先週の末あたりから「雇用統計に大きなショックがあるのではないか」と囁かれていた。結果はマイナス80万人以上の減少だった。この結果を受けて一時ドルの価格が急落し144円台をつけた。
アメリカの株価に対する影響はワンテンポ遅れて現れることが多いが今のところ大きな動揺は起きていないようだ。
8月初頭の「株価急落ショック」に驚いた人は情報を集めつつ落ち着いて対応していただきたい。
先週の後半辺りからSNSのXで「雇用統計の大規模な修正が行なわれるのではないか」などと言われていた。アメリカの雇用統計速報値は雇用主からの申請を元に修正されて確定する。今回の結果は市場の予測どおりの下方修正で修正幅は81.8万人だった。
米労働省は21日、雇用統計の算出基準改定の暫定結果として、2024年3月時点の非農業部門の就業者数を81万8千人下方修正したと発表した。これまでの想定よりも雇用環境が悪かったことになり、連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に影響を与える可能性がある。
米、就業者数を下方修正 金融政策に影響も(共同通信)
前回の日米の株価の急落はアメリカの雇用統計の数値の悪化による「サームルール」の適応条件が揃ったことと植田総裁のタカ派発言によって起きてた。
特に日本の株価は海外投資家によって大きく動いており(保有比率は3割程度だそうだが実際に動いている株式の委託売買の6割から7割が海外勢なのだそうだ)アメリカの経済指標と日銀総裁・副総裁・政治家の発言の「見出し」が重要だ。いずれにせよ日本の株価は海外投資家の動向によって決まり日本の経済状況の変化とは全く別の動きを見せることも多くなっている。
では実際には何が懸念材料になっているのか。
アメリカの金融市場は金利ではなく金融引き締めの影響を懸念しているようだ。REUTERSが「焦点:FRB、急激な失業率悪化に警戒 9月利下げ用意も」という記事を出している。
FRBは金融引き締め局面にある。過去にこの局面では景気後退が起きることが多かった。その指標となるのが労働統計である。引き締め局面で失業率が増えると歯止めが効かなくなることが多いとREUTERSは書いている。大統領選挙を睨みFRBは「バイデン政権のもとではリセッションなどありえない」といい続けていたが、サームルールが適応できる条件が揃ったことで「やはり景気後退なのでは?」と市場が動揺したのである。
小売の数字が良かったこともあり結果的には「失業率の増加は一時的かつ技術的なものであってアメリカ人は引き続き積極的に消費をしている」という了解が生まれた。このため恐怖指数は一旦落ち着いていた。
ところが今回は「実際の雇用者数は80万人以上も少ないものでした」という結果が出た。金融市場は「結果がいつ出るか」とヤキモキしており、中には電話で「どうなっているんだ」と問い合わせた社もあったそうだ。
予定の米東部時間午前10時になっても、労働統計局は同データを発表しなかった。みずほフィナンシャルグループとBNPパリバは同局に電話で問い合わせ、数字を直接入手した。事情に詳しい関係者によると、野村ホールディングスの経済調査チームも同様に情報を得た。
発表遅れた米雇用改定、一部銀行はデータ入手-電話で直接問い合わせ(Bloomberg)
日銀の金融政策発表時も日銀のサーバーが落ちたなどといわれた。経済指標に一喜一憂する傾向にあるプレイヤーたちが情報を「食い気味に」待っていることがわかる。個人投資家はこのような流れに対応して資産を守る必要があるということになる。このあとで初期リアクションがあり、分析が出揃い、そのあとまたリアクションがでるというのがこれまでの動きである。直感と異なる結果が出ても動揺することなく資産を守っていただきたい。
今後、ジャクソンホール会合の要人の発言要旨などに合わせて9月の利下げ幅とアメリカ経済の行方について議論がかわされることになる。利下げかつソフトランディングであればアメリカの株価には良い影響が出るが、利下げでもハードランディングと言う人が増えればアメリカの株価には悪い影響が出る。