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130〜120円台も視野に 円キャリー相場の終わりは急激な円高を招く

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REUTERSがコラム:前倒しで訪れた転換点、円キャリー相場の終わりの始まり=高島修氏という記事を出している。近い将来に急速な円高が進む可能性があるというのだ。コラムは将来のドル円レートを130〜120円と見ている。となると今の時点でドルを買っても損をするだけということになってしまう。

まず、コラムを整理してその後に考察する。

どうやらドル円相場は「動き」として動的に理解しなければならないようだ。

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コラムはまず、ドルが161円台に到達することはもはやなく、上がったとしても155.5円前後だろうという。極端な円安の危機は去った。そして向こう数年で130円から120円と値崩れしてゆくのではないかと予想する。

現在のドル円相場には2つの要因がある。日米金利差とキャリー・トレードの巻き返した。

現在、円安議論が語られている。デジタル収支の赤字(Googleなどのサービスはすべてドル建てで提供されており円安要因となる)と新NISAのキャピタルフライトだ。だが円資産信仰は根強くキャピタルフライトはそう簡単には起こらないだろう。

また、構造円安が語られるにも関わらず、実際には161円台から141円台という急速な円高がおきた。これこそが筆者が指摘してきた円キャリートレードの巻き戻しリスクだった。

円キャリートレードが成立するためには日米金利差が極端(4.75%程度)に乖離している必要がある。そして金利差がこれを下回ると急速な巻き戻しが起きる。さらに政府の円買介入も累積で25兆円に累積している。これも円キャリートレードのトレンドを反転させる。

コラムはなぜ累積がトレンドを返還させるかについては説明していない。単に過去の実例(1998〜1999年)で147円から110円を割り込むドルの暴落があったとするのみだ。

アメリカ大統領選挙が近づく中でいったんはドル高に触れそうだ。だが、1998年と2007年の実例では数年から数ヶ月の単位で3〜4割程度のドルの下落になっている。コラムは書いていないが2000年と2008年は大統領選挙の年だった。


次にコラムを離れて直近の動きを見る。

アメリカ合衆国の金融は曖昧な経済指標に振り回されている。雇用統計の内容は悪かったが「あくまでも例外的なのではないか」と解釈されつつある。一時は国債の価格が高騰(金利が低下)していたが、ハイテクにも恐る恐る資金が戻りつつある。

だが金融市場は消費者物価(CPI)などを参考に経済の実相を判断したいと考えているようだ。仮にCPIが悪ければ不安心理が首をもたげ株価が急落しかねない。株価が急落すると「ポジションの変化」が起こり、なぜか急激な円高になる。このためREUTERSの表現は「株安再開なら円高、米実体経済占うCPI以外にも注目=来週の外為市場」になっている。

アメリカの実体経済には別の混乱要因もある「米小売業者、年末商戦向け商品の輸入急ぐ 混乱に備えて前倒し」アメリカの小売は年末のプレゼントシーズンに大きな売上をあげなければならない。だが今年は年末商戦の期間が短く、海運のスト、突然の航路の閉鎖(これは戦争によるものだ)の影響を受ける可能性があるため夏の間に少しでも商品を仕入れておかなければならない。港湾業者がストに突入すると商品が入荷できなくなる。

輸入に頼るアメリカの経済は急速な変化に意外と脆弱だ。新型コロナウィルスでサプライチェーンに影響が出たときにはロスアンゼルス港が24時間稼働になったことがあった。これまで滞っていたものを取り返そうと輸入が急速に増えたためロスアンゼルス港がパンクした。このため24時間休みなくフル稼働させて急激に増えた荷物を捌くことになった。このときも物価高騰が起きている。

トランプ氏の再選も当然不安定要因になる。トランプ氏が大統領に返り咲くことが決まれば、市場は関税強化を予想するだろう。すると前倒しの輸入が殺到しかねない。年明けになると中国産の品物が値上がりすることが確実になるからである。

またトランプ氏は「FRBに介入する」と宣言している。

トランプ氏が掲げる減税・移民制限・中国への高関税はどれもインフレを示唆する。仮にインフレになるとFRBが利上げを行いドル防衛を行うことになっている。おそらくトランプ氏はこれを「自身の失敗」とみなしFRBの利上げを阻止しようと動くだろう。インフレは加速するが金利は低下したままになる。これはドルの価値が弱くなることを意味するのだから、当然ドルは下がる。さらに共和党・トランプ氏の政策が積極財政に傾くとこれもドルを売る材料になってしまう。

最初のコラムに戻る。トランプ氏の政策によりドルの価値が下がるのはトランプ政権の政策が進行してからということになる。だが、いったんはドルの価値が上がりその後急速に下落するという。

日本ではよく「円安がいいのか、円高がいいのか」が議論になることがある。為替水準が問題になることはあるが、変化速度が問題視されることはあまり多くない。企業は業績の見通しが立てられなくなり、投資家も投資が難しくなる。つまり「価値が安定しない」ことこそが問題なのだ。

おそらくボラティリティが高い環境下では「どちらに転んでも良いように通貨を分散させて持っておきなおかつその通貨をできるだけ高く運用する」ことが求められることになるだろう。つまり「資産を円で持つかドルで持つか」はさほど重要ではなく、どちらに転んでも損をしないような防衛的なメンタリティが求められる。また、一旦投資したらチャートを忘れるくらいの気持ちで投資しなければならないということになる。

今回、調べてみて改めて「たかが資産を守るだけ」のためにここまで資料を読み込んで情報を整理しなければならないのかと感じた。やっていることは金融会社のエコノミストの作業とさほど変わりはない。

情報が氾濫し変化が激しくなった時代というのはいかにも厄介だが「安全・安心・確実なレシピ」は存在しないということがわかる。

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