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左翼運動家が研究すべき国 – ベネズエラ

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新宿で奇妙なデモが行われたらしい。「自分たちが貧困だから政府がなんとかしろ」というデモならまだ分かるのだが、貧困などテレビの捏造に過ぎないと主張した片山さつき議員を糾弾するデモなのだという。日本では貧困であることはスティグマになっている。直接主張することははばかられるので、こうした間接的な方法で他者を叩く行為が横行しており左翼運動を堕落させている。他者に対する慈善行動だと考える限り自分の問題について考えずにすむからだ。
さて、左翼運動家たちは、政府が目配りをして巨大な企業から徴収した税金を貧困層に回せば社会的問題はたちどころに解決すると主張する。
しかし、結論からいうとこれは間違っている。理論的に間違いを検証することは難しいのだが、具体的に失敗した国がある。それがベネズエラだ。ベネズエラでは時々国境が解放され国民が外国に買い物に出かける。国内の流通は壊滅しており、治安の悪い中で徹夜で並んで買い物することが珍しくないそうである。経緯についてはいろいろなまとめ記事が出ている。
ベネズエラには豊富な石油資源が眠っている。かつては冨が一極集中する(これを「新自由主義」と言う人が多い)国だったのだが、揺り戻しが起こった。石油を売った金を貧困層に戻す社会主義化が起ったのだ。結局、非効率な社会主義企業が民間企業を駆逐して経済が非効率化した。さらに石油価格が下落し、ハイパーインフレが起る。精油精製を海外に依存していた政府は石油生産すらままならなくなり、経済が大混乱に陥っている。大きな政府の破綻という意味では、国家公務員が多かったギリシャに似ているかもしれない。
経済が混乱してもベネズエラ政府は経済の自由経済化を進めなかった。政府の権限をより強化して事態を収集しようとしている。これがさらに経済を混乱させている。
日本人はこれがどういうことなのかをうっすらと経験している。菅直人は左翼色の強い首相だったが、原子力発電所が暴走したときに「俺に情報を集めろ」と言って、さまざまな組織を乱立させた。ベネズエラの場合暴走しているのは原子炉ではなく経済なのだが、系が複雑すぎて人の手では制御できないのだろうが、左翼系の人は、人知があれば系が制御できると考えてしまうのだろう。
日本には石油がでないので、ベネズエラのようなことは起らないはずだ。しかしながら、国は国民の貯蓄を国債という形で自由に使えるようになっている。実質的には石油のように「貯蓄が枯れるまで」使える。条件は整っている。
左翼運動が間違っている理由は2つありそうだ。

  • 経済は系として複雑で誰かが恣意的にコントロールすることができない。
  • 現在の左翼運動は「かわいそうな人の貧困を救って上げる」というものなのだが、こういう人は中間搾取者か寄宿者になってしまう。

ではやはり安倍政権が正しいともいえない。ベネズエラが混乱したもともとの原因は新自由主義の増長だ。新自由主義というのはいわば「搾取の自由」を認めた経済であると言える。この搾取される側が多数となり反動的な左翼運動が起ったことが現在のベネズエラの混乱につながっている。
こうした「貧困対策を訴える」ようなデモが見られるようになったのはつい最近のことだ。多くの人たちが自由主義経済からこぼれ落ちつつあるか、その不安を抱えているのだろう。中には家族の介護や子育てなどによって離脱せざるを得ない人がいるのだが、こうした人たちに対する対策はほとんどなされていないし、当事者たちは見捨てられていると考えている。
憲法や安全保障などで燃料を投下しつつ、安倍政権は中期的に見れば安倍政権は反動的な左派政権につながる芽を作り続けている。


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