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テロの脅威のなか、フランスはなぜ狂気の水上開会式を選択したのか

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パリのオリンピック・パラリンピックの開会式が始まった。事前に多くの危険人物が排除されたと言われているが直前に全国の鉄道網に妨害工作があった。平和の祭典にケチが付いたと考えたのだが、どうやらそうではなかったようだ。あえて難しい状況で開会式を行っているのである。きっかけは2015年の同時多発テロだったそうだ。

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パリ・オリンピック・パラリンピックの関連ニュースには物騒なものが多い。まず身元調査でスタッフ5000人が除外された。内1,000人は妨害やスパイの疑いだったそうだ。またロシア人のシェフが拘束されている。フランスに14年間住んでいたがロシアの諜報機関との関係を示す書類がでてきたそうだ。

これらのニュースだけを聞くと「こんな危険な状態でオリンピック・パラリンピックなどできるはずはないのではないか」と思える。

だがどうも様子がおかしい。BBCが次のようなことを書いている。ジャーナリストも含めて100万人のスクリーニングをやっている。普通こんな事はできないだろう。が「オリンピックを無事に開催するため」という名目があればできてしまうのだ。根拠があるわけではないが「オリンピックを利用した治安検査」なのではないかとさえ思える。結果的に多くの造反者をキャッチすることができた。

ジェラルド・ダルマナン内相は今週、当局が五輪に先立ち、選手やコーチ、ジャーナリスト、ボランティア、警備員、会場周辺の地元住民など100万人以上のスクリーニングを行ったと述べていた。

パリ五輪期間中の「不安定化」企てた疑い、ロシア人男性を逮捕 フランス当局(BBC)

そもそもパリ・オリンピック・パラリンピックは2015年におきたパリ同時多発テロ事件をきっかけに招致が決まったという経緯があるそうだ。パリ市長がCNNにそう説明している。フランスの体制転覆を企てた内外の諸勢力に対して「フランスとパリの統治は揺るぎない」と示す狙いがあったということになる。

このあとで「開会式をやるなら既成概念をぶち壊すようなものにしたい」という要望が出た。警備当局は強硬に反対したがマクロン大統領の強い意向もありパリ市内の中心部の警備を厳重にして(つまり採算度外視ということである)このアイディアが採用された。ロイターはおそらく褒めているのだろうが「狂気と言われた水上開会式はどうやって実現したのか」と言うコラム記事を書いている。

パリ市内を流れるセーヌ川で五輪開会式を行うという前代未聞のアイデアが最初に提案されたとき、当時パリ警察のトップだったディディエ・ラレマン氏は「狂気の沙汰だ」と強く反対した。

アングル:パリ五輪「狂気」の案が現実に、前代未聞の水上開会式(Reuters)

このために動員された警官の数は通常の3倍の4.5万人だった。

ただ関係者は、外国代表団の多くが懐疑的な見方を示し、一時は出席を取りやめるとの声さえあったと明かす。これに対して仏当局は、毎年7月のフランス革命記念日の3倍以上に当たる警官4万5000人を警備に動員し、治安に万全を期すと各国を説得した。

アングル:パリ五輪「狂気」の案が現実に、前代未聞の水上開会式(Reuters)

だがこのマクロン氏の思惑は2つの意味で外れることになった。まず強い国威発揚の姿勢を示したにも関わらずマクロン氏は移民不安を解消できずルペン氏の国民連合に大敗してしまう。議会選挙ではかろうじて国民連合政権は阻止されたが今の内閣は暫定内閣であり次の政府の形は未だ見えてこない。またEUにおけるルペン氏のプレゼンスは揺るぎないものになった。

またパリに警備を集めれば当然地方の警備は手薄になる。未明に同時多発的な攻撃が行われフランス国鉄は週末にかけて大きく乱れることが予想されている。80万人に影響が及ぶと見られている。

このように多額の警備費用をかけてパリ市内をほぼ完全に封鎖したこともあり開会式は無事に終了しつつある。セーヌ川を船で入ってくる選手たちの表情は晴れやかで外で起きている混乱などまるでなかったかのようだった。

イベントの中では首が落ちた女性が建物から手を振る様子や革命の様子がフィーチャーされ「Liberate(開放)」というキャプションが付いていた。暴力的な革命により開放され、強い意志でその伝統を守り抜こうとする政権とオリンピック・パラリンピック運営の強い意志を感じさせる。

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