことだけである。これまで岸田政権下で自浄作用を働かせることができなかったのに総裁選で一気にガラッと物事が動くはずもない。
だが、国民は自分たちが表に立って政治を刷新したいとまでは考えていない。時事通信の最初の報道は「石破氏の国民人気が高ければ安倍派議員の反発を押しのけて党内改革が行われるかもしれない」と期待していたようだが、その期待は早々に裏切られることとなった。