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日本の投資家にとっては魅力的なトランプ大統領の再選

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テレビ討論会のバイデン大統領のふがいなさをきっかけにこのままではMAGA三冠などと囁かれることになった。ということで一度トランプ氏が大統領に再選されたときに経済がどうなるかを調べてみることにした。日本の投資家にとっては好ましい動きかもしれない。アメリカの成長・インフレが加速するという予測になっている。

成長・インフレと書いたようにこれは同じ状況を指している。これがうまく機能すればトランプ・ラリーと呼ばれる状況が作られるが、うまく機能しなければトランプ・ショックになる。ゲームのルールは大きく変わるが見通しが難しいという状態はそのまま続くことになるだろう。

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まず現状を見る。

アメリカ経済に陰りが見えてきた。非製造業指数が市場の予想を下回り失業保険も9週連続で増加している。このため長期金利がやや低下している。原因は定かではないが(後述するように)コロナ禍で蓄積された余剰貯蓄を使い果たしたのではないかという説が囁かれている。

だがそれでもアメリカ人はこれまで我慢していた分を取り戻そうと旺盛に消費している。7月4日の独立記念日の旅行需要なども好調なようである。

長期金利は上昇傾向にある。これはどういうわけなのだろうか。実はトランプ氏が再選されるとインフレになるという期待があるそうだ。理由はいくつもある。

  1. 企業減税を通じて企業業績が上向く。
  2. 移民政策が見直され国内に安い労働力が入ってこなくなる。
  3. 対中関税などが導入される。関税は内国民に対して懲罰的な効果がある。

保守寄りのはずのBloombergに気になる記事を見つけた。トランプ氏の再選を歓迎しても良さそうだが見通しは悲観的だ。トランプ氏のFRBの介入でアメリカが強いインフレに見舞われるという。インフレが加速すると政府債務の相対的負担が減る。インフレ加速は政府から国民に対する負担の転移という側面があるためだ。日本の戦後すぐの状態を想像すると理解が容易になる。日本人の貯蓄はほぼ紙くずになったが同時に政府の債務も取るに足らないものになった。政府は国民の貯蓄を巻き上げて生き残ったのだ。

では株価はどうなるのか。現在の株価の好調には2つの要因があるそうだ。

  1. 利上げのあとには利下げが行われるのだから企業業績は上向くはずという金融政策効果。
  2. ここまで利上げが行われているのに企業業績は好調なのだからアメリカ経済はおそらく好調なのだろうとする企業業績効果。

冒頭で挙げた景況感の悪化は2の剥落を意味しトランプ氏=インフレという期待は1が疑問視されると解釈ができる。つまり株安ということになるだろう。

だが株安にはならないかもしれない。

アメリカの最高裁判所は40年ぶりに政府規制を制限する判断を出した。シェブロン法理を否定したのだ。アメリカの企業は好きなだけ環境破壊を痛めつけてもいい。また気候変動による影響は酷暑と急速に拡大するハリケーンも生み出している。アメリカ人は酷暑を耐え忍ぶ自由がある。ニーズが有るのなら法外な利息をとって消費者を痛めつけてもいいということになった。また現在の保守化した最高裁判所は銃規制にも否定的な考えを持っている。アメリカ人は好きなだけ武装して相手をぶちのめして近所の治安を悪化させる自由を保証されている。

おそらくシェブロン法理が否定された状況では国民から企業への富の転移が加速する。アメリカの一般労働者(特に中間所得層)はインフレというきつい坂道を登り続けることになるばかりか、政府から国民への負債の転移と、国民から企業への富の転移という2つの懲罰を受けることになるという図式が生まれる。だが企業は営利追求の自由を得る。

投資家目線に立つとアメリカ経済が崩壊しない限りにおいては高い金利と好調な企業収益の上がりを得られるまたとないチャンスと言える。何事も生かさず殺さずがいい。

前回のトランプ氏の政権下ではトランプ・ラリーという現象が見られた。今回はラリーの再現となるかあるいはトランプ・ショックになるかで見方が分かれているそうだ。つまり、株式市場に関する判断はしばらくホールドということになる。経済系のコラムにこんな一節を見つけた。

「悪い金利上昇」と「良い金利上昇」の違いは、基本的に前者では株安、後者では株高になるということ。そしてこの場合、米ドルは基本的に金利ではなく株価への連動を強める傾向がある。以上を参考にすると、「トランプ・ラリー」で米金利上昇、株高なら米ドル高、「トランプ・ショック」で米金利上昇、株安なら米ドル安の可能性が高いのではないか。

仮にトランプ・ラリーが続き円安が是正されなければ投資家はますますアメリカなど海外への投資を検討せざるを得なくなるのかもしれない。

さてここまで書いてくるとアメリカ人もさすがに「これはなにかおかしい」と気がつくのではないかという気がする。だがそうはならない。第一に散在の自由はアメリカの国是になっている。経済メディアを読んでいる人は当然危険性に気がついているが彼らはアメリカ民主主義の主役ではない。

トランプ氏はアメリカの中流層が脅かされているのは南からアメリカの富を強奪する目的で流れてきたヒスパニック系経済移民と中国のせいだと宣伝している。民主主義国のアメリカには信じたいものを信じる自由もある。

さらに南部を中心にキリスト教の伝統に従えばこれまでのような安定した生活が戻ってくるはずと信じている人達もいる。彼らは中絶を犯罪視している。産児コントロールを通じて人生に選択肢を持ちたいと考える女性たちが敵に見えるのだろう。ただ彼らが文化闘争に夢中になっている間は実は自分たちが須達さているということには気が付かないですむ。

トランプ大統領は政府と企業を代理して「悪いのはすべて外国人である」と言い続けるという役割が期待されている。また文化闘争を主導し国民の不満をそらすのも彼の重要な役割である。

健全で穏健な民主主義にとってトランプ氏の台頭は脅威なのだが、投資家目線に立つとこんなことはどうでもいい話にすぎない。成長もインフレもごっちゃになった世界で「一般のアメリカ人がどの程度のストレスに耐えられるのか」だけが重要なのだ。

立場によって見方はこれだけ異なるのである。

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